「レイ、早く早く!」

「わかってるわ。」

 マナとレイの二人は公園で仲良く遊んでいた。

 しかし突如降り始めた雨・・・

 それは二人の遊びを中断させるには充分すぎる雨量だった。

「ふぅ〜。濡れちゃったね。」

「そうね、マナお姉ちゃん。」

 二人は東屋に逃げ込んだが、結構濡れてしまった。

「お母さんに怒られるかなぁ・・・」

「泥だらけにしたわけじゃないからそんなに怒られるとは思わないけど・・・あ。マナお姉ちゃん、あれ!」

「え?どうしたのレイ。あ!」

 マナはレイの指さす方向を見て同じように声を上げる。

 子猫だ・・・

 しかしかなり痩せている。野良猫だろうか?

「マナお姉ちゃん・・・」

「うん!」

 そして二人の考えは一致したのだった。



























FAMILY 成長

Made by カムイ


























「マナ!レイ!なんでそんなに泥だらけなの!」

「「ご、ごめんなさい・・・」」

 二人とも何故か服が泥だらけ。

 案の定母、アスカの雷が落ちた。

「謝るのは良いから、早くその服を脱いで直ぐにお風呂に入ってきなさい!」

「「は、はい!」」

 二人はすぐさま着ている服を脱いでお風呂場へと向かう。

「全く・・・泥だらけになると洗濯が大変なんだから。」

 アスカは小言を言いながら脱がれた服を拾い上げ水場に向かう。

「・・・でも、なんで葉っぱがこんなに沢山付いてるのかしら?」










「見つからなかったね。」

「そうね。」

 二人は走ってその場に行ってしまったため、子猫が驚いて藪の中に逃げ込んでしまったのだ。

 しかし二人はめげずにその藪の中に入って猫を捜したのだが、結局見つからず、その上服も泥だらけにして帰ってきたのだ。

 そして結果は予想通り・・・

 二人とも覚悟はしていた。

「ねぇマナお姉ちゃん。やっぱりお母さんやお父さんに相談した方が良いと思うんだけど・・・」

「そうねぇ・・・勝手に持ってきたら、お母さん、怒るかも知れないしね。」

 二人は湯船に浸かりながら考える。

「よし!お風呂から上がったらお母さんに言ってみようか!」

「そうね、そうしましょ。」

「よし!『全羽急げ』だわ。早速上がるわよ!」

「もうちょっと待って。もっと暖まってから・・・それよりお姉ちゃん。『全話急げ』ってどういう意味?」

「・・・わからない。でもお母さんがよく使ってる言葉なの。」

「ふーん。」

 そう言って、レイはかなり長い間湯に浸かっていたが、マナは耐えきれずに、直ぐに出ていったのだった。





















「マナお姉ちゃん・・・」

「あ、レイも出てきたの?」

「うん。それで、お母さんに言った?」

「・・・まだ。」

「そう・・・」

 やはり面と向かうとなかなか口に出せないようだ。

「何二人でコソコソしてるのよ。」

「「お、お母さん!」」

「何かイタズラの相談?何企んでるかわからないけど、悪い事しちゃダメよ。」

「わ、悪い事じゃないよ!」

「ほぉ〜?じゃあマナ、何を考えてたの?言ってみなさい。」

「そ、それは・・・」

「お母さん、私たち、猫を飼いたいの。」

「れ、レイ!」

 レイは躊躇なくアスカに向かって言う。

「・・・レイ、マナ、詳しく話しなさい。」

 レイとマナは今日の公園での出来事を話した。

 衰弱しきった子猫を見かけたこと。

 雨の中、その子猫を探し回ったこと。

「・・・なるほどね。で、マナとレイは何でその子猫を飼いたいと思ったの?」

「・・・可哀相だと思ったの。」

「私たちはお母さんとお父さんが居るけど、あの子猫には居ないの。」

「私たち、何とかしてあの子猫を助けたいの。お願いお母さん、子猫を飼うことを許して。」

「お願い、お母さん。」

 二人は目に涙を浮かべてアスカに哀願する。

 こんな二人を見て無碍に断ることが出来る母親などいやしない。

「・・・わかったわ。」

「「え!?」」

「ただし!今夜お父さんとお母さんとでよく相談してからよ。さ、もう夕飯にしましょう。なんにしても今日はもう暗くなっちゃったから、全ては明日からよ。」

「「うん!!」」

 そう言って、二人は夢に胸を膨らませつつ、夕飯を食べ、父であるシンジの帰りを待つのだった。
















「・・・お父さん、遅いね。」

「うん・・・・」

 もう夜の九時である。

 確かに遅い。

『ピロロロロロ。ピロロロロロ。』

「はい、碇です。あ、シンジ。うん・・・うん・・・わかったわ。じゃ、待ってるから。マナ、レイ、今日はお父さん帰り遅いからもう寝なさい。」

「え〜?」

「・・・・・」

「わがまま言わないの。お父さんだって仕事が忙しいの。ほら、レイなんて目は開いてるけど頭の中は寝ているわよ?」

「・・・・・・・・」

「お父さんには私が話して置くから。安心して寝てなさい。」

「・・・うん、わかった。じゃぁお休みなさい。」

「おやすみなさぃ・・・・・」

 レイは語尾の方がはっきりしていない。よほど眠いのだろう。

 マナはレイの手を取り寝室に向かう。

「・・・全く。あの頑固さは誰に似たのかしらねぇ・・・」














「ただいまぁアスカ。」

 夜中・・・シンジの帰宅である。急な残業だったのだろう。

「おかえり、シンジ。ねぇシンジ、疲れてるところ悪いけど、少し話したの。良いかしら?」

「うん、良いよ。」

 そう言って二人は椅子に座る。

「実は・・・マナとレイのことなの。」

「え!?ま、まさか怪我したとか!?」

「そんなんじゃないわよ。心配しないで。」

「そっか・・・なら良かった。」

「実はね・・・」

 アスカは今日起きたことをシンジに話す。

「そっか・・・そんなことがあったのか。」

「私は・・・賛成したいの。」

「アスカ?」

「私たちって、こと『命』に関しては『よく』知ってるでしょ?」

「うん・・・そうだね。」

「あれ程の経験をしろとは言わない。むしろしてほしくない。だけどね・・」

「『命』の事に関して二人に学ばせたい、そう考えてるんだろ?」

「そうなの。『命』を育てる大変さ、そしてその終わりにあるモノも・・・」

「うん・・・そうだね。二人とももう五歳になるんだ。そう言うことを、学ばせることも大事なことだと思う。」

「じゃ、決まりね。」

「うん。明日が大変だね。」

「そうね。病院に行ったり、猫のトイレを買ったり・・・マナやレイ、きっと喜ぶでしょうね。」

「うん、そうだね。」

 こうして夜も更けていく。




























「おはようございます・・・・お父さん!」

「おはよう、マナ。お父さんより遅いなんて珍しいね。」

 マナは急いで時計を見る。

 ・・・寝過ごした。

 昨日の影響だろうか?

『ドタドタドタ!』

 マナは急いで自分たちの部屋に戻る。

「レイ、起きて!レイ!」

「う〜ん・・・マナお姉ちゃん。後17秒・・・」

「なに訳の分からない数字いってるのよ!お父さんもう起きてるわよ!」

「当然よ。お父さんは死なないわ。私が守ったもの・・・」

「寝ぼけてないで起きなさい!!」

 マナがレイが掛けていた布団を剥ぎ取る。

「寒い!!」

「レイ、起きた。昨日のことお父さんに聞かなきゃ。」

「そっか。」

 この日ばかりは、低血圧のレイでも寝起きは『良かった』。

 そして二人はリビングに向かう。

「お、レイも起きたのか?おはよう。」

「おはようございます。お父さん。お母さん。」

「ねぇお父さん。お母さんから話し聞いた?」

「ああ、聞いたよ。」

「そ、それじゃあ!」

「全く、二人が何時起きてくるか待ってたんだぞ?ねぇアスカ。」

「その通りよ。二人とも大事な日に限って寝坊するんだから。」

「じゃ、じゃあ!」

 二人の目が輝き出す。

「ええ、飼っても良いわよ。朝ご飯を食べたら、公園に行って、その子猫を捜しましょうね。」

「や、やったーー!!お母さん!お父さん!ありがとう!」

「ありがとう!お父さん、お母さん!」

 二人は手を取り合って喜び合う。

 アスカとシンジはそんな二人を見て、このことを承諾したことを嬉しく思うのだった。


















「この公園なの。」

 雨もすっかり上がり、空には太陽が輝いていた。

 碇家の四人は、昨日猫の居た公園にやってきていた。

「居ると良いんだけど・・・あ、い『いたーーーーーーーー!』

 マナの声は背後からの声にかき消される。

「ねぇママ、パパ!あの猫ちゃん!」

 背後にいたのはレイやマナよりも一つか二つ小さい子だった。

 そして彼女の指さす先には昨日の子猫・・・

 昨日の雨で衰弱しきっているのか元気がない。

 女の子が猫の元に向かう。

 猫は逃げる元気もない。

「ねえママ、パパ、飼っても良いでしょ?お願い。」

「ミキには敵わないなぁ。いいよ。家で飼おう。」

「やったー!」

「ミキ、喜ぶのも良いけどまずは病院よ。この子、大分体が弱っているわよ。」

「うん!よかったね、猫ちゃん!」

 そう言って、その家族はその子猫を連れ、おそらくは病院に向かっていってしまったのだった。

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

 マナもレイも言葉がない・・・

 余りにも彼女達にとって、一瞬の出来事だった。

「良いのかい?マナ、レイ。」

 シンジは出来る限り、優しく声を掛ける。

「・・・良いの。あの子ならきっと可愛がってくれるもん。」

 マナはそう答えるが声が震えている。

「他の猫を飼おうか?」

「良いの。あの子じゃないと意味がなかったの。私たちは幸せ・・・でもあの子は親も居ない、友達も居ない。だけどもう大丈夫なの。あの子はもう可哀相じゃない・・・」

 レイも気丈を装うが、表情は今にも泣きそうだ。

「レイ・・マナ・・」

「「お母さん・・・」」

「悲しいとき、嬉しいときは、泣いても構わないのよ?」

「「う・・・うわぁぁぁぁぁ!」」

 アスカの言葉に、堰を切ったように泣き出す二人・・・

 二人はアスカのお腹に顔を埋める。

「ねぇシンジ・・・」

「ん?なに?」

 アスカは二人の頭を撫でながらシンジに問いかける。

「こうやって、子供達は大きくなっていくんだね・・・」

「うん・・・そうだね。」

 アスカとシンジは泣いている二人の小さな背中を見て、微笑み合うのだった。

 
                           おわり


あとがき

jun16さん、200万ヒットおめでとうございます。

既に1000回を大きく超える更新回数と、小説の数・・・素晴らしいの一言です。

これからも頑張って下さい!応援しています!

 カムイさんから200万ヒット記念SSを頂きました(^▽^)ありがとうございます〜

 マナちゃんとレイちゃんが公園で遊んでいて見つけたのは子猫、かわいそうに思った二人は当然飼いたいと思いますが、お母さんがアスカちゃんでは言い辛いですね。

 でも意を決して話をして納得したアスカちゃんにシンジ君、良い親ですね。

 しかし残念ながら子猫は他の子に飼われていきました。ショックを受けるマナちゃんとレイちゃんですが、この日の出来事が二人を成長させるんですよね。

 マナちゃんレイちゃん、優しい子に育ってねと感想を送りましょうね。

 とっても素敵なSSをくださったカムイさんへ感想を送りましょう。

 カムイさんのHPはこちら!「唯我独尊

  皆さんの感想が作者の力になります!一言でもよいから感想を書きましょう!!


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