小刀肥後守(ひごのかみ)


小刀肥後守
小刀肥後守

わが家の子供たちそれぞれに買ったナイフです。お父さんも小学生の時にこのナイフを使って工作をしました。はじめは使い方が分からずによくケガをしていましたが,そのうちにだんだんと自由に使えるようになって,竹トンボなどもうまく作れるようになりました。

このナイフは使い捨てではありません。切れ味がわるくなったら砥石でとぐと,またりっぱに切れるようになります。とぎ終わった後は水をよくふいて,さびないように刃全体に少し油をつけておきます。切れない刃物で作業をすると余計な力を出してしまって,思わぬケガをする原因にもなります。道具の手入れはとても大切なことです。高村光太郎の詩に「刃物を研ぐ人」というのがありましたが,その詩のことを説明しながら子供にといでもらいました。

ナイフはたしかに危険でもあります。しかし人は様々な刃物をなくして生活をすることはできません。刃物の使い方や特性を知ることは大切だと思います。目的に応じて必要なときに持つことが基本ですから,今のところふだんはお父さんがあずかっています。

世の中には,使い方や使う場所を間違うと非常に危険な道具(オモチャなども含めて)があります。そうしたものを正しく使うことは,自分自身と向き合うことでもあります。特に少年たちにとっては,自己責任というものを育む要素をこの小さな刃物は持っているような気がするのです。また,こうした道具の意味や使い方をしっかり教えるのも,父親の大切な役割りだと思います。


刃物を研ぐ人

黙つて刃物を研いでゐる。
もう日が傾くのにまだ研いでゐる。
裏刃とおもてをぴつたり押して
研水をかへては又研いでゐる。
何をいつたい作るつもりか,
そんなことさへ知らないやうに,
一瞬の気を眉間にあつめて
青葉のかげで刃物を研ぐ人。
この人の袖は次第にやぶれ,
この人の口ひげは白くなる。
憤りか必死か無心か,
この人はただ途方もなく
無限級数を追つてゐるのか。

作者の没後50年を経て,法律の規定により公開できるようになったので掲載しています。2007年2月

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