いま,合唱で舞台に立つときには楽譜を見ないで歌う“暗譜”があたりまえになっています.楽譜を見て歌うと練習がたりないように思われることもあります.
でも,ほんとうは楽譜を見て歌うのが正式です.ためしにYouTubeあたりでみると,バチカンのシスティーナ礼拝堂聖歌隊をはじめ,聖歌隊はふつうに楽譜を見て歌っているのがわかります.また,イングランドのウェストミンスター大聖堂(カトリック),ウェストミンスター寺院(イングランド国教会),セントポール大聖堂,キングズ・カレッジ礼拝堂などの聖歌隊席には楽譜をおく専用の台があります.
これには,教会暦にあわせて,聖歌隊がつぎからつぎに新しい(または年に1度めぐってくる)曲を練習し,短時間で本番の儀式にのぞむ必要があるという事 情も絡んでいますが,それ以上に,楽譜にたいする敬意をはらうという意味があります.いまでこそ,ひとりひとりが楽譜をもちますが,ルネサンス時代の楽譜は数が少なく高価だったので,ひとつの楽譜を何人かで見て歌っていました.ですから,きちんと楽譜を見るのが作法だったのです.
日本でも,ヴォーカル・アンサンブル カペラが,ひとつの楽譜を8人で見て歌っています.