ポケットの中の戦い

  今年も無事元旦を迎えることができた。
 まずは、ほっと一息。

 それにしても、よく考えてみれば、去年もいろんなことがあった。

【多くの人に励まされ・・・】
 まず、思い起こすのが、職員の方をはじめ、たくさんの方から励まされたことだ。 職場の方はもちろんのこと、同期生や診療所の方々、それに一度もあったことがない方など、本当にいろんな方に励まされた。
 そして、その中には「○○法は効果があるのでは?」とか「○○病院に言ってみてはどうか?」というアドバイスもあり、そんな時はどんなに忙しくても休みをとって紹介していただいたセミナーや病院まで足を運び、実際に医者から見放された後に奇跡の回復をした人たちの話を聞いた。彼らは、難病にかかり一度は生きることさえあきらめた時もあったが、そのセミナーや医者の励ましによって「必ず治るんだ」という前向きな気持ちを持つようになり、結果、奇跡の回復につながったようだ。
 やはり、病は気から!!
「よ〜し、僕もがんばるぞ!」と思い、早速、「プラス思考」や「前向き」といったタイトルの本を買って、その考え方を勉強することにした。
 さらに、毎日、寝る前に僕のパートナーに30分ぐらい背中などをさすってもらい、その間、2人で「元気な体に戻りますように!!」と念じることもやった。
 すると、パートナーの手から「気」のようなものが出て、それがなんとなく体に良い影響を及ぼすような感じがした。そこで、パートナーには、早速、「気功」について勉強してもらい「気」の力を高めてもらうようにお願いした。
 一見、ばかげているような気もするが、よく考えると「手当」という言葉は元々「手を当てて体を治す」という意味があったのではないだろうか?
 このように、みなさまからの励ましのおかげで、奇跡の回復を遂げるためのヒントをいただいたり、時には心のケアをしていただいた。

【思い起こせば・・・】
 去年一年間を振り返ると、本当にいろいろな人に励まされてきたが、思い起こせば、公務員としての10年間の中でも本当に多くの職員の方に支えられてきたような気がする。
 新採の時の職場では、いろんな人によく怒られたが、公務員生活の中で最もかわいがっていただいた職場だと思っているし、彼らのおかげで貴重な海外派遣も体験することができた。それに、職場の中で職員組合に詳しい方がいたことがきっかけで「組合の機関誌」への寄稿にもつながった。
 また、帰国後、一皮むけた僕を全身で受け止めて愚痴を聞いてくれたり、時には「おまえのこの考え方はおかしい」と正面から言ってくれる人たちもいた。
 さらに、民間から採用された方を中心に企業誘致を担当した際も、当時は納得いかない点が多く物別れのままその職場を異動してしまったが、今思えば、その方のおかげで、これまで興味がなかったファンドや株、それに簿記や商法を勉強するようになった。まさに公務員の考え方の枠を壊すきっかけを提供してくれた人であり、今では感謝している。と同時に、知事が積極的に行っている「民間人の幹部職員の採用」の意図がようやく理解できた。
 僕のように「思いついたらまずやってみよう」と考える性格の持ち主は、必ず、上の人とぶつかってしまう。そして「何で前例に捕らわれるんだ!!」と腹を立ててしまうのだが、よくよく考えると、物事にはそれに至るまでの経過があり、それを踏まえて行動しないと、後で取り返しがつかない場合もある。
 上の方たちは、そのようなことを多く経験しているからこそ、僕のように前例に従わないようなことをする場合にブレーキをかけるのかもしれない。
 だから、これからは、腹を立てるのを止めて「この議論は必ず自分のためになる」と信じて、これからも僕は僕の役を演じていこうと思っている。

【思ってはいるのだが・・・】
 と、思ってはいるのだが、それを実行することはなかなか難しいのが現実だ。
 例えば、去年の末まで勤務していた職場でもそうだ。
 この職場は、今年度に組織改正をしたことや大きな事件が起こったことから、4月から遅くまで残業する日々が続いた。僕も「無理をしない程度にがんばろう」と自分に言い聞かせていたが、班の人達ががんばっているのに目の前の仕事を投げ出して帰ることがどうしてもできず、結果、夜遅くまで残業する日々が続いた。
 そのような状態が半年以上続き、ついに仕事に大きな支障を来すほど体調が悪化してしまった。
 しかし、その一方で、残業時間は更に長くなり、ついには休日出勤しないと処理できないようになった。
 それからというもの、毎日のように病気への恐怖が押し寄せてきて、家に帰る度に「明日、職場を異動してもらうようにお願いしよう」ということを考えるようになった。
 そして、ある日「君は溜めている仕事が多い」と注意を受け、これがきっかけとなって張りつめていたものが切れてしまい、ついに上司に「異動させてほしい」という相談をした。そして、気が抜けたせいか、相談した後は症状が更に悪化し、動揺した僕は、人事課長にもすぐに異動してくれるように直訴してしまった。
 しかし、人事異動というものはそんなに簡単なものではない。また、組織が改正された直後は多忙を極めるものである。
 そんなこともわからずに、昨年度の意向調査で異動を強く希望しないでおいて、忙しくて体調が悪くなったから異動させてくれなんて虫が良すぎる。
 それに、そもそも、僕の代わりに異動することになる職員は大迷惑であろう。
 そんなことはわかっている。
 わかっているのだけど、一度後ろ向きに考えてしまったら気持ちの中では恐怖感だけが増幅してもうどうにもならないのだ。
 そして、それは人事異動をしてくれない人たちへの怒りにも似た腹立たしさを感じるようになっていった。
 しかし、その後、健康相談などを通じていろんな方に力になっていただき、精神的に落ち着いたおかげで体調もだいぶよくなった。

【今後は・・・】
 こんなことがあったからには、これからは、今までのようにがむしゃらに仕事をすることができなくなるだろう。
 今の状態であれば少しは残業できるのだが、今後、更に病状が悪化した場合、周りの人に迷惑をかけてしまうのだから、その場合も考えて仕事をしていかなければいけないとも思う。非常に後ろ向きな考えだが、そうしないと組織は成り立たないような気がする。
 そして、そのような後ろ向きな考えが更に症状を悪化させていくのではないだろうか?
 しかし、先に述べたように「奇跡の回復」を遂げるには、そのような状況の中でも気持ちを「前向き」に持っていく必要がある。
 それに、そもそもみんないろんな悩みを抱えて生きており、誰もがその悩みを自分のポケット中にしまい込み、周りの人には気づかれないようにしながらこっそりと戦っているに違いない。

 今年は、もう無理はしない。
 そう心に誓っている。
 しかし、たとえ1日8時間しか働けなくても1年あれば何か1つぐらいはこの地域の発展につながるようなことができるのではないだろうか?
 そして、もし、その1年を10回繰り返すことができたならば、これまでの10年とは違った形の結果を出せるに違いない!

 
そう信じて、この1年間も、僕はポケットの中の戦いに明け暮れるのだろう。

 

<付録>
 
僕がよく読む本の中に「スラムダンク」という漫画本がある。その中でも「あきらめたらそこで試合終了です」という言葉は何度読んでも心に響く。
 僕の人生の審判は僕自身。
 ということは僕がホイッスルを吹かない限り、僕の人生という試合には負けることがない・・・かな?

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