午後二時、リツコの部屋
「・・・ふぅ、やっと一段落ついたわね」
そう言うとリツコは仕事用ノートパソコンの電源を切った。
「おかあさん、お茶。」
「あら・・・気がきくじゃない。ありがとう」
「おいしい?」
「ええ、おいしいわ。特に仕事の後はね」
「おかあさんはミサトお姉ちゃんと違うからねぇ」
「あんなの比べる対象にもならないわよ・・・」
「ね〜おかあさん、遊ぼ〜」
「ごめんね、まだ仕事があるのよ」
「えー、暇なの〜〜〜」
「・・・じゃあシンジ君でも呼ぼうかしら」
「うん、シンジお兄ちゃんと遊ぶ〜!」
「ちょっと大丈夫か聞いてみるわ」
午後二時五分、ネルフ某所
その頃シンジはエレベーターで移動をしていた。
電話よ〜!
アスカの声が周りに響く、だがアスカの姿は何処にも見当たらない。
「あ・・・電話だ・・・。」
この変な着信音は友人の協力を得て入手したものである。
「・・・リツコさんから?一体何だろう?・・・はい、碇です」
「シンジ君、今どこ?」
「ネルフの廊下ですけど、どうかしました?」
「ちょっと頼みたいんだけど・・・レイの相手をしてくれない?」
「相手?」「そう、暇らしいのよ」
だがシンジは、この後トウジと会う予定だった。
「あ・・・ちょっと用事があるんで」
「用事?」
「ええ、ちょっと友人と」
「どうしてもダメかしら?」
「う〜ん、すいませんが今回は・・・。それじゃあまた」
と、シンジが通話を切ろうとした瞬間。
ぶちっ。
シンジの目の前は真っ暗になり、エレベーターの動きが止まった。
「うわ!?」「・・・どうしたのシンジ君?」
「て、停電になっちゃったみたいです」
「停電?・・・おかしいわねぇ、こっちはなっていないけれど。
大人の言うことを聞かない悪い子に天罰が下ったのかしらね」
その瞬間、シンジはリツコの仕業だという事を悟った。
「・・・や、やっぱり、さっきのお話OKです!」
「さっきの?本当に良いの?」
「もっ、勿論です!」
こうでもしないとずっと此の侭だろうな・・・・。
ばちっ。
「あ、停電が直ったみたいです」
「あらそう、もし直らなかったらどうしようかと思ったわ」
「全くです」
「ふふふ・・・・それじゃ、よろしく頼むわね」
つーつー。そこで通話は途切れた。
結局は力づくか・・・・シンジは溜息をつきながら思うのだった。
午後二時十五分、リツコの部屋
「よかったわねレイ、一緒に遊んでくれるらしいわよ」
「・・・おかあさん、さっき電力の管理室で何してたの?」
「仕事よ仕事、時には武力行使も必要なの」
「失礼します・・・シンジですけど」
「あら、いらっしゃい。早かったわね」
遅かったら何されるか分からないしね、とシンジは内心苦笑いしていた。
「シンジお兄ちゃん〜何する〜?」
「あはは・・・何でも良いよ」
「じゃあ・・・ちょっと席外すけどお願いね」
「え?・・・は、はい」
「じゃあ、シンジお兄ちゃんは何したい?」
「う〜ん、そうだねぇ・・・」
その時シンジの心理は乱れていた。
(・・・子供って何で遊べば良いのかなぁ?確か五歳だし・・・。五歳の頃何したっけなぁ、いやそんなの覚えてないよ。やっぱり女の子だからままご?いやレイちゃんって意外にませてるし・・・トランプ?いやいくらませてても五歳にトランプなんて出来ないよ!え〜と、この部屋に玩具は・・・あるわけ無いよねあ、そうだ、自分の頃は砂でお城作って・・・いやここに砂場無いし・・・ああもう、どうすればいいんだ〜!?)
「シンジお兄ちゃ〜ん、どうしたの?」
「う〜ん・・・う〜ん・・・」
「苦しそう・・・どうすればいいの?早く帰ってきておかあさん・・・」
午後二時四十五分
がちゃり。
「ただいま・・・ってどうしたの?」
「おかあさん、シンジお兄ちゃんが苦しんでるの」
「苦しんでる・・・?」
「分からない、う〜ん・・・」
リツコはシンジを見るとどこかから巨大ハリセンを取り出し、レイに持たせた。
「おかあさん、何これ?」
「大阪名物ハリセンチョップよ」
「答えになってないの・・・」
「とにかくそれで叩いてみなさい」
「は〜い」
そう言うとレイは容赦なくシンジの顔面目掛けてハリセンを振った。
べしっ!
会心の一撃、シンジはまともに喰らって仰向けに倒れた。
「う〜ん、痛いよ・・・」
「まだ駄目みたいね・・・・」
コンコン
「リツコー!いるー?」
「その声はアスカ、丁度良い所に来たわね」
「はぁ?何を言ってんのよ」
「ストレス溜まってるんでしょ?」
「あら、あんた人の心が読めるの?ストレス解消に何か良いものが欲しいんだけど」
「ピッタリのものがあるわよ、はい」
ハリセンを受け取ると、アスカは周りを見回した。
「これほどのハリセンならかなりの威力が出せそうね、でも的が無いわ」
「的ならそこで倒れてるわよ」
「シンジを打っちゃって良いの?日頃の恨みを晴らしてやるわ」
「これで良いかしら?」
リツコはアスカが打ち易いような体勢にシンジを動かす。もはや情けなど無用である。
「おー、ナイスナイス。それじゃ行くわよー!」
そう言うとハリセンを構えた。レイはリツコの机に隠れている。
「おかあさん、怖いの・・・」
「よく目に焼き付けておきなさい、これが真のアスカ、鬼神の姿よ」
「ぶっ飛べぇーーーーー!!」
ばっきゃーん!!
パワーMAX、渾身の一撃がシンジに炸裂した。
「うう・・・もう嫌だぁ〜!!」
午後三時。シンジの苦悩の叫びは、誰にも届く事が無かった。
そして次の日、約束を破ってトウジに強烈なパンチを喰らわされる事は言うまでもない。
あとがき
初めまして、takuto1125です。
エヴァ小説は久しぶりなので、あまり自信はありません・・・。
ただキャラ設定があったので上手くやれた方ではあると思います。
レイちゃんが五歳に見えない・・・というのが最大の誤算でしたね(苦笑)
改めて六周年おめでとうございます、自分はまだこのサイトを知って数ヶ月ですが・・・。
これからも期待してますので頑張って下さいね♪
takuto1125さんからHP開設六周年企画SSを頂きました(^▽^)ありがとうございます〜
仕事が忙しいリツコさんはレイちゃんと遊ぶ暇が無くて困ってしまっていますね。そこで白羽の矢が立ったのはシンジ君、携帯電話の着信音がアスカちゃんの声とはシンジ君らしいですね。
レイちゃんの遊ぶ相手を頼まれましたがトウジと会う予定があるので残念ながら断ろうとしたら・・・リツコさん強引ですね(^^;)シンジ君は観念してレイちゃんと遊ぶのを選びましたね。でもレイちゃんと何して遊べば良いか悩みだしましたね。
悩んで思考がループしているシンジ君にはショック療法、ハリセンチョップで治療ですね。でもこれはアスカちゃんのストレス解消の治療ですね(笑)
シンジ君、ついてない日もあるよと感想を送りましょうね。
とっても素敵なSSをくださったtakuto1125さんへ感想を送りましょう。
皆さんの感想が作者の力になります!一言でもよいから感想を書きましょう!!
投稿:シンジの受難 〜苦悩〜