リョウジお父さん

〜パパの誓い〜

Made by 幻都






よう、みんな、俺の名前は加持リョウジ。

特務機関ネルフの諜報部に所属している。

いわば…スパイだ。

結婚はしてない。

危険を常に背負うスパイに家庭は禁物だ。

単に女にすぐ逃げられるっからって訳じゃねえよ、けして。

それにここだけの話しだが俺はネルフそしてそのバックにいるゼーレという組織を探っている。

もちろんリスクは高い。

もと恋人でありネルフの作戦部長である葛城はその事に気づいているらしいが…

黙っていてくれる…やはり持つべきはオンナだな。

えっ?もうみんな知ってるんじゃないかって?ハハ、俺は一流のスパイだぜ、そんなヘマするわけないだろ?(ドキドキ)

まあ、そんなこんなで俺は今日も戦いつづけるのさ…。

さてと、もう行かなきゃな、今日も一日、がんばるぞ〜。



「おはよう、アスカ」

俺の可愛い姫様はまだ布団の中で眠っていた。

姫様はなかなか起きない、熟睡状態だ。

「お〜い、アスカぁ、朝だぞ〜」

ゆさゆさ…

アスカをゆすってみたがなかなか起きない。

ようし、こうなったらおじ様…いや王子様のキスで…って違う、俺はロリコンじゃねえ、断じて違う、おい、信じろってば…。

「そうか…、起きないんだったら」

ククク…奥の手だ。

俺はアスカの足を掴んだ。

「悪い子にはお仕置きだ〜♪うりゃあ」

コチョコチョ…

アスカの足をくすぐった。

アスカの弱点である。

「あはははははは、パパ、やめて〜」

「起きるか〜?」

「うん、起きるぅ、起きるから…フフフフフ、やめてぇ〜」

笑い死に寸前だ。

うりうり、どうだ、俺のくすぐりテクニックは?

捕虜に秘密を吐かせる時に使うスパイには必要不可欠な技術だぜ。

「ようし、いい子だ」

約束どおり止めてやった。

アスカは大きな欠伸をするとまだ眠そうな目をこすった。

「おはよ〜、パパ」

「お目覚めですか、プリンセス」

「うん、もう、くすぐって起こすのは反則よ」

「はは、すぐに起きないお前が悪い、それとも何か?」

俺は碇司令のようににやりと笑った。

「やっぱ、愛しのシンジ様のキスでお目覚めしたかったのか」

「ちょちょっとぉ!!」

途端に真っ赤な顔をし手足をばたばたさせながらアスカは怒鳴った。

「な…なんで馬鹿シンジなのよお!!」

ばればれだよ。

俺は笑った。

アスカは一見、強情そうだが根は素直なやつだから考えた事がすぐに顔に出る。(つまり単純と言う事だ)

シンジ君のことならなおさらだ。

鈍感なシンジ君は気づかない様だが俺がそれを見逃すはずがない。

だから…時々こうやってこいつをからかう。

慌てる顔が可愛いんだな。

「ほお?一緒に風呂に入って寝た仲なのにか?」

「あっアレは甘酒で酔った弾みよ!あたしとしたことが

酔った勢いとはいえあんな奴とお風呂に入ってそのままお昼寝しちゃうなんて、一生の汚点だわ!」

アスカは五才だが少々マセている。

これも俺の教育のたまものってやつさ。

けど、なんか言ってる事がなんか昔の俺と葛城に似てるんだよなあ…。

あの時は二人とも酒に酔ってて葛城が酔った事をいい事に俺がそのままお持ち帰りにして…

それからって何言わせんだよ〜!!

えっ、続き聞かせて欲しいって?

駄目駄目、こっから先はアスカの前じゃしゃべれないっての!いくらなんでも。

「パパ〜、何一人でブツブツいってんの?」

「えっ?、いや、なんでもないさ、ハハハ」

「そういえば、今日はシンジとレイが遊びに来るのよね?」

「そーだぞ、だから、お前はその顔を何とかしろ〜、ルーズな女は愛しい愛しいシンジ君に嫌われちゃうぞ〜」

「も〜、シンジは関係ないってのにぃ!」

そう言いながらも慌てて洗面所に向かう。

可愛いもんだな。

俺はその小さな背中を微笑みながら見送った。

けど、アスカ、時には素直になることも大切だぞ、強情過ぎると俺や葛城みたいになるからな。



うええええええええん!

俺んちに泣き声が響いた。

なんだなんだ!?

掃除していた俺は慌ててアスカ達が遊んでいた部屋に駆けつける。

「どうしたんだ!?」

「ううう、痛いよお」

泣いてたのはやっぱりシンジ君。

レイちゃんがオロオロしながらシンジ君を慰めている。

アスカは腰に手を当ててシンジ君を怒鳴りつけていた。

「なんで男の癖にそう簡単に泣くの!!」

「どうしたんだ、レイちゃん?」

「おじさん、シンジ君がバナナの皮で滑って転んで、椅子に顔をぶつけたの、そんで鼻血が出て…」

「あ〜、どれどれ」

シンジ君の鼻にはティッシュが詰められている。

レイとアスカどちらが手当てをしたのかしらないが鼻血はすでに止まっているようだ。

「うう、痛いよお〜!」

「うるさい!これくらい何でもない!」

「おいおい、アスカ」

俺はアスカの耳に口を近づけ囁いた。

怒鳴るのも言いがあんまり厳しすぎるとレイちゃんにシンジ君とられちゃうぞ

「えっ!嘘!?」

アスカは驚きの声を上げた。

少しその瞳には涙がにじんでいる。

う〜ん、これは効果的。

今度からニンジン残したときなんかには

『ニンジンのこしたらシンジ君好みのお姉さんになれないぞ』

とか

『シンジ君はニンジンが食べれない子は嫌いだってよ』

とか

『シンジ君言ってたぞ、何でも食べれるアスカはカッコよくて大好きだって、そのアスカさんが…まさか残したりしねえよな?』

とか言ってやろうかな。

けどアスカの顔見てると結構残酷な仕打ちだったりして、ちょっち罪悪感。

でも言ったらきっと慌てて口に放り込むぞ、結構健気な乙女だからな、ふふ、誰かさんにも見習って欲しいもんだな。



「はくしょおおおおおん!畜生!」

ここはネルフの赤城博士の研究室。

そこで葛城ミサトの豪快かつ型破りなくしゃみが響いた。

「なによ、風邪?」

赤木リツコ博士は心配そうに親友のミサトに尋ねた。

「…ふふ、きっとどこかの色男が私の噂をしてるのよ、ふふ、聞こえてくるわウェディング・ベルの鐘の音が」

「ちょっと〜、幻聴?早く帰って寝たら、給料はその分引いとくけど」

「ちょっと、リツコ〜」

「冗談よ、あなたも元気そうだし、それより今日はシンちゃんが加持君のとこにいるんだっつて」

「ええ、加持の奴がうちに来いって誘ってきて、リョウジおじさんと遊べるってシンちゃんったら喜んでたわ。

でもどうやらシンちゃんったらアスカが目当てらしいのよねえ、ああ見えてもオマセさんねえ」

リツコはクスっと笑うと手にしたマグカップを一口した。

「ふふ、この分だとうちのレイも加持君のところね」

別にこの事は天才でなくても推理できる。

アスカ、シンジ、レイはいつも三人で行動しているのだ。

「そうね〜、レイちゃんはシンジ君ともアスカちゃんとも仲良いからね、けど私の予想じゃ多分シンちゃんに気があるわね」

「うちのレイが〜?早過ぎるわよ、いくらなんでも」

「わかんないわよ〜、最近の子供達って結構そういうの早いみたいだから、…あの馬鹿変なこと教えてなきゃいいけど」

「フフ、加持君なら有り得るかもね」

「ほんと心配だわ」

リツコが一番心配なのはミサトの家で厄介になっているシンジだった。

ミサトがあまりにも家事が出来ないゆえに炊事洗濯をマスターせずにはいられなかったのだ。

グレるか主夫になるか…将来が楽しみね。

リツコは密かに碇シンジの将来を想像して楽しんでいた。



加持家のキッチン。

今ここでは二人のエプロンをした男が料理をしていた。

白いエプロンをしたシンジとピンク色のエプロンをしたスパイ、加持である。

「えっ?シンジ君は家でもう一人で料理してるの?」

「ええ、ミサトお姉ちゃんの料理は…わかるでしょ?」

「ああ」

あの味はもう…同棲していた大学時代、何度死にかけた事か。

それでも料理を食いつづけてきたおかげで免疫のようなものができて現在ではなんとか耐えられるまでになったが…あの料理をこんな子供が口にしてたとなると…

「ミサト…それは虐待に近い行為だぞ」

「だから僕、死ぬ気で料理を作れるようにがんばったんだ、生きるために!!」

シンジ君はキッと顔を引き締まらせて言った。

俺は…その時五才児のシンジ君に男を感じた。

「シンジ君」

俺はガシッとシンジ君の肩を掴んだ。

そしてシンジ君の目をジッと見つめた。

「よくがんばったな!」

「うん!僕がんばったんだ」

がしっ!!

俺は力強くシンジ君を抱きしめた。

「シンジ君!!」

「おじさん!!」

俺達はお互いに涙を流した。

お互いの傷を確かめる様に…

俺達は永遠と感じられる時間の中でいつまでも抱き合っていた。

「パパ〜、シンジ〜、ご飯まだぁ?」

「レイ、お腹すいた〜」

俺達ははじかれる様に体を離した。

「どうしたの?パパ」

「な…なんでもナッスイング、なあシンジ君」

「う…うん、そうだよね、おじさん」

俺達を疑わしいまなざしで見つめる二人。

気まずい雰囲気の中俺達は笑ってごまかすしかなかった。



食後、俺達は近くの公園に行った。

公園には俺達以外誰もいない。

俺はラッキーストライクをふかしながら尋ねた。

「お前ら、何して遊ぶの?」

「私はおままごとがいいの」

これはレイちゃん、うんうん、これは家庭的な奥さんになるぞ。

「あたしエヴァレンジャーごっこがしたい」

とアスカ。

元気でよろしい、でもそうなるといっつも俺が悪役になっちまうんだよな〜

「僕は…べつになんでもいいや」

おいおい、もうちょっと自己主張しょうぜシンジ君。

「おっし、それじゃあ、俺から缶蹴りなんてどうだ?」

「缶蹴り?」

「なにそれ?」

そうか、今の子は缶蹴りも知らないのか。

ならば故郷で缶蹴りのリョウちゃんと言われたお兄ちゃんが教えてあげよう。



「なんで、あたしが鬼なのよお」

アスカはじゃんけんが弱かった。

自分では気づいていないのだろうが彼女は最初にチョキを出すのだ。

「シンジ君、一緒に逃げようね」

レイちゃんはニッコリと笑いかける。

シンジ君は恥ずかしそうに頭をかいた。

「うん、けど僕足遅いしなぁ」

「じゃあこれを飲まない?」

レイは怪しい液体をポケットから出した。

おいおいトーピングは反則だぞ。

「なにそれ」

「お母さんからもらったの、飲むとエイチョマンとタメ張れるようになるんだって」

「えっはかしぇの!?遠慮しとくよお!!」

シンジ君は半泣き顔で遠慮した。

うむ、懸命な判断だぞ、シンジ君。

リッちゃんの薬を飲んで行方知れずになったやつは数知らずだからな。

「ちょっと!!レイ、シンジにあんまり構うと泣き虫が移るわよ!」

アスカは不機嫌そうに言った。

おいおいレイちゃんに妬いてんのかよ。

「なんかあの鬼が怒ってるよ」

「きっとカルシウムが足りないのよ、赤鬼さんは」

「何ですってえ!!」

真っ赤になって怒ったアスカは二人に向かって走り出した。

「うわあああああ!助けてェ!!」

「あははははは、鬼ごっこォ〜♪」

泣きながら逃げるシンジ君と楽しそうに笑いながら逃げるレイちゃん。

「やれやれ、まだ数えてないだろ?」

あっ、シンジ君、捕まった。

「え〜い、ASUKA・STRAIKE!!」

ばこ!!

シンジ君が蹴り飛ばされた。

おいおいアスカ、これじゃあ缶蹴りじゃなくて人蹴りだよ。



外から帰ってきて…よっぽど疲れたのだろう。

やつらは真っ先に眠りについた。

ガキの仕事の一つであるお昼寝タイムってやつだ。

もう夕暮れ時だ。

窓から見える夕日が俺の顔を赤く照らした。

「そうなの、あの子達寝ちゃったんだ」

そう言ってリツコ、通称リッちゃんは俺のいれたお茶をすすった。

「う〜ん、仲よしね〜、微笑ましいわね」

葛城は俺のウイスキーを勝手にすすってた、それ…結構高かったんだぞ、それにお前運転大丈夫なのか?おい。

「そろそろチビッコども起こしてくるかしら」

「いいよ、葛城、それにお前酔っ払ってんだろ?ゆっくりしていけよ」

「そうね、ゆっくりさせてもらおうかしら」

リッちゃんはクールにそう呟くとテレビをつけた。

クローン山羊だとか、細胞分裂がどうたらこうたらとかテレビでやっている。

俺にはチンプンカンプンだ。

とうてい面白くないのにリッちゃんは笑みを浮かべていた…。

相変わらずだな。

「私ちょっとおこしゃま達の寝顔でも拝見してくるわ」

葛城はそういうと立ちあがった。

あっ、ふらついてる。

「大丈夫か?葛城」

「だいじょぶよん、それとも今更あたしの心配してくれんの?リョウちゃんは〜」

「いや、お前の心配より子供の心配だよ、お前があいつ等の上に倒れかかったら…、あいつらがせんべいになっちまう」

「どういう意味よ〜」

「一理あるわね」

テレビ画面に目を向けながらリッちゃんは呟いた。

葛城は膨れた。

おいおい、お前が膨れてもかわいくねーつーの、年齢考えろ。

「もういいわよ、あたしはだれにも理解されない悲しい美少女なのよ」

「美少女が酒飲むなよ…、しかも人の」

「うっさいわねえ、男がそんな細かい事気にしててどうすんの」

俺の酒なんっスけど〜、ミサトさ〜ん

ミサトは立ちあがると子供達の部屋に向かった。

葛城にプレスされたアスカ達を見るのは嫌なので俺も当然ついて行った。



俺は…口を押さえた。

レイちゃんはすやすやと寝ている。

だが…アスカは…。

「あらぁ〜シンちゃんやるう〜」

あ…アスカが俺のアスカが。

涙が出てしまった。

アスカは自分の布団でシンジと抱き合う様に寝ていた。

実際は寝相の悪いシンジ君がアスカの布団に転がって行ったのかもしれないが…

ゆるせん!!

「ううん…ああ、シンジィ…、好きだよお」

「あ…あしゅかァ…」

プチン…!

その寝言を聞いたとき俺の中でなにかが弾けた。

「二人ともラブラブねえ…、うらやましいわ」

うるさいぞ、葛城!

お前には娘を取られた父親の気持ちがわかるまい!



この日…俺はここに誓った。

碇シンジ!!俺の目が黒いうちはアスカには指一本でも触れさせんぞ!!



―――加持リョウジ、諜報部員、一流のスパイ。

だが彼の真の敵となりうるのは碇ゲンドウの子息である碇シンジ(五才)だった。



〜後書き〜

こんにちは、みなさん、幻都です。

今回はこれ…LASなんでしょうかね…

自分としては加持ものが書きたかっただけなんで…気がついたらこうなっていました。

皆さん知ってのとおりこれはリツコお母さんの加持盤です、あまりここのサイトでは見られない彼を主役に書いてみましたがどうだったでしょうか?

珍話ではかれがどんどん壊れていきそうな気がしたのでここでマトモ(でした?)な加持さんが書きました。ではシメを加持さん。

加持お父さん:イカレシンジ!俺のアスカに手ェ出すなあああああ!!


 幻都さんからSSを頂きました(^▽^)ありがとうございます〜
 
 なんと新たなジャンルが登場しました『加持お父さん』です、アスカちゃんが娘とはjun16は思いつきませんでした。

 クールな彼も可愛い娘の前では子煩悩を発揮していますね。

 どうやらアスカちゃんはシンジ君が好きなようですね、加持お父さんも微笑ましく二人を応援しています。レイちゃんも居るのですが彼女もシンジ君が好きなのかな?

 それにしてもシンジ君は五歳にして主夫の道を歩まなければいけないのですね(TT)ミサトさんちから出たほうが良いのではないでしょうか(笑)

 お昼寝で抱き合うように寝ていたシンジ君とアスカちゃん、これには加持お父さんも怒り心頭ですね(まだ五歳児なのに^^;)

 小さくても立派なLASだ!と感想を送りましょうね。

 とっても素敵なSSをくださった
幻都さんに皆さん感想を送りましょう。

 皆さんの感想が作者の力になります!一言でもよいから感想を書きましょう!!


投稿:リョウジお父さん 〜パパの誓い〜