「混迷の21世紀を世界人類が乗り切るために必要なもの」それは「日本国憲法9条の精神」に違いない。
 今年33歳の私にとって、10年後の明るい未来というのは想像しにくい。かといって、絶望的というわけでもない。なぜか。まだ、この憲法九条と、コスタリカという平和憲法を守り、実現している国が存在するからだ。
 このたび、「城山憲法九条の会」が発足し、城山地区の集いを行うことができた。開催直前に、会場の変更を余儀なくされる、ということもありはしたが、まずは、無事に集いを行うことができ、40人を越える人々の参加があったことに、勇気付けられた。まだまだ、やれる、ということを実感させてもらう場となった。私達、市民の手で行えた、ということに喜びを感じている。
 集いでは、下平さんご自身の被爆体験、「九条の会」ビデオ上映、園田鉄美さんの「憲法の歌」、参加者の憲法への思いを語り合う時、など、有意義な時間を過ごせた。下平さんの被爆体験を聞き、改めて、ナガサキの思いと、憲法九条のつながりを考えることができた。ナガサキに来てから多くのことを学ばせてもらった。長崎出身でない私がナガサキで学んだこととは、「正義の戦争は存在しない」ということだ。それは、憲法九条の精神につながるものだろう。
 戦争体験のない私であるが、憲法9条について考えた最初のきっかけは、日本の侵略戦争を学んだことにある。大学4年のおわり(1995年)に参加したフィリピンスタデイツアーの中であった。日本に軍事的に侵略されたフィリピン、アジア諸国の人々にとって、たとえ、日本が憲法9条を持っているとしても、自衛隊の存在がある以上信用できない、侵略戦争を反省していない国が日本であった。加害国日本へのまなざしには厳しいものがあった。 フィリピン到着の二日目に少しだけ参加させてもらった、フィリピン市民によるラリー(デモ行進)。ピープルパワーを感じさせる人々の熱気の中に、フィリピンのおばあちゃん数人が、英語で書かれた看板をぶらさげていた。このおばあちゃん達は、かつて、日本軍に痛めつけられた人達だった。「日本のPKO参加反対。日本の軍隊はまた、アジアを侵略するのか!」というような内容のものだった。ショックだった。「戦争は過去のもの。確かに戦争責任の問題とか、経済的侵略とかいろいろあるらしい(当時不勉強なので)けれど、日本には平和憲法があるし、自衛隊を海外に派兵することはないはずだ」と思っていたからだ。PKOに協力するかどうかなんて、国内的な問題と認識していた私にとって、アジアのちいさな島国の人達が、これだけ、日本の動きに関心があるなんて、思いもしなかった。
 日本の侵略戦争のことは、アジア諸国では過去のことではないこと、(長崎だってそうなのだが)、日本はアジアの人々に信用されていない(戦後の日本の態度をみれば、当然と思われるが)ということを実感した旅だった。
 あれから、10年。冷戦は終わり、世界は「新たな戦争の時代」を迎えた。日本はイラクへ武器所持で派兵してしまった。憲法9条があるのに。あの時のフィリピンのおばあちゃん達が憂えていたことが現実のものになりつつある。
 ちまたでは、改憲論の声もある。「北朝鮮が攻めてきたら、どうする!」「非核三原則を盛り込んだ憲法に!」「自衛隊の現状と憲法の内容が合わないから、現実論の憲法を」など様々だ。
 しかし、私より若い世代である高校生(普通の女子高生)はこんな風に述べていた。「9条の中にある、『国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する』の『永久』の言葉の重さを考えると、とても、憲法を変えることはできないと思う」と。
 1946年5月27日に毎日新聞が発表した、日本国憲法最終草案についての世論調査では、「戦争放棄の条項を必要とするか?」の質問に、「完全放棄に賛成だ」という人が559%いた。愛する者や全てを失い、アジアの国々にとてつもない損害を与えて、その上、広島や長崎では原子爆弾を使用され、今に続く苦しみを与えられた人々のうち、過半数の人々が、「もう、戦争は二度といやだ、こりごりだ。戦争するよりはしない方がいい」という道を選んだことに、私達は耳を傾け、歴史から学ぶ必要がある。 
 原爆で、今に続く悲しみを背負い、自らも傷ついているナガサキの人々から発する「それでも、戦争よりは、戦争をしないほうがいいのだ。」というナガサキの憲法9条堅持の声こそが「報復の連鎖」の世界を変える力を持つ。

 憲法9条こそが、これからの世界人類の存続に必要不可欠なものなのだから。


  
(この文章は長崎県九条の会の小冊子「平和憲法を守ろう」のなかに収録されています)

                              

城山憲法九条の会世話人 奥山 忍さん

 「城山憲法九条の会」に寄せられた“九条”、“憲法”、「九条の会」などに対する思い、感想、ご意見、提案などなど、“私からひとこと”のコーナーです。

2005.3.記

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ナガサキから発する九条堅持の声