長崎新幹線問題学習会    戻る

   民主長崎県政をつくる会など10団体主催で、2007年11月4日、長崎市民会館で開催。

講師は民主長崎県政をつくる会事務局長・深町孝郎氏。テーマは“本当に必要か?「長崎新幹線」”
長崎新幹線より、暮らしや教育を

 民主県政をつくる会、県労連、建交労、高教組、新婦人、長商連、民医連など10団体がよびかけて11月4日、長崎新幹線についての学習会を開き、約50人が参加し、この問題について話し合いました。

 冒頭、深町孝郎氏が参加したNHKの新幹線問題の特集番組の一部をビデオを上映。つづいて深町氏が「本当に必要か?長崎新幹線」と題して報告を行ないました。

 深町氏は最初に、長崎新幹線は新幹線の基準を満たしておらず、本当に新幹線といえるのかと疑問を投げかけました。
 さらに、巨費を投じて長崎−博多間わずか26分の時間短縮にしかならないこと、負担がさらに増える可能性があること、経済効果は他県の例を見ても期待できないことなどを詳しく説明。マスコミの世論調査を紹介して、県民は新幹線を求めていないと述べました。
 「県の借金は一兆円。無駄な事業はやめて県民が本当に必要とするものに税金を使うべき」と批判しました。

 堀江ひとみ県議は、県が財政不足を解決するために職員給与の引き下げや職員数の削減、補助金カットを進めようとしていながら、一方で、新幹線や諫早湾干拓など、大型特定公共事業の予算は確保していることを報告しました。

 主催者より、「長崎新幹線建設を考える県民の会(準備会)」結成の提案がおこなわれて確認されました。今後、宣伝・署名などを通じて長崎新幹線の問題点を県民にもっと知らせようと呼びかました。
 
長崎「新幹線」問題学習会(11/4)


     
    本当に必要か? 「長崎新幹線」                 深町孝郎           2007.11.04

1.長崎に来るのは本当に新幹線なの?
 ◆新幹線(フル規格新幹線)とは−高速、安全、大量輸送の手段
   時速270キロ以上。軌道幅1435o(標準軌道)。踏切がない(立体交差)、カーブと勾配に基準。
 ◇ミニ新幹線(正式には高速化在来線という) − 秋田、山形新幹線。従来線と併用。
   従来のJR線の軌道幅を標準軌道に修正(安く、工事期間短縮)。
 ◇長崎に来るのは新幹線、ミニ新幹線でもない。スーパー特急方式。
   狭軌新幹線(軌道幅は在来線と同じ1067o)。武雄−諫早間以外は現在のJR線のまま。
   速度、踏切、カーブ、勾配でも新幹線の基準を満さず。
   新幹線擬き(もどき)−のぞみ、ひかり、こだま型は来ない、来れない−特急かもめの改良版。

2.長崎県が宣伝する新幹線効果は本当か?
※ウソとごまかしの宣伝−根拠も示さず「いいこと」だけ。
   長崎県の主張
    ・2700億円(武雄・諫早間だけの建設費用)かけて26分短縮。
    ・新幹線効果でまちづくり、経済活性化、観光振興をはかる。
    ・小さな地元負担(312億円)で大きな事業(2700億円)ができる。
    ・今やらないと不可能になる。
(1)巨費を投じてわずか26分の短縮−実際は2700億円にとどまらない
※2700億円(佐賀県分1000億円、長崎県1700億円)。−1分短縮に百数十億円。
  長崎県と関係市・町の負担312億円(18.3%)。
  鳥栖・武雄間の複線化、長崎駅の改修、立体交差工事(地元負担あり)など含まず。
  さらに当初の計画予算で終わらない(諫早干拓事業は当初予算の2倍に)。運賃は高くなる。
※「小さな地元負担(312億円)で大きな事業(2700億円)」のゴマカシ
  公共事業・新幹線建設費用はすべて国民・県民の税金。県の負担は毎年30億円。
  きびしい県・市県財政のなかでの公共事業−必要性、緊急性がきびしく問われる。
  県財政赤字−借入金1兆781億円。県民一人あたり71万円、4人家族で287万円。
※県民多数は新幹線を求めていない
 どのマスコミ調査でも「不必要」が「必要」を上回る。 (別紙資料参照)
   県民の多数は現在のJRに不便を感じているか−感じていない。
※フリーゲートレインとは?
 車輪の幅を調整できる車両
  フリーゲージトレインはまだ実験段階−安全性も実用化も確立していない。
(2)経済効果は本当にあるのか?
※新幹線利用者が増えないのに経済効果という疑問?
 国土交通省予測−将来利用者(6100人)は増えない。経済効果も、経済効果もない。
 ところが博多・鳥栖間をフリーゲージトレインにすると突如700人増える(?)−説明できず。
 山形、秋田では新幹線完成後逆に観光客は減っている。
※「経済的波及効果4300億円」の疑問?
 50年間で4300億円の効果、全国への波及効果、長崎へはごく一部だけ。
 「国土交通省の試算であり県として答える立場にない」と説明できない。
※マイナス効果を説明しない
 ストロー効果−福岡・天神への一極集中を促進−(親和経済研究所など5県のシンクタンクの調査)
   長崎、佐世保、熊本、大分、宮崎、鹿児島の6都市の住民への調査('06.07)  (別紙資料参照)
   福岡地区へ訪問する人の割合−@佐世保64.8%、A宮崎、B長崎45.0%。
   年間に1回以上訪問する人の回数−@佐世保6.0回、B長崎3.5回。
   訪問目的の買い物では@佐世保で80.4%、長崎75.4%と他よりも高い。
※誰が新幹線建設を求めているか。もうかるか−新幹線建設工事を請け負う大手ゼネコン
  地元業者は下請け、孫請けで利益は上がらない。儲けはゼネコンが県外に吸い上げる。

3.在来線・長崎本線の切り捨て−平行在来線のJRからの切り離しが条件
※採算性の最も低い諫早−鹿島間を第3セクターとして切り離す。
 全国の例からも鹿島−諫早間の第3セクター破綻は必至。廃線。
 採算がとれる可能性の高い「長崎−諫早」間はちゃっかりJR九州が運行。
※上下分離方式−第3セクターの赤字を小さく見せるための小細工。
 線路や駅舎などの管理・補修を地元自治体に押しつける。費用(年間2億3千万円)は長崎、佐賀県 が永久に負担する。
 ※第3セクターの赤字を県が永久に負担し続けることはあり得ない。
県営バスは県民の重要な足。昨年に続いて今年4月から赤字を理由に、島原半島と諫早周辺で20路線以上を廃止した。その金額は年間2億5千万円。
県は赤字を理由に県民の足(県営バス)を切り捨てながら、一方で県が赤字の第3セクターに毎年数億円を支出をつづけることは矛盾、打ち切りになる。
 ※必ず第3セクターは破綻する−黒字になる。

4.税金のムダ使い−長崎新幹線建設はやめ、県民の要求・必要とすることに使うべき。
※新幹線建設は10年間を予定−仮に2700億円としても、長崎県の負担は312億円。毎年約30億円となる(30億円にはおさまらない)。
※県は「財政がきびしい」を理由に−高校授業料は32年間連続値上げ。乳幼児医療費の現物給付を拒否(長崎市が無料化を実施すると市への補助
金カットの仕打ち)。
※年間30億円あれば何ができるか−県民の切実な要求が実現する
 ・高校授業料引き上げは中止数百万円。乳幼児医療無料化の窓口払い廃止は約4億円。乳幼児医 療の無料化6歳までを中学校までに約9億円。学童保育への補助の倍加は3億4700万円。
 ・国民健康保険会計への補助に5億円出せば全国最高水準の援助になる。
※実際に新幹線を建設すると負担は毎年30億円では済まず、必ず増える−そんなお金があるなら、県民の要求の実現、赤字の解消にこそまわすべき。