「シンジッ!遊ぼっ!」

「うん!じゃあ、行ってきま〜す!」

「はいはい、シンジもアスカちゃんも遅くならないようにしなさいよ。」

「「はぁ〜い!」」















おまわりリツコさん

Made by Youth-k.
















「・・・ねぇ、リツコぉ・・・暇。」

紫がかった髪の女性が椅子に後ろ向きに座って、足をブラブラさせながら手の指では自分の制帽を指でくるくる回している。

リツコは書類を書いていた手を止め、首だけ振り向いて呆れた顔をして言った。

「ミサト、あなた自分の仕事は終わって言ってるのかしら?あなたのお守りで私までこんなところに左遷(とば)されて・・・・・・」

ウンザリした顔でグチりだしたリツコを避けるように、

「あぁ〜、はいはい、わかりましたよぉ。やればいいんでしょ?やればぁ。もう、30越えたらこんなんなっちゃってぇ・・・・・・」

「・・・何か、言ったかしら?」

「い、いぃえ・・・」

これでも親友として関係が続いてるあたりお互いを認めあっている証拠なのかもしれない。

「センパ〜イ♪コーヒー入りましたぁ♪」

静かなこの派出所中に響き渡ったその声の持ち主はお盆に二杯のコーヒーを持ち、満面の笑みを浮かべてやってきた。

「マヤ、ありがとう。」

リツコはコーヒーに口をつけながらマヤに礼を言った。

ショートカットの彼女はそれを際立たせるようなかなりの童顔で、今年になって配属されたばかりの新人さんだ。

「はい、センパイの為ですから♪」

・・・かなりのリツコ崇拝者のようだが。

マヤはそのままリツコの隣の自分の机に座ってふうっとその両手で持ったコーヒーを息で冷ましながら飲もうとした。

「・・・マヤちゃん?私のは?」

ずっと無視されていた感のあるミサトがコメカミにうすーく青筋を浮かべながら言った。

それを見たマヤは大きく目を見開いて口に手をあて、

「あ、忘れてましたぁ、テヘッ」

軽く頭を恥ずかしそうにかいて、そのままいつの間にか適温に冷めたコーヒーに口をつけた。

「あぁ〜、おいし♪やっぱりセンパイと飲むコーヒーは格別です♪」

「だから、私のはどうしたのよ〜〜」

ミサトの心からの叫びは青空の中に消えていった。

「後輩に無視されるなんて・・・・・・無様ね。」

「あ、センパイ、もう三時ですよぉ?」

「あら、もうそんな時間?パトロール行かなくちゃね。」

「んじゃ、いってらっさ〜い」















キ〜コ、キ〜コ・・・・・・にゃお♪

キ〜コ、キ〜コ・・・・・・にゃお♪

リツコは自転車で坂道を上っていた。

結構急な坂であるのに何故か汗一つかいていない。

たま〜に変な音が鳴るのはご愛嬌。

「ふぅ、動力部はさすがに全自動にしたらまずいものね。それじゃあバイクになっちゃうわ。・・・・・・まったくミサトのせいでこんなところまで・・・・・・今度改造してやろうかしら。」

そう愚痴をこぼしてるうちに何やら泣き声が聞こえてきました。

「「えぇ〜〜〜ん、えぇ〜〜〜ん」」

ここは市民の味方、おまわりさんの出番です。

「あら、どうしたのかしら?道に迷ったの?」

泣いていた男の子と女の子は恥ずかしそうにコクンと首を縦に振りました。

「キミ達、お名前は?」

「そうりゅうあすか」

「いかりしんじ」

「シンジ君にアスカちゃんか。お家の住所はわかるかな?」

・・・・・・ふるふる

「ん〜〜、じゃあ電話番号は?」

・・・・・・ふるふる

「そう、困ったわねぇ・・・・・・」

もうお家に帰れないと思ったのか、ごしごしこすって赤くなった目から涙が溢れてきました。

「泣かなくて大丈夫。ちゃんとお家に連れてってあげるから。そうね、交番に行けば住所録があるからお父さんの名前を教えてくれればすぐに見つかるわ。」

「「・・・・・・ホント?」」

「えぇ、本当よ。お姉さんに任せなさい。」

リツコは子供達を安心させるように頭を優しく撫でながら言った。

「「やった〜〜!!」」

子供達は一転、顔中に喜びを描いてはしゃぎだしました。

「じゃあ、この自転車の後ろに乗ってちょうだい。」

「え?でも、座るところがないわよ?」

女の子が不思議そうに首をかしげた。

リツコは『あぁ、』と言う表情で、

「忘れてたわ、こんなこともあろうかと用意しておいたのよ。」

と、ハンドルにたくさんついたボタンの右から三番目を押すと、荷台の箱が開き、そこから二人用のチャイルドシート(?)が出てきました。

「わ〜、すご〜〜い!シンジ、すごいよぉ!!」

「すごいすごい!えばぁに出てくるロボットみたいだぁ!」

実はこの機能、全てリツコが“趣味”で作ったものであり、子供にとはいえ自分の作品に目を輝かせているのは嬉しいわけで、ちょっとご機嫌なリツコは得意な顔で、

「さぁ、行きましょうか。」

「「うん!」」















「・・・・・・そうですか、はいすぐに・・・・・・はい・・・はい・・・・・・わかりました。失礼します。」

ガチャッ

ミサトは冷や汗を手の甲でぬぐいながら受話器を戻した。

「ふぃ〜〜・・・・・・」

「どうしたんですか、葛城さん?」

ちょうど書類整理が終わったらしいマヤがいつもと違う雰囲気のミサトに声をかけた。

「いや、ねぇ?どうやらこの近くに住んでいるお子さんが外に遊びに行ったっきり帰ってこないって言うんで捜索願がきたのよ。」

「そうですかぁ。」

「・・・・・・それが、署長のお子さんなのよ・・・・・・」

「え!!それっていか・・・・・・」

「あら?どうしたの?切羽詰った顔して。」

ちょうどその時、リツコが戻ってきた。

「あぁ、センパ〜イ!ちょうどいいときに帰ってきてくれましたぁ!」

「そうそう、リツコォ、碇署長の息子さんと惣流刑事部長のお子さんが行方不明なのよぉ〜〜。署長じきじきの電話で見つからなかったらクビだって・・・・・・」

リツコの下にミサトとマヤがすがりつき、泣きながら報告した。

クビはさすがにヤバイと思ったリツコの頭に髭の男と筋肉質のドイツ人の顔が横切った。

「碇・・・・・・惣流・・・・・・?」

リツコはまさかと思いながらバッと後ろを振り返ると、そこに控えるミサトとマヤの迫力に怯えている二人の子供達に、

「あなた達・・・・・・お父さんのお名前は・・・・・・?」

「・・・・・・いかりげんどー」

「・・・・・・そうりゅうはいんつ」

「「「助かった〜〜〜〜〜!!」」」

抱き合いながら安堵に崩れ落ちる三人の大人を、子供達は『何が起こったの?』ときょとんとした顔で眺めていた。















「「お姉ちゃん達、ありがとぉ〜〜〜!!!」」

やがて迎えに来た母親に手を引かれながら、子供達は体いっぱいに感謝の気持ちを表現して手を振り続けていた。

彼らが見えなくなってリツコは一人思った。

何で、最初に聞いておかなかったんだろう・・・・・・無様ね・・・・・・















後日、第一小学校にて、

『しょうらいのゆめ

               いちねんいちくみ いかりしんじ

  ぼくのしょうらいのゆめは、ふけいさんになることです。

  それはなぜかっていうと、ふけいさんはやさしくてかっこよくて、

  えばぁみたいにすごいめかがあるからです。

  ぼくも、おねえさんたちみたいにみんなにやさしくしてあげたいです。』















この話は父親と母親の目から滝のような涙をこぼさせましたが、

ランドセルを背負いながら交番までやってきた男の子から手渡されたそれを読んだ時、

リツコの瞳からは両親とはまた違った涙を流させたのでした。

そしてこのときの夢は、十五年後に叶えられることになる。

 

 

まぁ、『婦警』ではなく『刑事』としてだったが。





























あとがき

初めまして、Youth−K.です。

jun16 Factoryさんには始めて投稿させて頂きました。

拙い文章ですが、日々精進して読者の皆さんに満足していただけるようなSS作りをしていきたいと思います。

要望があれば、続きを書くかもしれません。

でも、あまり期待しないでいてください。

よかったら、僕のHPも立ち寄ってくださいね。

では、また来週〜〜(?)



 Youth-k.さんからSSを頂きました(^▽^)ありがとうございます〜

 美人三婦警、リツコさん、ミサトさん、マヤさんの交番日記。

 リツコさんは仕事ができるのに、ミサトさんのお守りの為に左遷されたようですね(^^;)でもリツコさんを慕うマヤちゃんが居るのでちょっとはマシでしょうね。

 日課のパトロールで迷子のシンジ君とアスカちゃんを見つけたリツコさん。正義の血が騒ぎ、チューンした自転車で交番に帰ると、そこでは顔が真っ青なミサトさん。

 でもその真っ青もリツコさんのお手柄で治りましたね(^^)

 シンジ君の将来の夢は婦警さん・・・いいかも(笑)アスカちゃんも同じく婦警さんに憧れるんでしょうね。

 シンジ君、婦警さんになるにはちょ〜〜と無理かなと感想を送りましょうね。

 とっても素敵なSSをくださったYouth-k.さんへ感想を送りましょう。


 Youth-k.さんのHPはこちら!「EVALASTING LIBERTY

 皆さんの感想が作者の力になります!一言でもよいから感想を書きましょう!!


SSroom_5

投稿:おまわりリツコさん