貴方の常識は、貴方の前に立つ人の常識であろうか?



そうとは限らない。



そしてそれは、料理においてもまた同じ。

























警 告 文


このファンフィクションには

グロテスクな描写や残酷な描写が存在します。

未成年者には有害と思われる描写も存在します。

また、お食事中の方が読むこともお奨めしません。

お食事中に本作を読んで、キーボード、マウス等を損傷したり、

部屋を汚してしまったりしても当方には一切の責任が無いことを

ここに明示させていただきます。




















恐怖の炒め物

Made byAlk




















「まったくう、もうちょっとしっかりしなさいよねバカシンジ」

文句を言いつつも、アスカの箸は止まらない。箸は止まらないが文句が止まることもけしてない。

「ええ加減にせえや惣流。こーしてうまい飯食えるんやし。それに霧島が今肉の料理つくっとんのやろ?」

そんなアスカをなだめつつ、カエルの合唱をBGMに、トウジはシンジとヒカリの合作である夕食に舌づつみをうつのであった。



ここは第三新東京市から少し離れた山中にあるキャンプ場。彼等は昨日から二泊三日の予定でキャンプに来ていた。



「まあ、この夕飯は美味しいわよ?けどさあ」

やや怯えたような同居人をにらみつつ、アスカは言葉を繋ぐ。

「二泊三日なのに持ってきた肉の量はたったの十五キロ程度。足りるわけ無いじゃない」

そんなことは無い。

二泊三日とはいえ到着日の夕食から最終日の朝食まで、食事の回数は五回程度。今回のキャンプのメンツがシンジ、アスカ、レイ、トウジ、ヒカリ、ケンスケ、マナの七人。

レイは肉を食べないので実質的な一人あてはなんと2.5キロ。一食分に直せば何と500グラムである。

しかも食事は肉だけではない、当然野菜、スープ類、ご飯、ジュースやお菓子だってあるのだ。

さらに、料理担当であるシンジ、ヒカリ、ケンスケの三人は、普段の友人達の食事量から逆算し、むしろダメにするのを覚悟で多めに持ってきたのである。

決して食材が足りなくなることはないはずであった。

しかしアスカのだだっ子攻撃が炸裂し、一日目の夕食から二日目の昼食までを全部焼き肉にしたあげく、アスカ、トウジ、マナの三人が一食辺り合計ほぼ五キロ。



三食で十五キロの肉全部喰いやがった。



おかげで二日目の夕食に残った肉はほんの切れっ端程度、その程度で三日間思う存分肉を喰うぞと気合い入れてきたアスカが満足するはずもなし。

本来アスカはネチネチとやるのは嫌いなのだがそこはそれ、食い物の恨みはふかーいのだ。

ただ、妙なのがシンジである。

普段ならここまで言われればさすがに反論の一つや二つするのだが。今日に限っては何の反論もなく、しかも肉という単語を聞く度、あからさまに怯えた様子を表すのである。

いや、シンジだけではない、ヒカリも、ケンスケも肉という単語に対し怯えた様を見せるのは、どういう訳であろうか。そんな奇妙な三人の様子に、トウジとアスカは顔を見合わせて肩をすくめるのであった。

ただ一人、レイだけは我関せずと茄子をつついていたが。



「おまたせー、出来たゾー」

奇妙な緊張の支配する空間に、ぴよーっと言う効果音が付きそうなほど脳天気な声が響く。

声の主は自称、「鋼鉄からシンジ君のガールフレンドにクラスチェンジしましたぁ」な霧島マナである。

「待ちかねたわよ!!」

「まちかねたでえ」

漂ってくる香ばしい匂いが鼻孔をくすぐる。プラスチックの皿にのったそれは、見事な赤と緑のコントラストを見せる。見た目にも十分以上に旨そうな肉と野菜の炒め物。

「アンタ達なに隅っこで縮こまってんのよ」

ところが奇妙なのはシンジ、ヒカリ、ケンスケの三人であった。

まるでマナが持ってきた皿が恐ろしくもおぞましい物であるかのように視線を向けようともせず、テーブルの角で肩を寄せ合う三人。アスカはそんな三人の様子をいぶかしく思った物の、漂ってくる匂いと自らの欲求に従い、皿に箸を伸ばす。

普段だったらここで三人を問いつめていたのだろうが、三食思う存分に肉を喰いまくっていたアスカは完全に肉中毒になっており、禁断症状の出始めていた彼女は三人の様子を無視して皿の肉を口に入れた。



「やるわね」

「こらうまいで」

かりっと焼き上がった表面に反し、肉の中は柔らかく、甘辛いたれはアスカの好みからすると辛みが目立つ物の、十分合格点を与えられる物であった。

一方トウジからすれば脂身の無いその肉自体は手応えのない物であったが、辛みというパンチの効いたタレと、合わせてある香味野菜の香りは、最近急速に肥えてきたその舌を持ってしても、とても美味しいと思わせてくれる力を持っていた。

「アンタがこんだけ料理上手だったとは意外ね」

それほど意外だったのだろう、アスカにしては驚くほど素直に賞賛が出てくる。

(そう言えばこいつって一人暮らししてるのよね)

以前訪れたときに見た、整理されしかも実用的に物が纏められていた彼女の部屋を思い浮かべる。

ライバルである少女が意外なほど家庭的な面を持っていることを認識し、アスカは彼女の評価を新たにする。

要注意、と。

そんなアスカを知ってか知らずか、いかにも楽しそうにマナは料理について解説する。

「へっへーアリガト。これはねー、お肉をハーブと一緒に蒸し殺してからほぐして、フライパンで焼き焦がすの。かりっと焦がしたとこで香味野菜を入れて炒めて最後にスイートチリソースを軽く絡めて完成よ。ちなみにね、炒めた肉にレモン酢垂らすだけでもおいしーんだから」

「ほー簡単そうやのう」

「うん、簡単なんだよー」

しゃべりながらも箸の勢いは止まらない、故に聞き逃した。

蒸し殺す、その単語を。



いくら大皿とはいえその上にのる量はたかが知れている。食べ盛りが三人寄ればあっという間に無くなるのは道理だ。ましてや三人が三人とも毎食二キロ近い肉を喰らいつくす大食漢では。

「ねえマナ、もう終わり?」

空になった皿を前に、アスカは不満を露わにするが無い袖は振れない。

「ごめんねー、近くにこれ以上材料がいなかったから、悪いけど我慢してね」

あっけらかんと答えるマナに、材料の調達から調理まで、誰がやったかも忘れ恨みがましい視線を送るアスカ。だがそれだけ美味しかったと言うことでもある。

「まーまー、一応シンジ君にも作り方教えてあるからさ、家帰ったら作ってもらいなよ。

鶏肉でやっても、同じ様な味が出せるから」

「え?」

鶏肉でも同じ様な味が出せる、その言葉にアスカはとまどった。脂身の少なさや食感から、てっきり鶏のささみか何かだと思っていたのだ。

「さっきのは鶏肉じゃなかったの?」

こういう時に躊躇い無く質問が出せる辺りが、アスカのもっとも賞賛されるべき所であろう。たとえそれが勢いでなされた物であれ。

「え? ああ、あれはねー」

料理を褒められ、上機嫌のマナが肉について答えようとしたその刹那。

いやああああああ、やめてええええええええ!!!

絶叫がヒカリの口からほとばしった。

突然の絶叫に驚いたアスカとトウジが見た物は、耳をふさいで必死に周囲を拒絶するヒカリと、その横に座り、顔を青ざめさせ、体を小刻みに震えさせるシンジとケンスケの姿であった。

「ちょっ、ヒカリ」

「いやあ、いやなの、やめて、ゆるしてよお」

血の気が引いて真っ白になった肌、皮膚に食い込むのではないかと思われるほどきつく塞がれた耳、ぼろぼろと涙を流し、必死に周囲を拒絶するヒカリを、アスカは呆然と見つめることしかできなかった。



「いったい何なのよ?」

友人の異変の原因を求め、マナとトウジに視線を走らすが、マナは小首を傾げ、トウジはだまって肩をすくめるのみ。全く頼りにならない二人をあきらめ、手元にある情報を足がかりに、推理を展開してゆく。

(シンジ、ヒカリ、相田の異変の原因は何? 何をあんな風に恐れるの?)

これこそが最大の疑問である。

(では異変を見せたのは? そう、まず三人は肉という単語に反応していた。そんでマナがもってきた料理を酷く恐れた)

アスカにとっては不可解である。あれほど香ばしく、見た目も良い料理である。

シンジとヒカリが良く弁当を交換し、お互いの味を確かめ合いながらその技量を磨き合っていることは知っている。

(あの二人にとって、マナの料理は私たちがもった以上に興味をそそられておかしくないわよね?)

実はシンジとヒカリが付き合っていて、などという思考は浮かばない。

(マナの料理に何かあんの?)

こう考えるのが普通であろう。

(でも見た目も普通の料理だし、味だって)

普通どころか上等の部類に入る物であった。

(肉は脂身がない割に美味しい肉だったし、野菜の方も・・・・・・?)

アスカのカンに何かが引っかかる、何かがおかしい。

(あれ?確かシンジは肉が終わったっていってたわよね?)

そう、シンジは夕食に肉はないなどという意味のことを言っていた。それを受けて、マナが肉をとってきたのだ。

(待ちなさい、取ってきた、取ってきた? 何処から?)

その時は肉に意識がいっていて気が付かなかったが、ここは市街からはあまりにも離れすぎている。

当然周囲には店など無い。どこかから買ってくるなど不可能である。

(まさかほかのテントから!! は無いわよね)

疑惑は残るがシンジとヒカリがそれを許すまい。大体あの恐れ方はそう言うものから来る恐怖ではなかった。

(あれはむしろ怖いと言うより嫌悪、気持ち悪いという感情から来るもの)

だんだんと考えが怖い方へと向かっていく。

(気持ち悪い? 何が? ・・・あの料理が・・・? まさか)

まさかとは思う、しかし、転がり落ちる思考を止めることは出来ない。

(でも、シンジ達はあの料理に手を付けなかった)

じっとりとした汗が背筋を濡らす。

(で、でもマナだって食べてたんだし、そんな変のもの使う分けないわよね)

無理矢理思考を明るい方へのと向かわせる、だが、アスカの予想はほぼ最悪に近い方向で肯定されることになる。



「肉、みーっけ」

嬉しそうなマナの声に、思考を現実に戻して辺りを見回したアスカの目に飛び込んできたのは、泡を吹いて崩れ落ちるヒカリとケンスケ、逃げちゃダメだを繰り返すシンジ、椅子の上で硬直するトウジ。

そして、拘束を逃れようとじたばたマナの手の中で暴れる、







































両手に余るほど巨大なカエル







































たっぷり三十秒はたっただろうか、ようやく再起動を果たしたアスカが、震える声でマナに尋ねる。

外れてくれと、切に願いながら。



「マ、マナ、さっきの料理に入ってた肉って。ひょっとして」




「ええ、これよ」
イヤすぎるほどさわやかな笑顔で、茶色いカエルをもったまま答えるマナ。アスカとトウジは、こみ上げる熱いもの感じ、駆け出すのであった。



「もー、どーしたってのよ全くう」

マナは自分が原因などとは欠片ほども思わず、ぷくーっと頬を膨らませ不満を露わにする。だがすぐに気を取り直すとタマネギをつつく肉嫌いの少女へ向き直る。

「ねーねー綾波さんはこれ食べる?」

もぐもぐとジャガイモを頬張るレイに、ひょいと突き出されるカエル。

レイはちらりとカエルに視線を向けるが、興味を見せる様子もなくピーマンへと向き直る。

「肉、嫌いだから」

そう答え、ピーマンを口へ放り込むレイ。

「だいじょーぶだいじょーぶ、この肉って臭みとかないし脂身もないから凄く食べやすいんだよ。綾波さんも一度挑戦して見よーよ」

レイが言ったことを理解しているのか居ないのか、お気楽な調子でまくし立てるとレイの返事も聞かず、てってけてとマナは走り去っていった。



レイはマナの後ろ姿が消え、そしてシンジ、ヒカリ、ケンスケの三人が未だ復帰していないのを確認すると、自分のバックから小さな箱を取り出した。

箱に入っていたのは保冷材に包まれたイカ、そして小さなスチール製のポット。

「お酒は二十歳になってから・・・・・・」

ぐびりとアルコールの匂い漂うポットを傾け、わきあがるイカと醤油の焼ける匂いにたらりと涎を垂らすレイであった。




 AlkさんからSSを頂きました(^▽^)ありがとうございます

 今回のSSは警告文とおりに十八禁でしたね(笑)みなさんは目をそむけずに全てを読むことができましたか?

 仲良し七人組でキャンプ、キャンプの楽しみといえば外での食事。大食いのアスカちゃん、マナちゃん、トウジ君には良い環境で更に食欲増大ですね。でも一食の肉の量が五キロとはトウジ君はまだしもアスカちゃんとマナちゃん、体重は・・・?気にしなくてもいいんでしょうか(^^;)

 肉が無くなっても食べたい三人、加減を知らないのでしょうね。育ち盛りですから良いでしょう。

 そこへ肉を調達してきたマナちゃん。その肉に怯えるシンジ君達三人、レイちゃんは我関せずなんですね。

 流石戦自出身のマナちゃん、野戦慣れしていますね。それにしてもケンスケが怖がるとは、もしや似非サバイバラーだったのか(笑)食料を調達してこそサバイバルの醍醐味なのに(本当?)

 肉の正体を知り駆け出す二人・・・気持ち悪い(笑)

 最後までマイペースなレイちゃん、お酒におつまみとは・・・誰の影響なんでしょうね(^^;)

 マナちゃんの手料理なら何でも食べれるぜ!と感想を送りましょうね。

 とっても素敵なSSをくださったAlkさんに皆さん感想を送りましょう。

 皆さんの感想が作者の力になります!一言でもよいから感想を書きましょう!!


SSroom-2

投稿:恐怖の炒め物