☆ながさき寿司ばなし☆
「鉄火巻き」・・・何処の寿司屋でも大抵はある、メニューの一品である。
通常の「鉄火巻き」は、マグロの赤身をシャリと海苔で巻いた細巻の寿司である。
もともと「鉄火巻き」の名前の由来は、「鉄火場」(博打する処)で食べるのに丁度良かったと言う説と
もう一つ、鉄砲の銃身が赤くなる様が似ていることから赤身のマグロを使った巻物が「鉄火巻き」と言う説がある。

しかしながら、後者の説は「ながさき」では必ずしも通用するモノではない!
特に関東からのお客様が「鉄火巻き」を注文された際「え?これ、鉄火巻き?」と思われるであろう
「鉄火巻き」が目の前に出されてしまうのだ。本来の「鉄火巻き」の由来からはほど遠い
「芯が白い細巻き」だからだ。その正体は主に「ハマチ」である。すべての店がそうとは言えないが
かなりの確率でそうなのである。思うに、以前は長崎では近年ほどの「マグロ」の流通は
少なく、また「長崎人」の嗜好〔近海に恵まれた土地柄からそうなったと思われる)にもよるであろう
また、「ハマチ」と言えど関東で好まれる柔らかい身に対して長崎ではコリコリとした食感の
身の絞まったモノに限る。たまに県外から来られたお客様にも「ハマチ」や「ヒラス」といった
「コリコリ食感」の魚に驚きと同時に、病みつきになる方もいる。本来からすると、
この「鉄火巻き」は邪道なのかもしれない。しかし、お客様のニーズに応え喜んで貰うのは
寿司屋のみならず、食べ物商売の王道(横道?)ではなかろうか。

「郷に入っては、郷に従え。」江戸前ならぬ「長崎前」の寿司は、またひと味ちがうものである。

すしの知識に戻る     トップに戻る