EVA CHANGING
Vol.18
おかゆの価値は
「おはよう碇くん。あれアスカは?」
教室に入ったシンジ、ヒカリは挨拶をするがいつも隣りにいるアスカがいないのに気がついた。
「おはよう。アスカは風邪なんだ」
「そうなの〜、大丈夫なの?」
「うん、アスカは平気って言っているけど、ちょっと熱が高かいんだ」
「そう」
シンジの暗い表情にヒカリも暗くする。
「看病していた方が良かったんじゃないかしら?」
「そうしようと思ったけど大丈夫って言ったから」
「それじゃあ授業が終わったら早く帰らないとね」
「うん」
シンジの迷いのない返事にヒカリはちょっと羨ましく思った。
(アスカ幸せね)
授業中、真面目に授業を聞いている生徒は半分以下である。シンジは真面目と言えば真面目なのだが今日は違った。
ソワソワ ソワソワ
授業内容は頭に入っておらず、時間ばかり気にしていた。
(早く終わらないかな。アスカ大丈夫かな)
長く感じた一時間目の授業が終わり、シンジは屋上に走る。そして携帯電話を取りだし短縮にかけた。
プルルルル・・・カチャ
「はい、アスカです」
「もしもしアスカ、シンジだけど大丈夫?」
相手はアスカ、心配で気になってかけたという訳である。
「ふふ、大丈夫だからしっかり授業を受けないとダメよ」
「うん。アスカもしっかり寝てね」
「うん、ありがとう」
「それじゃあ・・・」
電源を切るとマンションの方向を見つめ、アスカが治るのを祈った。
そして二時間目、アスカに言われたとおりしっかりと授業を受けていた、だが・・・・
プルルルル!!プルルルル!!
携帯の着信音がけたたましくなった。非常用である。シンジは驚きつつも迷惑にならないように廊下に出てスイッチを押す。
授業中に非常用の電話、使徒だと予感させた。
「はい、シンジです」
電話の相手はミサトだと思った。だが・・・・
「シンジ君、シンジ君。助けて!」
「アスカ!どうしたの?」
電話の主はアスカ、何かに脅えているようであった。
「た、助けて、ミサトさんがっ!」
「ミサトさんがどうかしたの?」
震えている。シンジは耳に携帯を押しつけて聞き取る。
「早く来て〜」
「今どこに?」
「家よ。早く!」
「わ、わかったよ」
教師に非常事態と告げると、何も持たずに走った。
ダッダッダッダ!
はあはあはあ
アスカの脅え方から最悪の状況が頭に浮かんでくる。
(ミサトさんに、何が?・・・まさかテロ)
マンションを取り囲む武装集団、そしてリビングではミサトが負傷しながら・・・アスカは押入れに隠れて震えていた・・・・通信機能は遮断されたが唯一シンジへの携帯が生きていた。
(何が起こったんだ?)
ダッダッダッダ!
走った。マンションに着いたが辺りに気配はない。見回しながらエレベ〜タに乗りこむ。
「アスカ!」
息を切らせて玄関を開けた。
「シンジ君、助けて〜」
声を聞いたアスカがパジャマ姿で抱きついた。普通なら照れるところだが、今はそれどころではない、切羽詰っている。
「どうしたの!ミサトさんは?」
「ミサトさんが!ミサトさんが〜」
事情を聞き出そうとするが『ミサトさんが〜』を連発、ますます不安がよぎる。だが・・・
「アスカ、病人は静かにしてなさい。あらシンちゃん。幸せね〜」
ひょっこりと台所からミサトが出てきた。シンジは目を丸くしてポカンと口を開けて見た。
「えっ?ミサトさん。テロじゃ・・・」
訳のわからないシンジに頭に?を浮かべた。
「テロ?何言ってるの?それより、いつまでそうしているの?お姉さん目のやり場に困るわ」
本当は困っていなくて、ニヤニヤして二人を眺める。
「えっ!あ、ああ!アスカ、ちょちょっと」
真っ赤になりながらシンジは離れた。三人は話しを整理する為にリビングに向かった。
「急にアスカから電話が掛かってきて、ミサトさんが大変だから走ってきたんですよ。でも無事だしどうなっているんですか?」
「へ?私はピンピンしてるわよ。アスカどういう事」
二人はアスカを見た。アスカは俯きながら小さな声で話し始めた。
「そ、そのミサトさんが・・・おかゆを作るって言って、聞かないから・・・・私危険を感じて、シンジ君に電話をしたの・・・」
シンジは納得したが、ミサトは納得ができない。
「はあ?どうしてよ。私がおかゆを食べちゃったから、作ってやろうとしたのにどうしてシンジ君に電話する必要があるの」
(アスカの判断は正しいな)
黙ってうなずいた。
「だって・・・・・」
アスカは指をモジモジして言いにくそうだが、シンジは言わんとしている事がわかる。
「何よ?」
「その・・・・」
今のアスカでは言えないだろう。シンジは話しの方向を変える為に発言した。
「ミサトさんはどうして今いるんですか?今日はネルフでしょう」
「ああ、それね。アスカが起こしてくれなから寝坊しちゃったのよね。時間見たら遅刻、リツコの小言が待っているから、急いで行ってもしょうがないからね。昼から出ようかなって思ったのよ」
「「・・・・」」
平然と言ってのける保護者に二人は呆れて何も言えなかった。
「朝ご飯作ってないから、探したらおかゆがあるでしょ美味しかったわ〜。でもそれはアスカのだったから悪いと思って私が作ろうとしたら止めるのよね」
「は、はあ」
シンジは想像した。ミサトのおかゆを・・・・・
「おかゆは僕が作りますから、ミサトさんは行ってください」
「え〜、今から行ってもねえ」
「早くしてください!ビ〜ル抜きにしますよ」
「そ、それは困るわ。行ってきま〜す」
ミサトは速攻で出ていった。
「もうミサトさんは・・・」
「シンジ君、ごめんなさい。勉強中なのに電話しちゃって・・・」
アスカはパジャマの袖を掴みながら謝った。
「いいよ。アスカの判断は正しいよ。おかゆを作るから寝ていて」
「ううん。ミサトさんのおかゆって聞いた時、食べたくないから治ちゃった」
「え、でも」
「大丈夫、ほら」
腕をブンブン回し元気をアピ〜ル、シンジはアスカの額に手をあてた。
「あっ・・・・・」
ぽっと頬を染める。
「うん、熱は下がったみたいだね。でも油断したらダメだよ。今日一日は寝た方がいいよ」
「うん!」
シンジの優しいほほ笑みと言葉に、アスカはニッコリとして従った。
その後シンジはおかゆを作り学校に戻った。ミサトは・・・・
「減俸、三ヶ月」
ゲンドウに言われ泣き、罰としてビ〜ル抜きとなりまた泣いたのであった。
「ううう・・・しくしくしく、私も風邪ひきた〜〜い」
寝込んでお見舞いはビ〜ルが欲しいらしい。
「ミサトさんのおかゆ・・・・想像したくないわ」
「そうだね。作りかけの見たけど、あれっておかゆって言わないよ」
「私ビックリしちゃった。イキナリ『おかゆつくってあげる』って言われて飛び起きたの」
「それは災難だったね」
「断ったけど、『遠慮しないで任せなさい』って言って取り合ってくれないの」
「ミサトさん、変なところで強情だから」
「このままじゃ、おかゆを食べる事になるから身の危険を感じて電話をしたのごめんなさい」
「いいよ。あやまらなくて、僕だってもしアスカの立場だったら電話したよ」
「良かった。シンジ君がまた作ってくれて、それでミサトさんのおかゆはどうしたの?」
「おかゆって呼べるものじゃないし、食べられそうにも無かったから捨てちゃった」
「その判断は正しいわね」
「うん。だって色からして違ってたし、焦げてたし・・・・もう言うのはやめよう。思い出したくないから」
「ミサトさんって料理憶えないのかな?」
「憶えても味覚が僕達と違うからね」
「そうね」
「アンタたち〜〜・・・いい度胸しているじゃない?」
「・・・」
「・・・」
「まだ私の料理の素晴らしさを知らないのね。今日はとことん食べてもらうわよ」
「え、遠慮します。ア、アスカもう時間だから行こう」
「う、うん」
「あ、こら待ちなさい〜〜」
ミサトさんのおかゆ・・・危険なのでシンジ君が緊急で呼ばれました。当然かな。
ちょっとLASとして弱いかな。ミサトさんがオチになっています。
タイトルなんですがなかなか浮かばなくて、ちょくちょくかえてこうなりました。
こんな連載小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。
Vol.17 風邪 Vol.19 Send Me An Angel
EVA CHANGING Vol.18 おかゆの価値は