ルネサンス合唱曲はメロディーの美しさを第一に作曲されています.各パートが対等なポリフォニーの曲はもちろん,主旋律パートがあるホモフォニーの曲でも,すべてのパートにメロディーのながれがあります.そして,これらのメロディーが絡みあうことによって,ひとつの音楽がつくりだされます.このようなメロディーを歌うのは気持ちがよいものです.
ポリフォニーの曲は,主旋律パートというものがきまっておらず,曲のながれのなかで,ソプラノが前面にでたり,テノールが前面にでたりと,どのパートにも主役がまわってきます.そして各パートがうきしずみしながら,音を受け渡します.このやりとりが美しく楽しいのです.
ルネサンス合唱曲は,メロディーがからみあうなかで和音がつくられます.それもメイジャーコードとマイナーコードという,よくハモる和音がほとんどで,ところどころ引き立て役の不協和音が入るので,より美しくひびくのです.歌っていて正確にハモったときは,まわりの空間から音がでるように聞こえます.これが自分の体内で共鳴することもあります.このようなことは自分で歌う人だけが体験できます.
ポリフォニーの曲は,同時に歌われる歌詞やリズムがパートごとに違うので,他のパートの歌詞やリズムに合わせることはできません.ですから,しっかり楽譜をみて,まわりのひびきをきいて,タイミングや音の高さをつかむ必要があります.これをやるのがおもしろく,うまく合ってハモったときは,とても楽しいのです.
ルネサンス合唱曲は少人数アンサンブルに向いています.そのほうが,メンバーどうしの音程が正確に合って,よくハモります.また,自分の歌いかたひとつで,全体のできばえが変わるので,存在感・緊張感があり,おもしろいのです.世俗曲ならば,各パート1-2人ぐらいが最適でしょう.教会音楽なら成人だけで歌うときは各パート5人以内にとどめておくのがよいでしょう.伝統的な聖歌隊では,全体で30-60人ぐらい,うち半分ぐらいが男の子によるソプラノ,のこりがおとなの男声で,アルト・テノール・バスに分かれています.