EVA CHANGING
Vol.26
一大事
「♪♪〜〜♪〜〜」
休日の少し遅い朝、葛城家は静かである。休日に早く起きる者はいない、しかしアスカは昼過ぎまで寝ている同居人の為にご飯を作るために平日より遅いが起きる。
「♪♪〜〜♪♪〜〜」
だがまだご飯は作らない、急いで作る必要が無いからである。リビングでゆっくりと新聞に眼を通し、知識を高めていく(TV欄を見るのに時間を費やすが)
「今日は面白い番組は・・・・夜からね、後片付けを早くしましょう」
番組のチェックが終わり続いて広告のチェック。
「♪♪〜〜♪♪〜何か良いのは無いかしら・・・・!!こ、これは」
一枚の広告を見てアスカの動きが止まった。
「た、大変!すぐに行かないと!」
広告を握り締めるとミサトの部屋に駆け込んだ。
「ミサトさん!ミサトさん!起きてください」
「ZZZZ・・・うんがあ〜〜」
揺さぶるアスカ、だがミサトに起きる気配は無い。イビキと涎で爆睡している。
「ミサトさん!ミサトさん!大変なんです〜〜」
「ZZZZ・・・ぐがあ〜〜」
だが起きない、イビキが一層大きくなった。
「もう、起きてください」
パチパチパチパチ!
往復ピンタ、ミサトの顔が左右に揺れる。
「イタタタタタ、何するのよ〜?イタイじゃない」
ようやく眼を覚ましたが、まだ脳は起きていない。
「そんな事は関係ありません一大事なんです、早く車をだしてください」
「一大事・・・まさか!?」
完全に目覚めた、『一大事』の言葉で頭に悪い考えが流れる。
「そうなんです、シンジ君を起こしてきますから車をお願いします」
「わかったわ」
急いで着替えキーを取ると玄関に走る。アスカはシンジの部屋に向かった。
ガラッ!
「シンジ君!」
「ZZZZZZ…」
勢い良く襖を開けた、シンジはアスカの声に気づかずに気持ちよさそうに眠っている。
「シンジ君、シンジ君!大変なの起きて〜」
「ZZZ…アスカどうしたの?何が大変なの?」
起きたが半分眠っていて何が起きているのか把握できていない。
「とにかく大変なの、急いで着替えて」
ガバッ!
シンジを起こそうと毛布を引っ張った。
「あ!・・・・きゃ、きゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!」
アスカの甲高い叫び声が部屋に木霊した。
「シンジ君のエッチ!スケベ〜!信じられな〜い」
そうアスカは毛布を剥がした時にシンジの朝を見てしまったのだ。シンジは叫び真っ赤な顔を手で隠してイヤンイヤンするアスカを見て呟いた。
「勝手に見たくせに」
ぱっち〜〜〜ん!!
「うぎゃっ〜〜!!・・・」
「シンジ君が男の子だってわかっているけど、予告も無しに見せるなんてアタシにも心の準備が必要だし・・・その・・・あの、シンジ君のその・・」
照れ隠しなのかアスカは手で顔を覆ったままシンジにピンタ、ジャストミートで頬にヒットしシンジは飛んだ。
「だってシンジ君が悪いのよ、こんどからは言ってから起きてくださいね、そうしないとアタシ・・・その、だから、あの・・・シンジ君?」
真っ赤になって少しトリップ気味だったが、一通り喋ったら冷静になりシンジを見た。
「・・・・・」
シンジはうつ伏せに大の字になり沈黙していた。
「もう〜〜〜起きてって言っているのにまた寝るなんて〜起きて〜〜!」
寝ているのではなく気絶しているのだ、その事をアスカは気づいていない。
「シンジ君!シンジ君!」
揺するが返事が無い。
「もう!時間が無くなっちゃう、ペンペンちょっと来て〜〜〜」
「クエエ?」
呼ばれたペンペン、二人の姿を見てどうして呼ばれたかわからない。
「シンジ君が起きないの、時間が無いから下まで運んでちょうだいね」
「クエエ・・・」
アスカは両手を合わせるとペンペンにお願いをした。しかしペンペンはシンジを運ぼうとなると体格に差があり体力を使う。
「ご飯サ〜ビスするから、ね」
「クエエ!」
ウインクするアスカにドンと胸を叩き答えるペンペン、そしてシンジを担ぎ上げると素早く外に出た。
「二人とも早く乗って」
エンジンは温まっておりいつでも出られる、ペンペンとアスカはまだ眠っている、正確には気絶しているシンジを高部座席に寝かせた。
「ペンペン、留守番お願いね」
「クエクエ」
アスカに敬礼すると三人を見送った。
「さあて飛ばすわよ〜〜!」
ステアリングを握る手に力がこもる、行き先はネルフ通いなれた道、当然スピ〜ドメ〜タ〜は振り切れている。
「あっ、ミサトさん、そこを左!」
急にアスカが指示を出してきた、ミサトは慌ててステアリングを左に切る。
「アスカ、左ってこっちは違うんだけど・・・・」
「こっちで良いんです、もっと飛ばしてください」
「え?ええ!?」
耳を疑った、いつもなら逆の事言うのに今日は違う。
「ほ、本当に飛ばして良いの?」
「はい、お願いします」
キラ〜〜ン!
ミサトの眼が光った、飛ばして良い許しが出たのだからレ〜サ〜の血が燃える。
「OK〜〜!しっかり掴まっていないと舌を噛むわよ」
グオオオオオオン!!!
アクセルを踏み、エンジンが一気に爆音をあげる。
「いっけえ〜〜、私のアルピ〜ヌ・ルノ〜〜!」
タイヤ跡を残しつつ、車は走る。
「・・・・う、う〜〜〜ん。なんか五月蝿いなあ」
高部座席に気絶していたシンジは爆音に気づき起きた。
「あれ?ここはどこ?」
「おはようシンジ君、やっと起きたのね」
「ん?ああ、おはようアスカ。ここはどこ?」
「ここは車の中よ、ミサトさんの」
シンジの顔が真っ青になった。
「く、車あ?それもミサトさんの〜〜?う、う〜〜〜〜ん・・・・・・」
運転席のミサトを確認し外の流れる景色の異常な速さに眼を見開くと、そのまま夢の世界へ飛びだった。
「もうまた眠るなんて!シンジ君!シンジ君!起きて〜」
「アスカ、そっとしておきなさい。シンちゃん疲れているのよ」
「は、はい」
疲れていないと思うが・・・車は目的地に向かって走る・・・・
「シンジ君っていっつも寝ているのね、そんなに疲れているのかしら?」
「そりゃあ疲れているでしょうね、クククク」
「な、なんですかミサトさん、その不気味な笑いは」
「ん〜〜シンちゃんも男って事かな」
「?本当の事を言ってどうするんですか、シンジ君は女の子じゃないですよ」
「・・・・そういう意味で言ったんじゃないんだけど、まあしいて言うなら夜更かしよ」
「夜更かし〜?もう早く寝ないから遅刻するのに、漫画ばっかり読んでいるから」
「漫画ねえ〜ビジュアルかもよ」
「ビジュアル?」
「そっ!もうスッゴイビジュアル、クククク」
「凄いビジュアルって・・・・あっ!もしかして」
「そのもしかかもよ、私達が寝静まった頃に忍び足でリビングに来てTVのボリュ〜〜ムを最小にして・・・ここから先はお姉さんの口から言えないわあ〜」
「シ、シンジ君、不潔不潔よ〜〜〜〜!まさかあんな事やこんな事のビジュアルを!!不潔!」
「何一人で盛りあがっているのよ、私が言っているのは深夜のTV通販よ、見ちゃうとついつい夜更かししちゃうのよねえ〜、あの腹筋を鍛える道具、買おうかしら」
「えっ?通販?」
「そ、通販、もしかしてアスカ〜〜ヘンな事を考えていたでしょう〜〜」
「ち、違います!通販を考えていました」
「そう〜〜?それにしちゃあ顔が真っ赤よ」
「うっ・・・・違います〜〜〜〜」
「ふふふ、逃げちゃった、からかうのは止められないわ」
さあ何が一大事なのでしょうか?(冒頭でほとんどわかりますが^^;)
いつもならミサトさんの車に乗るのがイヤなアスカちゃんですが、何故か平気。よっぽど一大事なんでしょうね。
こんな連載小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。
EVA CHANGING Vol.26 一大事