EVA CHANGING
Vol.17
風邪
「zzzz」
朝、シンジは布団の中で幸せな眠りを満喫していた。以前ならもう起きて朝食、お風呂の準備と忙しかったのだが、今はアスカがやってくれるのでまだ幸せな夢の中。
ピピピピピ
それほど刺激が無い目覚ましの音と、アスカが作る味噌汁の良い香りで起きる・・・・
「くんくんくん・・・・あれ?」
味噌汁の香りで起きるのだが・・・・今日は違った。
「味噌汁の香りがしない?」
何度嗅覚を研ぎ澄ましても、香りはしなかった。上半身を起こしボリボリと頭をかいて考える。
「・・・今日はパンかな?」
焼きたてのパンを想像しながら、部屋を出て台所へ。
「アスカ、おはよ・・・・あれ」
シ〜〜〜ン
台所はひっそりと静まりかえっていた。コンロは使った形跡がなく冷たい。
「どうしたんだろうアスカ?寝坊かな」
アスカの部屋を見るシンジ、起きてくる気配は無い。ミサトは・・・勿論無い。
コンコン
「アスカ〜起きないと遅刻するよ〜」
ゆっくりと襖を開けた。以前なら開けた瞬間に、モノが飛んできて沈黙したのだが今は違う。
「アスカ〜」
カ〜テンが太陽の光で透き通って部屋を照らしていた。アスカはまだ寝ているようである。
「アスカ〜そろそろ起きないと」
「ん・・・・シンジ君」
アスカはゆっくりと瞳を開けた。だが声に生気は無く、瞳も虚ろである。
「どうしたの?」
「頭が・・痛いの・・・風邪をひいたみたい・・・こほこほ・・・」
「風邪?」
驚いた。確かによくアスカの顔を見てみると、顔は真っ赤になっており額には汗をかいていた。
「熱は?」
そう言うと額に手を当てた。突然の事に当然アスカは驚く。
「シ、シンジッ君!」
「少し熱いよ。タオルを持ってくるから寝ていてて」
「う、うん・・・」
アスカは熱のせいかそれとも他のせいか、顔が一層赤くなるとタオルケットを口元まで持っていき、シンジが部屋を出て行くのを見つめていた。
すぐにシンジは洗面器に氷水を入れて持ってきた。そしてタオルを濡らして絞り、アスカの額に乗せる。
「ご飯は食べれる?おかゆがいい?」
「う、うん・・食欲がない・・・」
「ダメだよ。少しでも良いから食べないと、作るから安静にしていて」
「う、うん・・・ありがとう」
アスカは礼を言った。だがシンジは急いで部屋を出て行ったのでそれは聞こえる事はなかった。
そしておかゆを持ってやって来た。
「熱いから火傷しないでね」
「うん」
十分に冷ましてから少しずつ口に運ぶ。シンジはその姿をずっと見ていた。
「・・・シンジ君・・・・」
「何?味薄かったかな。でも濃いと体に悪いから」
「ううん、そうじゃないの・・・その、ずっと見つめられていると・・・食べづらくて・・・」
「あっ!ご、ごめん」
シンジは赤くなると慌てて部屋を飛び出した。
「ふふ・・・こほこほ」
パク、モグモグ
シンジは一人ト〜ストに目玉焼きと、短時間でできる料理を作り食べていた。
(アスカ大丈夫かな?今日は学校休んで看病したほうがいいかな)
モグモグ
(昨日まで元気だったの風邪だなんて、僕も気をつけよう)
モグモグ
味気ない朝食を進める。
「こほこほ・・・・シンジ君ごめんなさい。全部食べきれなかったわ」
そこにおかゆを持ってきた。アスカがやって来た。
「アスカ!ダメだよ寝てないと」
「うん・・・・でもおかゆが・・・」
持ってきたおかゆは1/3しか食べていなかった。申し訳なさそうな顔をする。
「いいよ。それより薬を飲んで」
「うん・・・・」
渡された薬を流し込む。少し苦くて顔をしかめる。
「こほこほ・・・」
「大丈夫?看病したほうがいいかな」
「大丈夫。シンジ君は学校に行って、お昼は残ったおかゆを食べるから」
心配かけまいとシンジに微笑む。
「ごめんね。朝食とお弁当を用意できなくて」
「そんな事ないよ。僕がアスカを頼ったのがいけなかったんだ。ごめん」
深深と頭を下げた。
「いいの、好きでしているから・・・」
「アスカ・・・」
二人は互いに頬を染め見つめあった。だが・・・・
「クエクエ」
「「!」」
突然のお邪魔虫に二人は背を向き合い照れた。
「ペ、ペンペン!イキナリなんだよ」
「クエクエ」
羽をばたつかせて何かを訴えかけていた。
「ごはんじゃないかしら」
「そうだ、忘れてた」
「クエッ!」
ペンペンはシンジの足をぺチっとたたくと準備を急がせた。アスカは苦笑しながら光景を眺め部屋に戻って行った。
「はいペンペン」
「クエ」
置かれた魚、喜んで食べる姿をシンジはしゃがんで見て呟いた。
「はあ〜・・・良い雰囲気だったのにな〜ペンペン、もうちょっと寝てくれていれば良かったのに・・・」
「クエ〜〜」
だがペンペンにしてみれば『お腹が空いて死にそうだった。ご免シンジクン。でもいちゃつくなら別の所でしてくれ』である。
食器を洗い、学校の準備をし後は出かけるだけ、玄関に行く祭にアスカの部屋の襖を開ける。
「アスカ〜学校に行って来るからね。何かあったら僕の携帯にかけてね」
「うん、いってらっしゃい」
「いってきます」
シンジは不安を残しながらも学校に行った。
・・・・
「zzzzzzzzz」
家長ミサトは完全に忘れ去られており、完全な遅刻になりリツコに小言を言われるのであった。
「うええええ〜〜」
「ミ、ミサトさん何を泣いているんですか?」
「また遅刻したのよ〜〜〜〜どうして起こしてくれなかったの〜〜」
「ご、ごめんなさい。風邪でボ〜としていて」
「おかげで朝食は食べられないわ、リツコには小言を言われるわで散々だったわ〜〜うええええ〜〜」
「・・・・」
「給料がまた減っちゃうわ〜〜」
「・・・目覚ましはかけているんですか?」
「ダメなの。起きられないのよね」
「・・・・」
「アスカ、風邪はひいてもいいから。私を起こしてから寝てちょうだいね」
「・・・・」
「そしたらシンちゃんの看病を、私に気がね無く受けられるでしょ」
「なっ、ミ、ミサトさん!」
「せっかく良い雰囲気だったのにね〜ペンペンたら邪魔しちゃって、ごめんなさいね。ちゃあんと二人がいちゃついている時には出て行かないって仕付けとくから」
「そ、そんな事ないです」
「あら〜そう?顔真っ赤よ」
「こ、これは風邪だからです」
「はいはいそういう事にしておきますか」
「もう!」
ついにアスカ編でも風邪が登場です。学校を休んでまで看病をすると言うシンジ君。でもちゃんと学校に行きましょう。
忘れ去られるミサト、また減俸に大丈夫でしょうか?
こんな連載小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。
EVA CHANGING Vol.17 風邪