指先の細菌調べ


小学四年国語(下)で「体を守る仕組み」を学習しました。その中に登場する微生物について,少し勉強してみようと思います。微生物と呼ばれるものには細菌・ウイルス・真菌などがありますが,今回は細菌をとり上げることにしました。細菌などの微生物によってひき起こされる病気は感染症と言われます。ところで,「細菌は種類によっては,ごく普通に私たちの体に住みついているのだ」と知らされたら,びっくりする人もいるかもしれませんね。それで,次のような実験をしてみました。

jpg jpg
培養皿(倍地) 指先を押しつける

細菌の培養
微生物を人工的に増殖させることを培養といいます。左の写真は,微生物の発育に必要な栄養分を寒天に混ぜて,薄い皿に入れたものです。その上に指先を押しつけた後,フタをしてまわりをセ氏37度(人の体温)に保ちます。細菌にとって発育するのに適した環境ができているので,もし指先に細菌がついていたら,それがどんどんふえていくことになります。


培養の結果
12時間後のようすです。手を洗わなかった場合と,普通にセッケンで手を洗った場合を比べてみましたが,今回はあまり大きな差はありませんでした。消毒液を使ったり,手洗いの時間を長くすると細菌の数はへっていきます。培養皿の上が白くなっている部分はコロニーといって,細菌がふえている所です。細菌のふえかたは,1個が2個,2個が4個・・・というぐあいに倍々になっていきます。そのため,12時間もすると細菌のかたまりが目に見えるくらいの大きさになるのです。

jpg jpg jpg
手を洗わなかった セッケンで洗った コロニーの拡大写真



細菌を顕微鏡で見る
コロニーに含まれる細菌を顕微鏡で1000倍に拡大してみました。4種類みつかりましたが,グラム染色という方法で細菌に色をつけています。これらは,体の表面にふつうに見られるもので,常在菌(じょうざいきん)といわれています。指先についているだけでは病気になりません。常在菌にも多くの種類があり,また少数の病原菌も見つかることがあります。ケガをして,そのような細菌が体に入り込むと化膿(かのう)します。さらに体が弱っているときは,普通では病気をおこさないような細菌で病気が起こったりするので注意が必要です。

jpg jpg jpg jpg
CNS CNS S. aureus GPR



球菌(きゅうきん): 丸くてボールのような形をしている。
桿菌(かんきん): 細くて棒のような形をしている。


常在菌は必要なものです
皆さんは”バイキン”とか細菌と聞くと「わぁ〜きたない」と思われるでしょうね。でも私たちは,細菌をまったくなくして生活することは不可能なのです。体の表面や口の中,腸の中にはたくさんの常在菌が住みついています。それらは,ふだんは病原性の強い細菌が私たちの体に住みつくことを防いでいてくれます。常在菌をなくしてしまったら,人間は生きてゆけないでしょう。しかし,だからといって「じゃぁ,手を洗わなくてもいいや」ということにはなりません。細菌感染でおこる病気から自分を守るためには,うがいや手洗いは必要なのです。細菌はペットなどの,あらゆる動物も持っていますし,土の中や空中にもあります。ですから,外から入ってくる病原菌をくい止めることが大切なのです。

そう言えば,昔のアメリカ映画で「宇宙戦争」というのがありました。地球を侵略をする宇宙人に対して,地球人の武器はまったく歯がたたなくて,人類はもう滅亡だと誰もが思ったとき,悪い宇宙人たちをやっつけたのは地球上にいるたくさんの細菌たちでした。おそらく,このアイデアが後の「インディペンデンスデイ」にもつながっていたんですね。


home