私たちの体の中を流れている血液の中には,赤血球や白血球などの血液細胞がたくさん含まれています。そのような細胞はとても小さいので顕微鏡(けんびきょう)を使って1000倍に拡大して観察します。また,そのままでは色がうすくて形がわかりにくいので,染色(せんしょく)という方法で色をつけて見ます。私たちの体の中に侵入してきた,病気の原因となる微生物(病原微生物)に対して,すばらしい攻撃能力をもった細胞たちを見てみましょう。
染色なし | 染色あり |
左の写真で矢印は白血球ですが,染色をしていない場合とした場合をくらべると見え方にずいぶん差があります。白血球のまわりにあるのは赤血球です。
好中球(こうちゅうきゅう)
血液の中の白血球で最も数が多い。好中球は,病原微生物を食べてリゾチームという物質で溶かします。好中球が細菌と戦ってたくさん集まって死んだものが膿(うみ・のう)です。リゾチーム(酵素の一種)は鼻汁・涙・唾液などにも含まれていて,私たちの体を守っています。
細菌と戦う好中球
左の写真では8個の好中球が見えます。細くて短いのが細菌で,好中球が細菌を取り込んでいるのがわかります。
単 球(たんきゅう)
大型細胞で,外から入った細菌などの異物や,人体内の老廃物(ろうはいぶつ)を取り込んで消化します。単球の仲間には,血管以外に広く分布する大食細胞(たいしょくさいぼう,別名:マクロファージ)と呼ばれるものがあります。大食細胞は病原体を飲み込んで消化し,その情報をヘルパーT細胞に伝えます。大食細胞とリンパ球は協力し合って病原微生物を攻撃するのです。
マクロファージ
口や鼻から入った空気は,気管支(きかんし)を通って肺のすみずみまで送られます。空気の中には細菌や小さなゴミもたくさんありますが,肺の中にあるマクロファージはそのような外から入った異物を食べてしまいます。写真では,マクロファージの中に小さく黒っぽいゴミがたくさん見えます。血液細胞とは別の方法で染めています。
リンパ球 (写真は小リンパ球)
リンパ球の種類には,ヘルパーT細胞・キラーT細胞・B細胞・ナチュラルキラー細胞があります。ヘルパーT細胞は大食細胞からもらった情報をもとに,リンパ球全体の働きを指揮します。B細胞は抗体(こうたい)という物質を作って戦います。抗体というのは非常にすぐれたミサイルのようなものです。キラーT細胞やナチュラルキラー細胞は直接的に病原微生物と戦います。
血小板(けっしょうばん)
血小板は赤血球の半分から三分の一くらいの大きさです。血小板は,ケガをしたときに傷ついた血管のところに集まってきて傷をふさぎます。左の写真では,15個くらいの血小板がお互いにくっつき合って,かたまっています。
その他の血液細胞
好酸球(こうさんきゅう) | 好塩基球(こうえんききゅう) |
好酸球と好塩基球
通常はどちらも数は少ない。好酸球は貪食作用と殺菌作用によって寄生虫などの大きな対象に対して傷害性もつ。好塩基球はヒスタミンやヘパリンを含む顆粒を持つ。両者ともにアレルギー反応に関与しているが,詳細については不明な点も多い。
せん毛をもった細胞(繊毛上皮細胞 せんもうじょうひさいぼう)
のどの奥や気管・気管支の表面をおおっている細胞です。矢印の部分は「繊毛」と呼ばれる細かい毛がたくさんあります。これは,鼻や口から入ってきたゴミや微生物を,外へ外へとおし出す役目をしています。せん毛の動きは,ちょうど人が一列になって「ボール渡しゲーム」をやるのに似ています。写真では,長方形の細胞が8個くらいならんで見えます。右下に見える丸い細胞はリンパ球です。
体の表面をおおっている皮膚
矢印の部分は皮膚のいちばん外側です。この部分の細胞はじょうぶにできています。古くなった表面の細胞はどんどん「アカ」になって落ちていきますが,そのすぐ下には新しい細胞があります。