アタマジラミについて

 
アタマジラミは、頭髪に寄生する昆虫で、頭皮から血を吸って成長し、毛髪に、1ミリに満たない卵を産みつけます。肉眼では、ふけ等と見分けがつきにくいですが、卵は毛髪に堅くくっ付いているので、指でこすっても動きません。顕微鏡で見ると、診断ができます。8日前後で孵化して1ヶ月くらい生存するそうです。主な感染経路は、頭同士の直接接触で、保育園や家庭で集団感染をおこします。


治療法

 現在日本で使用できる薬は、「スミスリン」という殺虫剤がありますが、処方薬ではなく、薬局・薬店で購入していただかなければなりません。パウダータイプとシャンプータイプがあります。シャンプーには櫛が付属しています。シャンプー後の髪がぬれている状態で、付属の櫛をつかって、頭全体を丁寧に梳いて、成虫や卵をすきとるようにしてください。なお、普通の櫛では歯の間隔が広く効果がありません。薬剤抵抗性のシラミでなければ、一回の処置で、虫はほぼ駆除できますが、卵には効かないので、2~3日おきに3~4回程度の処置が必要です。なお、最近、薬剤抵抗性のシラミが出現しているそうで、何回か処置をしても、元気な虫が見つかるようなら、櫛による物理的な駆除に切り替えたほうがよいそうです。


感染を防ぐには

 卵が見つかった患者さんだけを治療しても、他の人にうつって広がっていくことがあるので、周囲の人(家族、保育園などのお友達)も一斉に治療する必要があります。また、首や頭に触れる衣料、枕カバー、タオル、櫛、ブラシ、帽子などを介して感染することもあるので、こういったものを共有しないよう注意してください。衣類や枕カバーなどは、乾燥機で乾燥させるか、アイロンをかければ、万一虫や卵が付着していても死滅させることができます。また、人から離れて、吸血できなくなった虫は、1日で約半数が死に、3日間絶食させると生き残れないので、室内の掃除は電気掃除機による通常の方法で十分です。なお、現代の日本の衛生状況では、シラミによる病原体の感染は特に心配する必要はありません。


最後に、日本臨床皮膚科医会と日本小児皮膚科学会が、皮膚の学校感染症について、見解を発表していますので、アタマジラミの項目をご紹介します。

頭虱(アタマジラミ):互いに触れ合って遊ぶ機会の多い幼児・小児には最近ではよく発生します。発生した場合はその周囲がみんな一斉に治療を始めることが大切です。一人を出席停止にしてもすでに周りにうつっている場合もあります。頭虱は決して不潔だから感染したのではありません。頭虱だからと差別扱いしてはいけません。治療処置を始めさえすれば、学校を休む必要はありません。



おまけ

 医院では、毛髪の卵を顕微鏡で確認して診断するまでで、治療はスミスリンを購入していただいて、ご家庭で行っていただくことになります。これを買ってくださいと、メモ紙をお渡しするくらいなので、見本くらい置いておこうと、近くのドラッグストアに買いに行きました。スミスリンシャンプータイプで2709円でした。一本80ml入りで、大人4回分の治療ができます。せっかくなので、自分でも試してみました。キャップが計量用になっていて、開けると少しにおいがします。説明書の指示通り、髪を濡らして付けてみました。泡立ちはあまりよくありません。においもそれほど気にならないですが、少し口を開けたら、口の中がまずくなりました。何回か口をゆすげば消えましたが、シャンプーを付けたまま5分間おかなければならないので、小さな子供さんにはつらいかもしれません。洗い流した後、普通のシャンプーをして終了。特に頭皮が痒くなったり、においで気分が悪くなったり、というようなことはありませんでした。なお、この薬品は、殺虫剤なので、万一飲み込んでしまったら、農薬中毒に対応できる医療機関を受診したほうが良いと思います。






以下は、前に患者さんから捕まえたシラミの画像と動画です。虫が嫌いな方や、右下の写真で不快感を抱かれる方は、動画はご覧にならないほうがいいかもしれません。


つかまえたシラミを腕に乗せてみました。すぐに動かなくなったので、しばらくして取り除いてみると、皮膚がわずかに赤くなっていました(白丸のところ)。この部分は、「虫刺され」ですが、かゆみなどはありませんでした。虫の数が少なければ、自覚症状がなく、いつのまにか増えてしまう恐れがあります。


 


アタマジラミの動画です。ケースのなかで動いているところです。クリックしてください。小さな脚を動かしてけっこう素早く移動します。頭の中で捕まえるのは、簡単ではありません。