みのる君はお誕生日におじいちゃんからポケットゲーム機を買ってもらいました。前から欲しかったのでとても喜びました。もちろん毎日毎日あそびました。ある日テレビで新しいソフトのCMが流れていました。みのる君はすぐに欲しくなりました。そして家族でデパートに行った時,ゲームコーナーの前でおねだりしました。
「お友達もみんな持っているし,お勉強もお手伝いもちゃんとするから,ねぇ買って!」何度も何度もおねだりしました。
そんなみのる君の目を見つめて,お母さんはやさしく言いました。
「今日はそんな高い買い物はできないわ。このソフトは3000円もするのよ。みのるのこづかいはいくらかしら?」
「ひと月500円だよ」みのる君は口をとがらせて答えました。
「そうね,そうしたら何ヶ月分かな?」
「えーと,六ヶ月分だよ」ちょっと,とくい気です。
「よく計算できたわね,みのるは六ヶ月分のおこづかいをいっぺんに使おうとしているのよ。新しいのは次のプレゼントまでがまんしようね」みのる君は無理やりお母さんから納得させられました。でも正直いってなんだかよくわかりませんでした。
ある日,学校の帰りにみのる君は大きな犬に追いかけられました。一緒に帰っていたお友達もびっくりして逃げていったので,みんなとはぐれてしまいました。犬は大きな声でほえながらどこまでも追ってきます。そして公衆電話のボックスまで来ると,みのる君はお母さんがお守り代りに名札の裏に入れてくれた10円玉を思い出しました。
お母さんに助けにきてもらおうと思ったのです。でも,あんまり慌てていたので10円玉をコロコロと溝の穴に落っことしてしまいました。「あっ,大切な10円玉だったのに!」目から大きな涙がこぼれてきました。犬はなおも吠え続けています。すると,お友達が大人のひとを連れて戻ってきてくれました。みのる君は犬を追い払ってもらったのでほっとしました。そしてみんなに「ありがとう」と言いました。
「10円玉だって大切なんだ。ゲームソフトだって,10円玉が300枚も必要なんだ。すっごく高いんだ」みのる君は,お母さんが言った意味がわかったような気がしました。早くおうちに帰ってお母さんに教えてあげようと思いました。
by お母さん