時津の起源ははっきりしませんが、鎌倉時代には時津と呼ばれていたようです。

 大昔から日本では、縁起のよいものとして「時つ」という言葉があり、「おいわい」「うれしいこと」「おめでたいこと」「しあわせ」を意味して使われていました。

 日本で一番古い歌集である万葉集の中にも「時つ風吹くべくなりぬ」とあり、また、結婚式などおめでたい席でよく謡われる高砂という謡曲の中にも「国の治まる時つ風」と出ています。

 一方、時つの「津」は、もともと「港」「船着場」「船の停泊するところ」を意味し、油津(宮崎県)、津(三重県)、焼津(静岡県)、宮津(京都府)など、日本各地に津の付いている港町がたくさんあります。

 このように、縁起のよい「時つ」の「つ」が港を表す「津」と入れ替わって「時津」になったと伝えられています。

 この「時津」という地名には「宝物を積んだ船が満ち潮に乗り、沖から吹く風に運ばれてくる港」という意味も含まれており、この地に住む人々が「幸せを運んでくれる港になってほしい」という願いを込めていたと思われます

 「時津」という地名の発音は、現在はトキツ・トギツ・トギヅ・トキヅという四通りの読み方がありますが、昔の人たちは、「トギツ」と呼んでいたようで、今でも「トギツ」と発音する人が多いようです。

 これは、日本の習わしからきているようで、二つの漢字が合わさって一つの熟語になると元々の発音と違ってくるものがあり、風(かぜ)と車(くるま)が合わさると風車(かざぐるま)となるように、音が変化して「トギツ」と呼ばれるようになったと考えられます。

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とぎつのいわれ (時津町町勢要覧から)