雨、雨、雨

Made by 幻都




いつの間にか雨が降っていた。

雨に打たれる町は静かだった。

ピチャピチャと音を立てる足音と勢いよく水をはじく車の音。

少年は雨が好きだった。

空から振りそそぐこの雨は流してくれるからだ。

嫌な事も辛い事も。

少年はよく雨の中を散歩する。

この湿りきった大気は心地がいい。



「おや」

目の前には青い髪をした少女が歩いてきた。

彼女はクラスメイトであり…そして。

「綾波も散歩?」

青い髪の少女はコクリと首を縦に振った。

彼女が持っている素っ気無い透明のビニールの傘からしずくが流れ落ちる。

少女の物静かな所が静かに降りしきるこの雨とよく似合うと少年は思った。

「碇君も散歩なの?」

「うん、まあね」

「…そう」

青い髪の少女はそう答えるとそのまま通りすぎようとした。

「まって」

少年は少女を引きとめる。

「しばらく一緒に歩かない?」

「……どうして?」

「いや、どうしてって言われても困るけど…とにかく歩かない?」

「……命令ならそうするわ」

青い髪の少女はそう頷くと少年と歩き出した。

少女は雨が不思議だった。

雨音が私を包んでくれるから。

まるで世界に私しかいないみたい…

世界から私だけが隔離されたような…

…とっても不思議な気持ちになるの

気持ちなんて私にはわからないはずなのに



「ここんところ、雨が多いね」

「そうね」

「綾波は雨は好きかい?」

「別に、けど…雨の中にいると私と言う存在は一人という気がするの…」

「寂しいの?」

「ううん、音が聞こえて楽しいの」

「どんな?」

「雨の音、風の音、雷の音、車の音、カエルさんの声…、だから全然寂しくないの」

「綾波は感傷的なんだね」

「感傷的ってどう言う意味?」

「えっ、それは…(あせあせ)」

「…知らないのね、怪我してるってことよ」

「それは違うと思うな…」



雨音の中で踏みきりの音が聞こえた。

電車の走る音が聞こえる。

いつもならこの距離からでは聞こえにくい音なのに…

静かな雨の世界の中では、はっきり聞こえる。



「僕は雨が好きだな」

「どうして?」

「雨ってさ、雨って嫌な事とか、辛い事とかを洗い流してくれるんだ」

「…碇君は雨の中で体を洗うの?」

「そう言う意味じゃないよ、心の中を綺麗にするって事」

「そんな事知ってるわ、言ってみただけよ」

「そうなの…?とてもそう言う風には見えなかったけど」

「碇君のいやなことって何?」

「……最近ではミサトさんの晩酌とか、愚痴とか…時々、晩御飯とか作るのも嫌だな、時々家の事ほったらかして逃げたくなるよ…マジで」

「同情するわ」

少女は静かに呟いた。



しばらくすると次第に雨足が弱くなってきた。

それに合わせるように少年達の足もゆっくりになっていく。


街は濡れていた。

濡れた街はいつもとは違った雰囲気を持っている。

雨が街を塗り替えるのだろうか。

湿った風がひんやりと少年の頬を掠める。


「もうすぐ止みそうだね」

少年は空を見上げた。

―――雲の隙間から太陽の光が指した。

街が木が人々がその優しい光に照らされていく。


「あっ」

空を見て少年はニッコリ笑った。

そしてまっすぐとそれに指を指した。

「ほら、見てみなよ、綾波」

少年の指差した方向には天界と地上を結ぶ七色の橋が輝いていた。

「…大きい」

空にかかった橋の大きさは少年達が見たことも無いくらい大きい橋だった。

「綺麗だね」

「うん」

虹と一言で言ったしまえばそれまでだろう。

だが、人々は古くから天に続くこの美しい橋を見て多くの神話を作りその神秘を語りつづけてきた。

皮肉にもこの街は天使達に狙われた大変奇特な危険地帯になっているが…

一瞬しか現れない虹にはたしかに幻想を現実にする美しさがあった。


「私…」

「綾波?」

「この虹が好き、だって、綺麗で儚くて…夢みたいだから」

「綾波、夢じゃないさ」

ぎゅ〜!

少女は自分の顔を抓った。

「綾波?」

「痛いわ、夢じゃない」

少女は頬をさすりながら微笑んだ。

そんな少女を見て少年は笑った。

「ハハハ、綾波っておかしい」

「そう…?」

「まあ、僕も気持ちがわからないわけじゃないけどね、僕もホントに…」

「馬鹿シンジ〜」

金色の髪の女の子が後ろから少年を突き飛ばした。

「アスカ〜?」

少年は少女の名前を呼んだ。

金髪の少女は腰に手を当てながら少年を見下ろした。

「どうしたの?」

「どうしたのじゃないわよ、あたしのおやつが出てないじゃないの!」

「それなら棚に…」

「口答えしない…全く」

金髪の少女は青い髪の少女を横目で見ながらブチブチと言った。

「全く…油断も隙も無いんだから、いなくなったと思ったら…ファーストとデートだなんて」

「デート!!」

少年は顔を真っ赤にした。

青い髪の少女と言えば空にかかった虹を見つめている。

「そんなんじゃないよ!」

「関係無いわよ、あたしは誘ってくれないくせにさ」

「ゴメン、そのアスカ…」

「ふ〜んだ、なんでも無いのに謝ってるんじゃないわよ、…も〜いいわ、あんたがその気ならあたしも勝手にするから」

「ちょ…アスカ!?」

まさか…他の男と!?

「ファースト」

金髪の少女は青い髪の方の肩を叩いた。

「なに?」

「あたしとデートするわよ、付き合いなさいよね」

「…命令ならそうするわ」

べ〜、驚く少年にアッカンべーをすると青い髪の少女と共に雨上がりの道を歩いていった。


「アスカ〜、綾波〜、まってよ〜」

少年は慌ててその後を追いかける。

アスファルトでできた道路が光を浴びてキラキラと光る。

少年は前を行く二人の少女の後を情けなく追いかけていった。









〜後書き〜

こんにちは、久し振りの幻都です。

今回は割と短かったですね…、ギャグも少ないし(?)。

まっ、そんな時もあるって事ですかね。

幻都は結構雨の日も好きです。

雨の中を歩くと晴れた日には見られないもう一つの街の姿が見れます。

皆さんも今度、雨の街を散歩してみたらどうですか?

きっと良い発見ができますよ。




アスカ「綺麗な虹ね、まるであたしみたい」

シンジ「アスカ…(ジーッ)」

アスカ「…何よ、ファーストが好きならいつまでもファーストとイチャイチャしてれば?(ドキドキ)」

シンジ「アスカはどちらかというと雷って感じだろ、怒るとコワイし」

アスカ「言ったわねー!!」

シンジ「うわ〜〜!!雷だ〜!!」

アスカ「待ちなさ〜い」


レイ「行っちゃった、最後になりましたがこんな小説(?)を最後まで見てくださったお優しい方に感謝します」(ぺコリ)


 幻都さんからSSを頂きました(^▽^)ありがとうございます〜
 
 雨の中を歩く少年と少女、雨に対してそれぞれ考えやどうして好きなのかが違いますね。シンジ君の問い掛けにちょっと冗談で返すレイちゃん可愛いですね(^^)

 そして雨があがると空には七色に輝く虹、二人が雨を好きなのは雨の後に虹が輝くからかもしれないですね。

 そんな綺麗な虹に興味が無いアスカちゃん(笑)興味があるのはオヤツですね。シンジ君そっちのけでアスカちゃんとレイちゃんでデートとは、シンジ君焦りますね(^^;)

 アスカちゃんとレイちゃんのデート!?LARにちょっと期待するっスと感想を送りましょうね。

 とっても素敵なSSをくださった
幻都さんに皆さん感想を送りましょう。

 皆さんの感想が作者の力になります!一言でもよいから感想を書きましょう!!


投稿:雨、雨、雨