EVA CHANGING
Vol.21
赤くなるアスカちゃん、ニヤリなミサトさん
「フンフンフ〜〜ン♪〜〜♪♪〜」
アスカは楽しそうに鼻歌を歌いながら、家の掃除をしていた。以前なら絶対にする事は無かった掃除、自分の部屋だけはしていたであろうが今はシンジを押しのけて家中の掃除をおこなうようになっていた。
「フンフンフ〜〜ン♪〜〜♪♪〜」
掃除は今やアスカの独壇場となった台所から始まり、リビング、それぞれの部屋と綺麗にしていく。
台所
調理器具、調味料などシンジが使用していた時よりその数は倍に増えていた。流石に女の城と言うべき台所、丁寧に丁寧に掃除をしていく。
「毎日使うから、綺麗にしないとね〜」
ガチャ
次にペンペンの冷蔵庫を開けた。ペンペンが中で気持ち良さそうに熟睡している。
「ペンペン、ちょっとゴメンネ、お掃除するから」
「・・・・クエッ」
ペンペンは声に半分開いた眼をこすりながら頷いた。そして愛用のマクラを抱えてリビングに向かった。
「んしょんしょ!」
冷蔵庫の中は抜けた羽で汚れていた。掃除機で羽を吸い取ると雑巾で丁寧に床、側面を拭いていく。
「うん、綺麗になった♪」
ピカピカになったペンペンの冷蔵庫、満足すると掃除機を持ってリビングに向かった。
リビングではマクラに座っているペンペンと昼間っから寝転んで、テレビを見つつビールを飲んでいるミサトがいた。
「ミサトさん、ペンペン。お掃除しますから移動してください」
「クエッ!」
ペンペンは返事をすると枕を持って再び冷蔵庫に戻って行ったがミサトは。
「面倒くさいからや〜〜〜、私をのけて掃除をしてねん♪」
とだらけていた。
アスカは頬を膨らませて『もうっ!昼間っからゴロゴロして』と呟いた。なお『そんな事じゃお嫁に行けませんよ』とは言わなかった。もし言ったら・・・・・どうなるかわからない。
「お掃除の邪魔ですからどいてください!」
「はいは〜〜〜い、これが終わってからね」
テレビを見ながら手をプラプラ、なお現在放送しているのはニュース番組、ミサトが真面目に見ているわけが無い。動きたくないのである。
「もうっ」
アスカもわかっていた。だらけたミサトは巨岩の様に動かない、だが掃除には邪魔になる。
「お掃除ができませんからどいてください」
「ほっほ〜〜い」
返事はするが動かない。アスカは諦めて掃除機をかけはじめた。
スースー
進化している掃除機、音は静かである。サッサッと手際よく掃除機をかけていく。無論、端の小さな埃も見逃さない。
スースー
リビングを端から掃除機をかけていった。そして最後は中央、テーブルとミサトがいる。
「ミサトさん!そこかけますから、どいてください」
「はいは〜〜い」
言いながら背中をボリボリと掻く。
「・・・・・」
退く気は無いようである。
「知りませんよ」
コツコツ
「イタ!イタタタタ」
アスカはミサトに向かって掃除機をかけはじめた。掃除機の先がミサトに当たって痛がる。
「ちょっとアスカ、やめてよ」
「どかないなら埃と一緒です。お掃除します」
コツコツ
「イタタタタッ!わかったわよ。もう」
ミサトは重い腰を上げると他に移動するのではなく、テーブルの上に寝そべった。
「いいわよ〜〜〜」
「・・・・はあ〜〜〜ミサトさん・・・・・」
ミサトとだらしない行動に呆れてため息をついた。だが移動したのでリビングの掃除は終える事ができた。
「次はお部屋ね」
最初はミサトの部屋、なぜ最初かというと一応家長なので一番に掃除をしていた。一応であるが。
「うっ・・・・凄い・・・・」
部屋の大惨事に驚いた。足の踏み場が無く雑誌や空き缶、脱ぎっぱなしの服や下着が散乱している。夢の島である。
「どうやったら1週間でこうなるのかしら?」
疑問に思った。約1週間を目安に掃除をしていたが、ミサトの部屋は綺麗にしても綺麗にしても毎回夢の島に逆戻りしているのである。
「まったく、またビールを隠れて飲んでいるわね」
ゴミ袋にカンや燃えるゴミを分けて入れていき、雑誌類は隅に積み重ねていく。
「脱いだら洗濯カゴに入れるように言っているのにだらしがないわね」
服を入り口に纏めていく。
「わっ凄い」
下着を手に取った、その過激さに顔を赤らめる。
「こ、これって大胆」
ブラを自分の胸に合わせるがサイズは当然ちがう。
「男の人ってこういうのが喜ぶのかな?・・・」
誰を想像しているのか耳まで赤い。
「はっ!いけないいけない、お掃除しないと」
プルプル顔を左右に振ると、真面目な顔つきで再び掃除を始める。すでに3分の2は終わったので後10分で終わるだろう。
「おっしまい」
手をパンパンとはたくと腰に手をやり、満足して部屋を見回した。夢の島が大草原に変わった。
「でも、また汚れるのよね」
ため息をつくとゴミ袋、洗濯物を持って部屋を出た。ゴミ袋は台所へ、洗濯物は洗濯機に持って行く。
「次はっと」
アスカの部屋である。別にシンジの部屋からでも良いのだがミサトの部屋から近いので順番である。
スースー
普段から綺麗にしているので掃除といっても簡単、掃除機をかけるだけである。他にする事は本棚に本を綺麗に並べるだけで済む。
「おっしまいっと♪」
「最後はっと」
シンジの部屋。几帳面なシンジ、多少散らかっているが同年代の男の子の部屋と比べると綺麗である。
「散らかっているわね」
アスカは部屋に入る時、いつもドキドキしていた。男の子の部屋という事もあるのだが、部屋を掃除できるかどうかであった。シンジの部屋はいつも綺麗、それだけに掃除時間は短い。多少散らかっていたら掃除時間は長くなりそれだけ部屋に居られるからである。
「頑張っちゃお!」
腕まくりの真似をして、床に散乱している漫画本をそろえ本棚になおす、グチャグチャになった布団をなおす。
「・・・・シンジ君の匂いがする ぽっ」
チョットだけシンジの匂いを頬を赤らめ堪能すると掃除機をかけはじめる。
スースー
「?何かしら」
ベッドの下に掃除機を入れたが奥のほうに届かない。何かに当たっているようだ。手を伸ばしその当たっているものを掴む。
「雑誌?」
触った感触で雑誌だとわかった。そして取り出すと表紙を見る。
「!!きゃ・・・・・きゃああああああああああああああああああああああ」
甲高い叫び声が家を揺るがした。当然その声に『何事か?』とミサトとペンペンがやって来た。
「アスカ!どうしたの?」
「クエクエ?」
アスカは床に座り顔を両手で隠していた、耳が赤い。ミサトの問いかけに壁に投げつけた雑誌を震えながら指差した。
「そ、それ・・・・」
「ん?これ・・・・あら〜〜シンちゃんもこんな雑誌を見るようになったのね。おわっ過激〜」
ミサトは雑誌を手に取るとパラパラと捲り中身を確認した。
「うわっ!うほっ!うはあ〜〜!最近の雑誌ってこんなのを載せているのね。ペンペンほら」
鼻息を荒くしてペンペンに見せるが
「クワ?」
別に興味は無いらしい。やはりペンギンの雑誌が良いのだろう。
「ほらアスカ、これ見てよ。うっほっほほ〜〜いって感じよ」
「み、見たくありません!早く捨ててください」
まだ両手で顔を隠している。頭の中は表紙のインパクトでまだいっぱいであった。
「まだまだ純ねアスカは。でも捨てちゃまずいでしょ、シンちゃん悲しむわよ」
「良いんです!シンジ君がこんなにエッチだったなんて・・・」
「う〜〜〜ん、それは違うわよ。シンジ君に限らず、年頃になった男の子は興味を持つのよ」
「で、でも〜」
ようやく両手を顔から離すと俯いた。
「それに興味を持たなかったらそれは異常よ」
「異常?」
「ええ、女性には興味を持たない。そしたらアスカにもね」
「そ、それは困ります」
カッと立ちあがるアスカ、いつもならここでからかいが入るのだがミサトはおこなわなかった。
「でしょう。だからシンジ君を嫌いになったらダメよ」
「・・・・はい」
「じゃあもとの場所に戻しておきましょうか」
「はい、ベッドの下のありました」
「ふ〜〜ん、ベッドの下ね」
ミサトはベッドの下を覗きこみ、雑誌を入れない。机の上に置いた。アスカは当然不思議に思った。
「ミサトさん、ベッドの下じゃないんですか。どうして机に?」
するとミサトはニヤリと口を歪ませた。
「これはね、伝統なのよ。しいて言えば日本のしきたりよ。憲法にも記してあるの」
ウソである。
「そうなんですか」
「そうよ。シンジ君が帰ってきたら部屋に戻っていなさい。後は上手くやるから、それとアスカはこの事は知らない事にしておくのよ」
「えっ?どうしてですか」
ここでまたニヤリと口が歪んだ。
「そりゃあ、シンちゃんだってアスカが知っていると知ったら恥ずかしいでしょ。アスカの顔を見るたびにまっかっかになるわよ」
「は、はい」
その後、シンジが帰宅した。当然着替える為に部屋に戻る。アスカは言われたとおり部屋におり、ミサトはリビングでシンジを見てニヤニヤしていた。
「ミサトさん。ただいま〜」
「おっかえり〜〜」
そしてシンジが部屋に入って
「なっ!!!」
叫び声が聞こえた。ミサトは腰を上げると部屋に向かう。
ガラッ!
襖に寄りかかるとニヤニヤしてシンジを見つめる。
「シンちゃ〜〜ん、それは何かな?」
「な、何でも無いです!」
ミサトの登場に慌てて雑誌を後に隠すが遅い。
「隠さなくてもいいわよ。さっき全部見たから、でも最近の雑誌ってもうウハウハね」
「ど、どうしてミサトさんが知っているんですか!?」
「まあちょっと姉らしく、掃除をしていたら見つけちゃったのよ。まさにお宝を見つけたって感じね」
ミサトのまるで蛇が獲物を飲み込むような口調でニヤニヤ、シンジは瀧の様に汗が流れる。
「まあ、男の子だから興味を持つのはわかるわよ。でもこの過激さアスカに見つかるとどうなるかしら?」
「アスカ?知っているんですか」
「いいえ〜」
本当は知っているのだが、あえてウソを言う。姉としての優しさであろうか?
「ふう〜〜」
安堵のため息をつく。その瞬間ミサトは・・・
ニヤリ
「でもね〜〜、いつも喉を潤していないと何かの拍子で口に出そうなのよ〜〜」
喉を触るとニヤニヤするミサト、シンジは思った。
「なっ、ミサトさん、それって脅迫じゃないですか!」
「あらそう〜?ならいいわよ〜アスモグモグ」
「わっわっわ〜〜」
シンジは素早くミサトの口を封じた。
「わかりましたよ」
ガックリと肩を落とす。
(はあ〜また出費がかさむよ・・・・)
「さっすがシンちゃん」
意気揚々と出て行くミサト、それからビールの量は倍に増えたという。
一方アスカは・・・・
(シ、シンジ君を見るとどうしても思い出すわ・・・・・・でも知らない振りしないと)
見つけた日から数日間はシンジの顔をまともに見れずに顔を真赤にさせていた。
「毎日気がね無く飲めるなんて幸せ〜〜〜。シンちゃ〜〜〜ん足りないわよ」
「ミサトさん〜〜〜飲み過ぎですよ〜〜〜」
「あら〜〜?良いの?そんな事言って、あら喉から何か出そう・・アス・・モグモグ」
「わ、わかりましたよ〜」
「悪いわね♪」
「本当に悪いです」
「なんかいった〜〜?」
「な、何でも無いです・・・トホホ」
「ミサトさん!何やっているんですか」
「ア、アスカ」
「何って飲んでんのよ〜〜アスカも飲む?」
「いりません!何が上手くやるからですか!シンジ君を脅しているじゃないですか」
「えっ?アスカ、もしかして・・・」
「はい・・・・知っていました」
「えっ!ええっ〜〜!」
「で、でもこんな事でシンジ君の事軽蔑しないから・・・」
「ご、ごめん」
「謝る必要はないから、それよりミサトさん!」
「な、何かしらアスカちゃん・・・」
「当分の間ビール抜きです」
「えっええええええええ!!!そ、それだけはご勘弁を〜〜〜」
「ダメです!」
「うええええ〜〜ん。アスカちゃ〜〜〜〜ん」
「これは罰です!シンジ君行きましょう」
「うん、ミサトさん反省してくださいね」
「そんなビ〜〜〜〜ル〜〜〜〜〜〜〜(TT)」
純情なアスカちゃん、そしてミサトさんはネタにシンジ君を脅迫、本当に保護者なんでしょうか?
シンジ君は雑誌をどうやって手に入れたのでしょうか?多分ケンスケあたりですね。
こんな連載小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。
EVA CHANGING Vol.21 赤くなるアスカちゃん、ニヤリなミサトさん