腐葉土の自然観察

長男の自由研究 (平成16年夏休み)


1.目的

わが家の周囲は自然が豊富で,今までに自由研究では様々なテーマをその中から見つけてきた。昨年おこなった「身近な川調べ」では,腐葉土と川の関係について知ることができた。また,理科や社会科の授業では,森林の土が人々の生活と深く関係していることも習った。そこで今度は,腐葉土が実際にどのようになっているのか興味をもったので,くわしく調べてみることにした。

八郎岳
わが家から見た八郎岳

2.方法

調査場所:八郎岳の森林
調査期間:平成16年8月6日から8月20日

腐葉土はどのような物からできているか調べる。
腐葉土に含まれている物を観察する。樹木の種類と腐葉土は関係があるだろうか。

腐葉土にはどのような生物がいるか調べる。
腐葉土ができるのには生物が関係しているようなので,ルーペや顕微鏡で観察する。さらに,微生物のはたらきを実験で確かめてみる。

3.結果

腐葉土はどのような物からできているか。
森林の地面には大量の枯葉が落ちていた。八郎岳の森林にはクヌギ・コナラなどドングリの木が多い。これらの木は落葉広葉樹で,地面に落ちた枯葉の多くはドングリの木のものだった。所々に植林されたスギの林があった。はじめの予想では,スギは常緑針葉樹なのでスギ林には腐葉土が少ないと思った。しかし実際には,枯れたスギの葉も予想以上に多く,腐葉土も多かった。また,スギ林にも多くの広葉樹の葉が落ちていた。これは,風などでとばされて落ちた広葉樹の葉だと思った。地面の落ち葉をかき分けてみると,黒色の腐葉土があって,さらにその下には少しかたい土があった。土の断面が出ている場所を見ると,腐葉土の下には黄土色の土があった。この土は,古くなった腐葉土が圧縮されたものだと思った。

腐葉土腐葉土(拡大)腐葉土
黒色でつぶが大きい。やわらかく軽い。細かい木の葉や枝がまじっている。 拡大(100倍)して見ると,茶色や黒く見えるものが多い。

下の土下の土(拡大)腐葉土の下の土
黄土色でつぶが小さい。かたくて場所によっては石のようになっている。拡大(100倍)して見ると,黄土色や無色に近いものがまじって,腐葉土にくらべると細かい断片のようなものが多い。


腐葉土にはどのような生物がいるか。
表面の落ち葉や腐葉土をかき分けてみると,様々な生物が見つかった。これらは土壌動物とよばれている。理科の授業でダンゴムシが枯葉を食べることを知っていたので,これらの生物は枯葉などを食べて糞をすることで腐葉土を作るはたらきをしていると思った。図鑑などで調べてみると,土壌動物には枯葉や昆虫の死がいなどを食べる雑食性の生物が多かった。これらの生物は,陸上や海の中の生物と同じように,食物連鎖でつながっているのではないかと思った。さらに腐葉土とその下の土を持って帰って顕微鏡でくわしく観察した。枯葉や腐葉土に蒸留水を加えてよくまぜて,その水を顕微鏡で見た。すると,以前に池や川の水などで見たことのある小さな生物がいろいろと見つかった。

体の大きさによる土壌動物の分類

大型土壌動物
(体長2mm以上)
ミミズ,ヒメミミズ,アリ,ヤスデ,ムカデ,マキガイ,ワラジムシ,ダンゴムシ(その他昆虫の幼虫)
中型土壌動物
(体長0.2〜2mm)
トビムシ,ダニ,線虫,クワムシ,ワムシ
小型土壌動物
(体長0.2mm以下)
アメーバ,せん毛虫,べん毛虫


ハサミムシとハムシ ムカデ ヤスデ
ハサミムシとハムシ ムカデ ヤスデ
昆虫の幼虫 ワラジムシとダンゴムシ 枯葉を食べるダンゴムシ
昆虫の幼虫 ワラジムシとダンゴムシ 枯葉を食べるダンゴムシ
せん毛虫 ヒルガタワムシ アメーバ
せん毛虫(400倍) ヒルガタワムシ(100倍) アメーバ(400倍)
線虫 真菌 細菌
線虫(100倍) 真菌(カビ)(100倍) 細菌(400倍)
ケイソウ 虫の体の一部 植物の一部
ケイソウ(400倍) 虫の体の一部(100倍) 植物の一部(100倍)

土壌微生物
カビのなかま,細菌,原生動物(アメーバ,せん毛虫,べん毛虫など)
参考書によると,ふつうの畑では土壌動物の量は10aあたり700kgで,このうち70〜75%が糸状菌(カビ),20〜25%が細菌,ミミズなどの土壌動物は5%以下となっている。このことから,土には非常に多くの微生物が含まれていて,腐葉土ができる原因に微生物が大きく関係していると思った。

土壌微生物の働きを見る実験
肉や野菜などが腐るのは,微生物がそれらを栄養にして,分解することが原因になっている。そこで,今までの観察から枯葉や生き物の死がいなどは,土の中の多くの微生物によって分解されるのだと思った。腐葉土の中で微生物が働いていることを確かめるために,次のような実験をした。

  1. ポリエチレンのふくろAにふるいにかけた腐葉土を100g入れ,その中に1%ブドウ糖水溶液を50ml入れる。
  2. ポリエチレンのふくろBには腐葉土を100g入れ,その中に蒸留水を50ml入れる。
  3. 両方のふくろに同じくらいの空気を入れ,しっかりと口を閉じる。
  4. 両方のふくろを暖かい所に1日おく。
  5. それぞれのふくろの中の気体を別々の石灰水の中に通して,にごりぐあいを見る。ブドウ糖が分解すれば,二酸化炭素が発生する。

ふくろA ふくろB 気体を調べる
腐葉土+ブドウ糖液 腐葉土+蒸留水 袋の中の気体を調べる
実験前の試験管 Aが強くにごった
実験前の試験管 Aが強くにごった

ポリエチレンのふくろAは,微生物がブドウ糖を分解して発生した二酸化炭素によって強くにごった。ブドウ糖水溶液は,微生物が分解しやすい栄養分なので反応を早く見ることができる。ポリエチレンのふくろBもごくわずかににごっている。これは,腐葉土の中にもともとある栄養分を微生物が分解して,二酸化炭素がわずかに発生したのだと思った。

4.まとめ

  1. 八郎岳の森林では,落葉広葉樹の落ち葉が多く,これらが腐葉土の主な材料になっている。
  2. 腐葉土の下には普通に見るような土があった。この土は古くなった腐葉土や岩石がまじった物だと思った。
  3. 腐葉土の中には多くの種類の生物が住んでいて,目で見ただけでもかなり数が多い。
  4. 微生物は水中や土の中など,様々な場所で活動している。

5.感想

腐葉土はスポンジのように雨水を吸い込み,土砂災害を防ぐのに役立っている。またフィルターの役目もして,きれいな水を川へ注ぐ。大川の源流は,登山者のための飲料水として利用できるくらいのきれいな水が出ている。上流から中流では,市民農園や水田に水が引かれ,さらに離島(高島)の生活用水にも利用されている。このように,大川の水は多くの人々の生活を支えている。その水は八郎岳の腐葉土が作っていると言っていいと思う。腐葉土には様々な種類の生物がいることがわかった。これらの生物は,ふつうは「気持ちが悪い」という理由で人々からきらわれている。しかし,そのような生物たちのおかげで腐葉土が作られて,人々の生活がなりたっていることを忘れてはならない。今回の自由研究では,今までに学校や本などで少し知っていたことを実際に確かめることができて良かった。これからも身近な自然を大切にしていきたいと思う。

大川の源流 川の水を利用した稲作 高島浄水場
大川の源流 川の水を利用した稲作 生活用水(高島浄水場)