傷の湿潤治療

「消毒しない」「乾燥させない」という外傷治療です。この治療法は火傷や褥瘡などにも応用されています。

父さんが勤めている病院でも外傷の湿潤治療は一般的になっています。今回は我が家で行った治療を紹介していますが,外傷にも様々なケースがありますから,しっかりとした病院で診てもらうと安心です。

注意しないといけないのは,家庭で治療をしてしまう場合です。傷の湿潤治療については,インターネット上でもずいぶんと取り上げてありますので,詳しい内容については「湿潤治療」で検索されてみてください。湿潤治療に使う医薬品も市販されています。


(症例)

次男が高校の運動会でつくった傷を湿潤治療で治しました。左上腕外側の擦過傷で,受傷直後はけっこう出血したと本人は言っていました。その場では水道水で傷を洗い,ガーゼをあてていました。

帰宅後,ガーゼをはずし再び水道水で傷を洗いました。傷は,上皮がやや広範囲に欠損していましたが深くはなく,異物などの付着はありませんでした。

次に,調理用で使うラップをちょうど傷の範囲に合うくらいに切って,傷の上から被せました。そして,ラップの範囲より広めに切ったガーゼをその上から被せてテープでとめました。

下の写真はその経過です。


三日め
毎日一回,風呂上りにラップとガーゼの交換をしました。この治療の良いところは,回復が早いこと,そして手当てにまつわる痛みがほとんどないことでしょう。

傷の表面には全くさわらずに,洗うこともしません。もちろん消毒薬はいっさい使いません。消毒薬を使わない最大の理由は,修復に必要な生体の組織が消毒薬でダメージを受けないようにするためです。

三日め(拡大)
傷の表面には薄く膿がかぶさっています。傷の周囲には浸出液が凝固して乾燥したものが見られます。膿があるので最初は驚きますが,これは生体の正常な修復機能が働いている結果です。


一週間後
表皮の修復が完了したので,治療は終了です。ラップを被せることによって傷を乾燥させないで,湿潤状態を保つことがポイントです。「かさぶた」医学用語では痂皮(かひ)と言いますが,これを作らないことが重要です。

「かさぶた」ができてしまったあとでは,この治療法はできません。

一週間後(拡大)
傷の表面はなめらかで,きれいになっています。次男の腕が全体的に汚く見える(ゴメンネ)のは,夏休みも欠かさず部活のテニスを続けていたせいで,日焼けによるものです。


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