国交省鉄道局の軌間可変技術評価委員会は10/9/7、「軌間可変電車(フリーゲージトレイン)の技術開発に関する技術評価」を発表した。 国交省・鉄道局のホームページに掲載。

走行性能について、直線コースでの高速走行について基準をクリア―したとしながらも、曲線区間について「現行特急の曲線通過制限速度を10〜40km/h程度下回る」性能にとどまっていると述べている。
重要なのは、今後の対応として、引き続き開発を続けるとしながらも、「台車(車両)の改良のみでは、現行特急並みの性能を達成することは難しい」と述べ、軌道(線路)の改良と併せて実施するとしていることである。

評価委員会報告はこの数年、在来線の曲線(カーブ)での安定性が確保できないことを繰り返し指摘し、台車の改良をはかってきた。今回、とうとう台車改良だけでは難しいと言い切るところまできた。
併せて、高速走行はできるが、走りこんだ場合の高速走行性能に与える影響は明確でなく、検証が必要だとも述べている。
交通手段として第一義的な安全性についての見通しがたたないのが現状である。


なぜ日本JRでは難しいのか

フリーゲージトレインは世界的にはスペインやフランスなどで実用化している。日本では線路の幅が違うところに相互乗り入れができる「夢の列車」として、1994年に開発が始まった。16年間と二百数十億円をかかているが、まだ完成の見通しはたっていない。完成の見通しもないものを前提とする長崎新幹線の工事だけが進んでいくなどとんでもないことである。
日本のJRは線路の幅が狭い、狭軌鉄道である。狭軌鉄道を高速で走るフリーゲージトレインは世界のどこでもまだ成功していない。ちなみに日本の在来線は106.7CM、日本の新幹線は143.5CM、スペインは166.8CM、フランスは143.5CM。

フリーゲージトレインは車輪の幅を調整する機械を積み込むので、新幹線車両に比べて重量が1.3倍〜1.4倍程度になるといわれている。
列車がカーブを安定して走行するには、重心が低く、車輪の幅が広いことが重要である。スポーツカーのように、重心が低く、地をはうように走行することが望ましい。
日本のフリーゲージの場合、車輪の幅が狭いので、重心を下げる工夫が難しい。相対的に重心が高くなれば、高速でカーブ走行するとき遠心力が大きくはたらき、それをカバーできず、走行が安定しなくなる。特急カモメではそれをカバーするために振り子走行が導入されているが、フリーゲージトレインでは構造上それが難しいといわれている。
評価委員会は、今後の研究・開発で車両の軽量化や軌道(線路)の改良でカバーすることをめざすとしている。

それには問題がでてくる。時間とお金をかければ技術的に改善するかもしれない。しかし、その車両を導入する民間会社のJR九州には採算性が出てくる。
フリーゲージトレインを導入しようという計画は、以前は全国各地にあったが、今日では長崎新幹線(九州新幹線西九州ルート)だけといわれている。
車両の価格が新幹線車両の10倍、それに特注線路の敷設、メンテナンスの費用までかかるとなれば、JR九州として導入できるのかが問題になる。
JR九州は民営化後20数年たっているが現在でも株の上場ができない。鉄道部門は採算があわず、優遇税制や他のJRの援助などで黒字になっているといわれている状況で、日経新聞10/9/8付で、JR九州のフリーゲージトレイン導入についての懸念を報じた程である。

フリーゲージトレイン開発に赤信号

 技術評価委員会「台車(車両)改良では難しい」