合唱でピアノなど鍵盤楽器の音の高さにぴったり合わせるとハモりません.なぜなら,鍵盤楽器はハモらない音程に調律してあるからです.無伴奏のときによくハモるのはこのためです.
ハモりは心理的なものではなく,れっきとした物理現象です.同時に鳴る音の周波数(振動数)が簡単な整数の比率になったときに,それぞれの音にふくまれる高い周波数の成分(倍音といいます)がぴったりとかさなって強めあうこと,また,倍音どうしの周波数の差の音(差音といいます)がいくつも生じ,これらのなかで周波数が同じになるものが強めあうことで,新たなひびきが生まれる現象です.このような,整数比にあわせた調律を“純正調”といいます.
さらに,周波数比が整数比でないときは“うなり”が生じて音がにごりますが,整数比になるとうなりが消えて透明な音になります.
きれいにハモるためには和音の周波数を簡単な整数比にする必要があります(といって周波数をはかるわけではありません.音のひびきをきいてあわせます).たとえば,1オクターブのふたつの音の周波数比は1:2です.また,ハモるドミソの和音は周波数比が 4.00 : 5.00 : 6.00 です.ところがほんとんどの鍵盤楽器では,1オクターブの周波数比を1:2にして,さらにすべての半音の周波数比を同じにしているため,結果的にドミソの和音の周波数比が 4.00 : 5.04 : 5.99 ぐらいになって,整数比になりません(数学が得意な人は計算してみてください).このような調律を“平均律”といいます.
日ごろから無伴奏で歌っていると自然にハモるようになり,純正調の音感がついてきます.伴奏がつくときは,伴奏よりもほかのパートの声をよくきくことがだいじです.