EVA CHANGING
Vol.22
雛祭り
「シンジ君ほら見て、可愛いでしょう」
「本当だね。どうしたの?」
アスカは紙製の人形をシンジに見せた。
「ふふ、今日は雛祭りでしょ。お手製なの」
色々な模様の和紙で着飾られた雛人形、丁寧に作られており和紙独特の柔らかみが人形の暖かみを出している。
「そうかあ〜今日は雛祭りだったね」
カレンダーを見て確認するが女の子の日なので、別に何とも思っていない。
「あっ、今な〜んだって思ったでしょう」
「い、いや・・そんな事ないよ」
「うそ〜〜?」
ジト目で見られるシンジ、確かに思っていた。背中に汗がツツーと流れ落ちる。
「ほ、本当だよ。ひ、雛祭りは女の子の大事な行事だよ」
「本当?」
「ほ、本当だよ・・・」
「じゃあそういう事にしてあげる」
アスカはニッコリ笑うと雛人形をテーブルに飾った。シンジは『ふううう』と安堵のため息をついた。
「たっだいま〜〜」
玄関からミサトの大声、ご帰宅である。
「お帰りなさいミサトさん、あれ綾波?どうしたの」
ミサトの後にはレイがいた。
「私が呼んだの」
「アスカが?」
「うん、雛祭りだからね。さあレイさん座って」
アスカは皆の分の座布団を並べ、台所に向かった。シンジ達は何もする事が無く座る。
「はい、お待たせ〜」
数分してお盆を持って台所から戻ってきた。並べられたのは雛あられや甘酒、お菓子類である。
(いつの間に用意していたんだろう?)
最近は台所に入らないシンジは膨大な量に驚いた。
「わお〜美味しそう。ビ〜ルはと」
「ミサトさん、ビ〜ルはダメです甘酒ですよ」
「え〜〜?いいじゃないの雛祭りでしょ」
「雛祭りだからです。ミサトさんも女の子でしょう。今は我慢してください」
「・・・・とほほ」
立ちあがろうとしたミサトの腕を掴むとコップに甘酒とついだ。ミサトは涙を流しながら『今日は男になりたい』と思った。
(ぢくじょ〜〜〜飲んでやる!!)
心で叫んで、甘酒をがぶ飲みするがアルコール度は低く、甘いので酔えない。
(ぢくじょ〜〜〜食べてやる!!)
心で叫んで、お菓子を吸いこむように食べるが、何かむなしい。
「・・・・・」
「?レイさん、飲まないの」
レイはコップにつがれた甘酒をジッと見つめていた。
「これは何?牛乳」
「甘酒と言ってね。お酒なんだけど甘いから子供でも飲めるのよ」
「・・・・そう」
ジックリ観察してコップを手に取る。そして匂いを嗅いだ。
くんくん
「・・・・甘い香り・・・・美味しそう」
ごくごく
「どう?美味しいでしょう」
ごくごく
「ぷはあ〜」
一気に飲み干しコップをテーブルに勢いよく置いた。そして・・・・
バタンッ!
倒れた。
「きゃあああ!レイさん」
「綾波、大丈夫?!」
「天井が回っているわ・・・・・ほえええ〜」
レイの白い顔が真っ赤に染まっている。酔ったようである。
「ア、アスカ!どうしよう」
「お、落ちついてまずは・・・どうしましょう?」
パニックになる二人。
「ほわああ〜・・・碇クンが沢山・・・アスカも沢山いる〜〜」
「まったくしょうがないわね。レイこれを飲みなさい」
二人の慌てふためきにミサトは冷静であった。台所から何かを持ってきてレイに飲ませた。
「流石ミサトさん、水を飲ませればよかったんですね」
ゴクゴク
「違うわよ」
「え?」
飲み干したレイの顔が先ほど以上に熟れた林檎のように染まった。
「ほわわわわ〜〜〜〜床が揺れているの〜〜〜」
「ミ、ミサトさん何を飲ませたんですか!」
「何ってお酒よん」
「「お、お酒えええ?!」」
二人は驚いた。コップに入っていたのは透明の液体、水と思ったからである。
「どうして酔っているのにお酒を飲ませるんですか!」
「いやあねアスカ知らないの?酔った時には迎え酒が効くのよ」
「ミサトさん・・・」
呆れるアスカ。
「うぷぷ・・・気持ち悪い・・・」
「あ、綾波、ここで戻したらダメだよ」
顔が真っ青になって口を押さえるレイ。
「シンジ君、レイさんをトイレに」
「うん」
二人はレイを抱えてトイレに向かう。
「う〜〜ん、酒に飲まれるなんてまだまだね」
ミサトはその様子を見ながら雛あられを全て食べるのであった。
「甘酒なんて甘くて飲めないわ、薄めちゃいましょう」
「ミサトさん、薄めたら美味しくないですよ」
「大丈夫、大人の味になるから」
「?って泡が出ているじゃないですか!ビ〜ルですね」
「違うわよ〜炭酸水よ」
「本当ですか?わっこの匂いは、ミサトさん!」
「これぞ新発明、甘ビ〜ルよん」
「・・・・・はあ〜」
「ごくごく・・・まあまあね。アスカもいる?」
「いりません。もう、せっかくの雛祭りが台無しになっちゃった」
「良いじゃない、こんな日はドンちゃん騒ぎが一番良いのよ」
「ミサトさんは毎日がドンちゃん騒ぎですけどね」
「ぐっ・・・な、なかなか言うじゃないの。アスカは静かな方が良かったの?」
「静かじゃなくても良いですけど、普通に楽しくしたかったです」
「ほうほう、アスカがお雛様でシンちゃんがお内裏様が良かったのね。二人並んでグフグフッってね〜うんうんわかるわよ」
「な、何を言うんですか、違いますよ!」
「否定しない否定しない、グフグフフフフ」
「ミサトさん、その笑いやめてください!」
「グフグフフ、シンちゃんとアスカの雛祭り・・・グフグフフフフ」
「もう!知らない!」
楽しい?雛祭りでしたね(笑)レイちゃん、お酒に弱かったんだね。相変わらずなミサトさん、普通の雛祭りになりませんでした。
こんな連載小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。
Vol.21 赤くなるアスカちゃん、ニヤリなミサトさん Vol.23 今日は…
EVA CHANGING Vol.22 雛祭り