ふしぎなプラナリア


わが家の近くには八郎岳を源流にする大川が流れています。この川は全域に護岸工事が行われているのですが,ながい間に土砂が堆積して自然に近い環境ができています。今春から子供たちはこの大川について調べ始めたのですが,おもしろい生き物をみつけてきました。

プラナリアという小さくてカワイイ生き物ですが,じつは体をいくつに切りはなしても数週間するともとにもどって,しかも切った数だけのプラナリアが生まれるという特別な性質をもっています。その性質から再生医療の分野で現在脚光を浴びているそうです。ショウジョウバエ遺伝学で有名なトーマス・ハント・モーガン博士は,すでに100年前にプラナリアの論文を出しているそうです。現在では分子生物学的な遺伝子レベルの研究手段が発達しているので,日本の研究グループはそうした先端技術を使って世界をリードする研究成果をあげ,イギリスの科学雑誌「ネイチャー」にも発表しています。

自然界におけるプラナリアの子孫の残し方もいくつかのパターンがあって,たいへん興味をそそられます。再生医療における応用では,まだまだ解明すべき問題も多いようです。今後の課題は,再生増殖にかかわる「万能細胞」を自在に扱っているプラナリアを使い,万能細胞の制御機構を分子レベルで明らかにして万能細胞から各種の細胞を体系的に作り出すこと。そこから安心して移植に用いることのできる各種の細胞を作り出すことを目指して研究が進められています。

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お父さんの仕事はヒトの細胞が異常になる「がん」を見つけることですが,そこでも様々な研究者が「がん細胞」について調べています。プラナリアがヒトの病気の治療に役立つ能力をもっているのは素晴らしいことですね。ところで,小学五年の国語では「海にねむる未来」(光村図書)というのがありました。世界中の研究者が海の生物の様々な能力に着目して,ヒトの病気の治療などに役立つものを発見する話しです。「海にねむる未来」を読んで,みなさんはどのような感想をもちましたか?ここでお父さんも一つ問題を出しておきましょう。上の文章の中でプラナリアやショウジョウバエと同じように「人」のことを「ヒト」と書きましたが,それはなぜでしょうか?


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