長崎市茂木 北浦海岸の自然

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太古のロマンと干潟・岩礁


長崎市中心部の南東5kmに位置する茂木は枇杷(びわ)と漁業の町として知られています.ここには天然記念物「茂木植物化石層」のほか地質学的に貴重な赤崎鼻の海岸があります.また,相次ぐ埋め立てで長崎市内に残り少なくなった干潟もあります.

赤崎鼻一帯は長崎市環境部発行の『長崎市環境(エコ)マップ』にも「茂木港周辺の地質」として紹介されています.ここでは同マップに収録されていない資料を展示します.

北浦の干潟

茂木港の湾奥部には2haほどの小規模な砂質干潟があります.少数ながら鳥の姿も見られます.生物相のきちんとした調査はまだなされていないようです.

ここは長崎土木事務所が「土砂がたまっていると水が滞留して汚くなる」との理由(干潟の浄化作用をまったく理解していない)で浚渫(しゅんせつ)と埋め立てを計画していましたが現在は見送られているようです.

赤崎鼻

フェリー発着場の対岸にある赤崎鼻(写真いちばん奥)一帯は古生代から新生代第三紀までのいくつもの時代の地層が集中(このような場所は県内で他に類を見ない)しており,今後も重要な発見が期待される貴重な場所です.

北浦の干潟から赤崎鼻までの自然海岸は,長崎土木事務所により「漁船の係留場所が不足している」との理由(実際には余っている)で埋め立てられようとしていましたが,いろいろな理由からひとまず計画中止になったようです.しかし,計画再燃の恐れがあり,貴重な自然の存在を広く知らせ,将来にわたり保存させる必要があります.

太古の地層

赤崎鼻では干潮になると広い範囲にわたり岩礁が露出します.このような場所を海食台といいます.写真のちょうど中心を境に,下(手前)側には数億年前の地層が変成作用を受けてできた長崎変成岩類が,上側には中生代白亜紀(恐竜時代の終わり頃)の地層が露出しています.ここの白亜紀層からはアンモナイトや恐竜が発見されています.

ここは地質学的に貴重なだけでなく,岩礁生物の観察にも適しており,その意味からも保全していく必要があります.

白亜紀層と第三紀火山岩質層の不整合

写真下半分のこげ茶色の部分が白亜紀の地層です.上半分の黄色っぽいまだら模様の部分は第三紀の火山岩質の地層です.このように時代の離れた地層が重なっている境目を不整合といいます.不整合は昔の地表面が地層の中に閉じ込められたものです.

従来は,白亜紀層の上に長崎火山岩類の地層がのっているといわれていましたが,最近の調査で両者の間に別の火山の地層が挟まっているらしいことが分かってきました.今後の詳しい研究が待たれます.

長崎火山の土石流の跡

地層の面(写真では水平に見える)と別に斜めの面が見られることかあります.写真では中央の白っぽい部分(凝灰岩)に右下がりのすじがたくさん見えます.これは斜交葉理と呼ばれ,地層が堆積したときの水の流れの跡です.よく見ると上の石ころの層(火山角礫岩,かざんかくれきがん)にも斜交葉理が認められます.また,火山角礫岩の中の石ころ(礫)の重なり方を見ても流れの向きが分かります.いずれも左から右への流れです.500万年前の出来事でもこうして復元できます.

凝灰岩の中に穴がたくさんあいていますが,これは丸太が埋まっていた跡です.これらを総合すると火山の活動当時,土石流が生じて森林を押し流したことが分かります.

長崎火山の火砕流堆積物

白く見えるのは軽石で,爆発的な噴火があったことを示します.いろいろな大きさの軽石や火山灰が交じり合っており,地層の面がありません(成層していません).さらに注意してみると縦の割れ目がところどころにあるのが分かります.これらの特徴から,この地層は火砕流の堆積物であることが分かります.

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