ハノイの塔


ハノイの塔の伝説
今から5000年まえ,インドのベナレスという町に大寺院があり,そこには世界の中心といわれるドームがありました。その中には台が作られていて,その上にはダイヤモンドでできた棒が3本立っていました。インドの神ブラーマは,世界が始まるときに,この棒に黄金でできた円盤を64枚さしておきました。この円盤は下が大きく,上に行くほど小さくできていて,ピラミッド状に積み上げられていました。そして,ブラーマは僧侶たちに次のような修行を与えました。

  1. 積み上げられた円盤を,すべて他の棒に移すこと。
  2. その際に,1回に1枚しか動かしてはならない。また,小さな円盤の上にそれより大きな円盤を乗せてはならない。
  3. すべてこの3本の棒を使って移すこと。棒以外のところに円盤を置いてはならない。

ブラーマは,この円盤がすっかり他の棒に移った瞬間に,世界は消滅してしまうと予言しています。5000年たった今でも,寺院ではこの修行が続けられているそうなのですが・・・


ハノイの塔模型による実験
3枚の円盤で行うと,最低7回でできます。右の写真は4枚ですが,円盤4枚だと最低15回になります。円盤の枚数が1枚ずつふえると,回数がどのくらいずつふえていくのでしょうか。円盤が3枚や4枚くらいだと,わが家の子供でも5分もかからずにできてしまいます。

こども 「円盤が64枚だったら,数時間でできるんじゃない?」
父さん 「だったら,もうとっくに世界は消滅してるじゃないかぁ〜」
こども 「だからぁ〜,そんな伝説はウソウソ!」
父さん 「まてよぉ〜? 彦一の有名な米粒の話もあるしなぁ・・・」

手順

その後,子供は訓練して,5枚を約30秒で動かせるようになりました。コツを発見したそうで,AからBへ移しかえる場合は,円盤が奇数枚なら1枚目をBに移し,偶数枚ならCに移すことだそうです。


計算をしました
じつを言うと,この問題は数学の「数列」という分野でとり上げられる,有名なパズルなのです。円盤の枚数と移動回数の関係は,以下のようになることが知られています。

円盤の枚数を n とすると,移動回数は n-1 (2の n 乗−1)

表計算ソフトで計算してみると,次のようになりました。かりに,むだなく円盤を正確に移動できたとして,1枚を動かすのに1秒かかったとします。それでも64枚を動かすのに,不眠不休でやっても5800億年かかってしまいます。

枚数 移動回数 所要時間
3 7 7秒
4 15 15秒
5 31 31秒
6 63 1分3秒
7 127 2分7秒
8 255 3分15秒
9 511 6分31秒
10 1023 17分3秒
11 2047 34分7秒
12 4095 1時間8分15秒
13 8191 2時間16分31秒
14 16383 4時間33分3秒
15 32767 9時間6分7秒
枚数 移動回数 所要時間
18 262143 3日49分3秒
24 16777215 194日4時間20分15秒
25 33554431 1年23日8時間40分31秒
26 約6700万 約2年
30 約11億 約34年
32 約43億 約136年
35 約340億 約1000年
40 約1兆1000億 約35000年
45 約35兆2000億 約110万年
50 約1100兆 約3600万年
55 約36に0が15個 約11億年
62 約46に0が17個 約1500億年
64 約18に0が18個 約5800億年

宇宙の始まりのビッグバンは,約150億年まえだと言われています。地球に生命の祖先が生まれたのが,約40億年まえです。5800億年という時間のすごさが,分かるような気が・・・う〜ん,やっぱり実感できないなぁ。 (^^);

ハノイの塔は,1883年にフランスのE.リュカ教授が考案したパズルです。伝説も,教授が書かれた本にあるそうです。


とんち彦一ばなし (彦一どんと殿さん)

とんちで有名な彦一が,八代(熊本県)の殿さまから,ほうびをもらうことになりました。

「彦一,何でんよか,おまえの好きなもんをほうびにやるから,申せ。」
「いやぁ,たいしたこつぁしとらんですけん,いりまっせんバイ。」
「何ば言うか,やると言うとるんだから,何でんよか,申せ。」
「殿さん,本当に何でんよかとですか?」
「くどか! 俺は殿さんゾ,何でんできるから,申せ!」

そこで,彦一が言うには,
「殿さんは,将棋が好きですね。将棋盤の最初の”ます目”に米を1粒置いてください。
2番目の”ます目”には2粒,3番目には4粒,4番目には8粒,・・・・・というふうに,
将棋盤の最後の”ます”まで米粒を置いていき,将棋盤全体の米粒をもらおうごたっとバッテン,
よかですか?」

「なんや,そんくらいか。彦一は欲んなかな。よかバイ。持ってけ,持ってけ。」
「ほんなこつ,よかですか? そんなら証文ば書いてくだはりまっせ。」
殿さまは,「将棋盤の各々のますに,次々と倍々にして置いていく米粒を彦一に与える」
という約束を文書にして渡しました。

さて,殿さまは約束を守ることができたのでしょうか?この米粒の量は,いったいどれだけになるのでしょう?

計算すると。
1+2+4+8+16+32+64+128+・・・・
将棋盤のます目は81(9×9)だから,
初項が1,公比が2の等比数列の,初項から第81項までの和となります。
よって,等比数列の和の公式を使えば 81−1 (2の81乗−1) となります。
この数値は,おおざっぱに見積もっても 24×1023 粒です。

さて,日本の米の年間生産量は約1000万トンです。米は50粒で約1gですから,これは,日本全国の生産量の約50億年分に相当します。お父さんは,実際に米粒の重さを量って,計算したんだぞぉ〜,信じてくれぇ・・・


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