アスカと綾波が、いなくなって一週間になった。ミサトさんは、知らないとの一点張りだった。リツコさんもアスカや綾波と同じように行方不明だ。
学校が終わりいつものようにNERVに行った。そしていつものように更衣室でプラグスーツに着替えた。
「アスカに綾波・・・・・・本当にどこに行ったんだろう?」
僕は、そんなことを考えながらロッカーを閉めた。
「こんな時に使徒が来たら、どうするんだよ?・・・僕一人で戦えってか?無理だよ、そんなの。」
無意味な独り言を言いながら、更衣室を出た。今日もまたたった一人の訓練が始まる。
(・・・・・・さぼろうかな?・・・・・・やめとこ。ミサトさんに怒られるや。)
とぼとぼと、一人で歩く。一週間前までは、ここにアスカや綾波がいて・・・・・・やめよう。又暗くなっちゃうや。
もうすぐだ。あそこの角を曲がるだけ。僕は、深くため息をついた。
(・・・・・・一人は・・・・・・つらいや)
そう思ったとき、その角から、聞きなれた声がした。
(・・・アスカ!?)
僕は、急いで走った。あそこにアスカがいる。それが、僕の足を走らせた。角を曲がったと同時に僕は、言った。
「アスカ!!一体今までどこに行ってたのさ?心配したんだ・・・・・よ・・・・?!」
僕は、絶句した。そこにアスカはいた。いたのだけれども、そこには、僕の知らないアスカがいた。いつもの赤いプラグスーツの上にゴキブリマント、灰色の目の所だけ隠すマスクをし、軍事用のヘルメットをかぶっていた。その姿はまるで・・・・・
シャア・アズナブル大佐だった。
夢だと思った。アスカがこんなコスプレをするような奴じゃないはずだ。しかし次の瞬間そんな僕の甘い考えを簡単に破りさってくれた。
「シンジ、何を言っているのよ。私は、シャア・アズナブル。過去を捨てた女なのよ。」
・・・・・・なんか、死にたくなってきた。信じていたのに。リツコさんのガンダム好きにこんな形で仲間になるはずないと信じていたのに。
「・・・・・・アスカ?どうしてそんな格好をしているの?コスプレは、あんなにも嫌だって、言っていたのに!」
アスカは、僕の言葉にふっと笑いながら言った。
「シンジ、私を誰だと思っているのよ?私は、シャアなのよ?コスプレなんてやっていないわ。」
「たとえコスプレじゃないにしても、そんな格好で恥ずかしくないの?」
「これは、私の軍服よ。それに私は、悔いているのよ。ガンダムに狂っていると思っていたリツコを馬鹿にしていたのを。・・・・認めたくないものね。自分自身の・・・若さゆえの過ちというものを。」
僕は、混乱した。どう考えても、おかしすぎる。アスカが、こんな風になるなんて。・・・・・・待てよ。もしかして綾波もこんな感じで帰ってくるのかな?
「そこにいたのね、シャア!」
・・・・・・生きていくのが嫌になった。僕の予想どおりの綾波が、現れた。いつものプラグスーツの上に青の軍服。そして、そばにハロを連れて。
アムロ・レイ姿の綾波が。
頭が痛い。病院に行こうかな。そのほうがいいよね?・・・・・・でもどうして二人が、こんな風になったんだ?犯人は一人しかいないけど。
「はーい。全員揃っているわね。」
僕が、頭を悩ましていたら、ミサトさんが、現れた。
「ミサトさん。これは一体どういうことですか?」
「シンちゃん、そんなに怒らないでよ。これは、リツコが勝手にやっていた事で、私も今日の朝始めて詳細を知ったのよ。」
ミサトさんは、そう言うと困ったようで、頭をかいた。
「それで、・・・・・・いつもどおりやるんですか?」
「まあね。リツコ曰く問題ないらしいし。」
「綾波レイ、零号機、行きまーす。」
「シャア・アズナブル、弐号機、行くわよ。」
・・・・・・やっぱりこうなるんだ・・・・・・いつもの訓練にアスカと綾波は、こう叫んでいった。・・・・・・人格が、違っているよ。僕、まだツッコまないといけないのかな。
「うふふふ。さあ、二人とも見せなさい!!ニュータイプの力を!!」
・・・・・・犯人叫んじゃってるよ。リツコさんは、まさにマッドサイエンチストそのものになってる。・・・・・・もとからだっけ?まあいいか。見るべきところは、そこじゃない。アスカと綾波の動きが、いつもと全く違うのである。反応が早すぎる・・・というか、攻撃を常に先読みしている。それに、動きもいつもより速い。
「機体の性能の差が、戦力の決定的差でないことを教えてあげるわ!!」
「見える・・・・・そこ!!」
ちゃっかりセリフも言ってるよ。
「すごいです。セカンドチルドレンの動きが、いつもの三倍です!!」
アスカの動きを解析した伊吹さんが、驚いた声で言った。
「当たり前よ!今の彼女は、シャアなのよ!!赤い彗星なのよ!!三倍なんて、当たり前なのよ!!」
うわあ、リツコさんのテンション上がってるや。
「ファーストチルドレンもすごいです。零号機が、反応についていけていません!」
日向さんも驚いている。
「アムロなのだから当然よ!これで、私は、母を超えたのよ!!」
なんか訳分かんない事言ってるや。もう、ツッコめばいいという問題をすぎたかな?
「じゃあ、そろそろ聞こうかしら?リツコ。この一週間アスカとレイに何をしたの?」
ミサトさんが、リツコさんに詰め寄っている。・・・・・・・訓練をやめて、そっちの方に気を集中した。別にサボっていてもアスカと綾波が、次々と落としていくし。
リツコさんは、その言葉を待っていましたとばかりにしゃべりだした。
「これこそ私の夢、
『チルドレンニュータイプ化計画』
の結果なのよ!!」
決まった。リツコさんは、ガンダム好きじゃない。ガンダム狂だ!間違いない!
「ちるどれんにゅーたいぷ化?リツコ、頭・・・・・・大丈夫なわけないわね。」
「何を言っているの?!これは、人類の飽くなき夢よ!!それを私は、成し遂げたのよ!!あの二人にこの一週間、戦闘シュミレーションとビデオ鑑賞をやらせ続けたのよ。ビデオの内容は、秘密だけどね。」
どう考えても、アスカにはシャアだけの、綾波にはアムロだけのものを見せたに決まっているじゃないか。・・・・・・なんか、アスカ達に物凄く同情するよ。この一週間この世のものとは思えないような悲惨なものだったんだろうね。生きて帰ってきてくれて嬉しいよ。
「この精神的に追い詰められた状況下で二人は、見事にニュータイプとして覚醒したのよ!!しかも、私の狙いどおりにアムロとシャアとしてね!!」
リツコさん・・・・・・凄いとは思うけど人間として間違っているよ。人権無視だよ。人としてやっちゃいけないことだよ。ミサトさん、ツッコんでよ。
「・・・・・・・」
絶句しちゃってるよ。もしかしたら、次は僕の番?!・・・・・・逃げなくちゃ駄目だ、逃げなくちゃ駄目だ、逃げなくちゃ駄目だ、逃げなくちゃ駄目だ、逃げなくちゃ駄目だ、
逃げなくちゃ駄目だ!!!
僕は、生命の危機を感じていた。・・・・・・・母さん、もうすぐそこに行くよ。
しかしそんな心配は、杞憂に終わった。
ぶちんっ!!!
大きな音と共に弐号機と零号機が倒れた。一瞬何が起きたのか僕には分からなかった。
「弐号機と零号機の両足首に亀裂が発生しました!両機立ち上がれません!」
伊吹さんの言葉に耳を疑った。足首に亀裂?
「どういう事なの?!マヤ?!」
リツコさんが焦っている。当たり前だよね。でもどうしてだろう。敵の攻撃に当たってなかったのに。
「どうやら、普段の倍以上の負荷が、かかっていたようで、俗に言う『肉離れ』の状態です。」
伊吹さんの言葉にリツコさんは、ぽかーんとしてしまっている。どうやら、ニュータイプの感覚でエヴァを動かした場合、あのガンダムですらマグネットコーティングをしたのに反応が付いていけなかったのに、40メートルもあるエヴァが大丈夫なわけなく、身体全体に異常な負荷がかかり、一番もろい足首が、やられたらしい。もちろん、実戦でこんな事になったら、洒落にもならない。
「・・・リツコ、無様ね。」
ミサトさんはそうつぶやき、これで、リツコさんのチルドレンニュータイプ化計画は、幕を閉じた。その後アスカと綾波は、無事に戻されて帰ってきた。二人に監禁された一週間の事を聞くと顔を真っ青にしてブルブルと震えだした。やっぱり、地獄だったんだ。
よかった。地獄を見ないで。
「うふふふ、『チルドレンニュータイプ化計画』は失敗したわ。でも、次は、『エヴァンゲリオンブルーデスティニー化計画』の実行よ!!」
夜のリツコさんの研究室に不気味な叫び声がこだました。
勘弁してください。
黒い稲妻さんからSSを頂きました(^▽^)ありがとうございます〜
アスカちゃんとレイちゃんが行方不明になって一週間、心配しているシンジ君の前に現れたのはアスカちゃんではなくシャア!そしてレイちゃんはアムロに変身していました(笑)
ガンダム好きなリツコさんが二人を無理やり教育した賜物ですね(爆)二人の教育は『チルドレンニュータイプ計画』の結果、リツコさん満足ですね。
リツコさんの魔の手が伸びる前にシンジ君は逃げましょうね(^^;)
リツコさん、次の計画が気になりますと感想を送りましょうね。
とっても素敵なSSをくださった黒い稲妻さんへの感想は掲示板かjun16に送ってくださいね。黒い稲妻さんに送っておきます。
皆さんの感想が作者の力になります!一言でもよいから感想を書きましょう!!
投稿:MAD SCIENTIST’S DREAM