平成18年 理科自由研究 小学6年 (参考写真や解説は一部を省略しています)
(テーマを選んだ理由)
顕微鏡を使うと,目に見えないくらいの小さなものを見ることができます。図書館で本を見ていたら,顕微鏡が発明された頃にイギリスのフックという科学者が,コルクを観察してたくさんの小さな部屋のようなものがあるのをみつけ,それを細胞(cell)と名づけたことを知りました。それで,僕も細胞に興味を持ったので,いろいろな細胞を顕微鏡で観察してみることにしました。
(観察した細胞)
材料は植物や動物など,いろいろなものを選びました。
(1) 玉ねぎと根 (5) 口の中の細胞
(2) ツユクサの葉と茎 (6) ウニの精子と卵子
(3) クロモの葉 (7) メダカの血液
(4) 川原大池の水 (8) パンにはえたカビ
(観察に必要なもの)
(1) 顕微鏡
(2) スライドグラス
(3) カバーグラス
(4) 染色液(酢酸カーミン液)
(5) デジタルカメラ
(観察結果)
(1) 玉ネギと根
玉ネギの「りん茎」の表皮をはいで,スライドグラスにのせ酢酸カーミン液をかけます。カバーグラスをかけて顕微鏡で観察します。石だたみのように,区切られた細胞が見えます。中の丸いものは核で,仕切りのような細胞壁にくっついているのもあります。細胞壁は細胞と細胞の間を分けていて,厚みがあります。酢酸カーミンは染色液で,細胞に色をつけて形を見やすくします。特に核が赤く染まってよく見えます。
玉ネギ 100倍 | 玉ネギ 400倍 |
次に,玉ネギを水栽培のようにして,のびてきた根を観察しました。根の先の部分を3ミリくらい切って,スライドグラスの上で押しつぶして染色液をかけて見ます。少し小さな細胞がならんで見えました。押しつぶした時にばらばらになったものもあって,細胞のようすがよく見えました。核の中やそのまわりには,つぶのようなものが多くあります。
根の先にある細胞 400倍 |
(2) ツユクサの葉と茎
ツユクサの葉を二つに折って,片方を引っ張り葉の裏側の表皮をとります。表皮をスライドグラスにのせ,水をかけてカバーグラスをかぶせて顕微鏡で観察します。
植物の葉の裏側には気孔が多くあります。気孔は植物が生きていくのに必要な,光合成や呼吸のための空気や水蒸気が出入口です。気孔には孔辺細胞があって,開いたり閉じたりして空気や水蒸気の出入りを調節します。孔辺細胞には光合成を行う葉緑体もあって,染色液をかけて見ると,核も見えます。
気孔 100倍 | 気孔 400倍 | 酢酸カーミン染色 |
次に,ツユクサの茎をうすく輪切りにして見ました。たくさんの丸い穴のようなものがみえます。茎の外側のほうには,葉緑体のつまった細胞があります。そのすぐ内側には維管束(いかんそく)という部分が所々にあります。維管束というのは,根から吸い上げた水分や養分が通る管と,葉で光合成によって作られた養分が通る管がある部分です。
途中で茎を切って根がなくなったツユクサを水に入れておくと,枝分かれした所から根が出てきます。これは,根になるような性質をもった細胞が茎の中にもとからあったのだと思いました。根は1日に約1cmくらいのスピードでのびました。
茎 40倍 | 茎 100倍 | 茎の途中から出た根(5日め) |
(ツユクサについて,あとでわかったこと)
ツユクサは地面をはうようにして広がって成長しているのを見ました。そして,ところどころで枝分かれしている部分から根が出ていて,茎が地面にはりついていました。これで,茎にははじめから根を出すための細胞があったのだということがわかりました。
地面をはうように広がる | 茎の途中で根が出ている |
(3) クロモの葉
クロモはオオカナダモとよく似た水草で,葉がうすいのでそのままスライドグラスにのせて観察できます。葉の細胞は細胞壁に囲まれていて,緑色の葉緑体が数多くありました。葉緑体のない部分は色がついていません。植物が緑色に見えるのは,葉緑体があるからだということがよくわかります。ツユクサの葉で見たような気孔はありませんでした。
(原形質流動)
人間の体の中で血液が流れているように,植物でも細胞の中で,物が移動しています。植物が生きていることがよくわかります。水草の葉を太陽にあてておくと,細胞が活動して原形質流動を見ることができます。葉緑体が細胞壁にそってぐるぐる移動しているように見えます。
クロモの葉 100倍 | 原形質流動 400倍 | 原形質流動 400倍 |
(4) 川原大池の水
写真をとったのは1つの細胞で体ができているものです。ケイソウやミカヅキモは葉緑体を持っていて植物の仲間です。ゾウリムシは「せん毛」を使って動きまわります。アメーバは体の形を色々に変化させて「偽足」をのばしながら動きます。ゾウリムシやアメーバは動物の仲間です。ミドリムシは長い「べん毛」を使って動きますが,葉緑体を持っていて,動物と植物の両方の特徴があります。
ミカヅキモ 100倍 | ケイソウ 400倍 |
池の水をコップに入れて5日ぐらいすると,ミドリムシの数がふえていました。このような生物はどのようにしてふえていくのか,調べてみたいと思います。
ゾウリムシ 400倍 | アメーバ 400倍 | ミドリムシ 400倍 |
(5) 口の中の細胞
口の中にある頬の内側の部分を,綿棒を使ってこすります。それをスライドグラスに塗って,染色液をかけて観察します。細胞は平たい感じがして,しわになった紙のようです。細胞の中心部分に核があります。このような細胞は,もとあった場所から簡単にはがれるようです。体の表面をおおっていて,皮膚をまもっています。
綿棒でとる | 扁平上皮細胞 100倍 |
(6) ウニの精子と卵子
家族で近くの海へ行き,6個のウニを持って帰りました。割って中から黄色い部分(生殖腺)をとり出して顕微鏡で観察しました。
生殖腺を取り出す | ウニのオス | ウニのメス |
オスの精子は400倍で見てもとても小さくて,数が多く「べん毛」のようなものを使って活発に動きまわっています。メスの卵子は精子に比べてはるかに大きく,ボールのように丸くなっています。卵子は自分で動くことはありません。6個のうち4個がメスでした。僕たちが食べている黄色の部分は生殖腺(せいしょくせん)というところです。オスではここに精子があって,メスでは卵子がつまっています。黄色のところを目で見ただけではオスかメスか区別はできません。
(精子の競争率)
スライドグラスの上で精子と卵子をまぜて見ました。1個の卵子のまわりに,非常にたくさんの精子がいるのがわかります。このたくさんの精子の中で,たった1つの精子が卵子と結合して受精します。精子の競争倍率は,入学試験の倍率よりはるかに高いだろうと思います。命が生まれるということは,本当にすごいことだと思いました。
ウニの精子 400倍 | ウニの卵子 約200倍 | 精子の競争率 約200倍 |
(7) メダカの血液
生きたままのメダカの尾ヒレを顕微鏡で見ると,血液の流れを見ることができます。血液が通る所は管のようになっていて,多くの赤血球がいっせいに同じ方向に流れています。流れるのがはやいので,写真を撮っても赤血球のつぶは写りません。観察が終わって,メダカを水にもどすと元気に泳いでいたのでよかったです。
水を入れたビニール袋 | 赤血球は流れがはやい |
(8) パンにはえたカビ
食パンに少し水をかけて,部屋に置いておくと3日めにカビがはえていました。カビの部分を少しピンセットでとって,スライドグラスにのせ,水を1滴落として観察します。このカビは棒のような形のものが,枝分かれをしながらのびているように見えます。そして,所々に丸いつぶのようなものもありました。
パンにはえたカビ | 枝のような形 400倍 |
(まとめ)
(感想)
普通では僕たちの目に見えないような小さな世界で,多くの生物や細胞が生きていることを確かめることができました。原形質流動では葉緑体が動いているのを見て,植物も生きているということがよくわかりました。
ゾウリムシはたった1つの細胞なのに,動いたり,食べ物をのみ込んだりしていたので驚きました。ミドリムシは自分で動くことができて,しかも葉緑体を持っているので光合成もできます。人間も葉緑体を持っていたら緑色になるからちょっとおかしいけど,便利だろうなと思います。
動物の精子と卵子を実際に見ることができてよかったです。今度は卵が成長していくようすも見たいと思います。細胞というものがあることを知って,動物も植物も同じ生き物で,とても小さな所から命は生まれることがわかりました。本やインターネットで細胞のことを調べてみると,僕が見たもの以外にもたくさんの細胞がありました。電子顕微鏡を使うと,何万倍も拡大して細胞の中身まで見ることもできるそうです。これからも細胞のことをもっと調べてみたいと思います。