”地方への企業誘致”

 

 臥薪嘗胆。
  史記に出てくるこの言葉は元々「復讐のためにあらゆる辛苦を忍ぶ」という意味で使われていたが、今では「成功を期して苦労に耐える」という意味でも使われるそうだ。

 その言葉と全く関係ないのがこの「我信勝鍛」。
 これは、僕が平成13年度の企業誘致の経験を一言で例えるために考えた言葉である。
 意味は「自分を信じて、勝負に勝つまで鍛え上げる。」
 もっとも、”自画自賛”や”自信過剰”の方が合っていると言う方がいるかもしれないが、要は「勝ってなお敗北者と思われてしまった”変な現象”を6回にわたって紹介していこう」というのがこのシリーズの目的である。

 ところで”地方の自治体の企業誘致”は、メディアでも「営業の中で最も難しい」と言われるほど難しいそうだ。
 そこで、まずは、身近な例を挙げて、それを実感していただこう。

 あなたは「 市街地から2時間離れているところの地域の不動産の販売を担当する営業マン」だとする。そして、上司から「その地域にある50坪の家(1000万円)を市街地に住んでいる人をターゲットとして販売しろ!」と命令されてしまった。さらに、その後の調査で、以下の条件を満たしている世帯が家を購入する可能性が高いことがわかったとする(あくまで仮定である)。
@市街地に30坪の家(2000万円)を持っている
A”カカアデンカ”である
B奥様も市街地に勤務している
 さて、あなたはこのような世帯をターゲットに家を売ることができますか?

 と、”地方への企業誘致”を例えるとこんなぐあいになり、一見”不可能では?”と思ってしまう。しかし、ここで、以下の条件を満たす世帯を見つけることができたとしたらどうだろうか?
C奥様の親が”販売したい家”の近くに住んでおり「いつか実家に戻りたい」と思っている。
D旦那さんが”販売したい家”と市街地の中間地点の会社に勤務している。
E奥様は”販売したい家”の近くにある陶磁器の大ファンである。

 いかがです?

 ここまでくると、何となく「売れそうだな。」と思ってしまうかもしれないが、現実はそう甘くない。実際に営業をしてみると、以下のような問題が出てくる。
奥様の通勤時間が長くなり、帰宅時間が遅れる(リードタイムの増加)
奥様の交通費が増える(ランニングコストの増加)
亭主が夕食の準備をするケースが増えてしまう(・・・)!
 さらに、旦那の会社の近くにも40坪の家を1000万円で売り出したとしたら?

 あ、そうそう、以下の条件も付け加える必要がある。

Eあなたがいくら身体が壊れるまで営業をして実績を上げても特別報酬は保証しません。
Fしかし、実績が出なくても定期昇級は保証します。
 このような条件下で、なんとか家を販売する(つまり企業を誘致する)ことができないか?
 と考えた続けたのが、次号から紹介する僕の”企業誘致戦記”です。このシリーズを読んで「あ、こいつ、俺と同じだ」と思われた方、あなたの将来は危ない!・・・かも?

<コメント>
 ”企業誘致戦記”については、今回が最後となった。
 この記事が記載された月に検査入院をし、「ALSを患っている」という結果が影響していることは言うまでもない。

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