EVA CHANGING

Vol.42

お弁当は・・・

・・・・・・・・はあ〜〜〜〜

 シンジが早引きしてからのアスカは上の空だった、授業は耳に入らずボンヤリとして頬杖をつき、ずっと外を眺めていた。

(アスカどうしたのかしら?)

 チラチラとアスカを盗み見るヒカリは先ほどの休憩時間でも同じ態度だったので心配に思う。

(碇君の事聞いても何も言わないし、碇君ちゃんと責任取ったのかしら?)

 休憩時間にアスカに屋上の事を聞いたが、表情が少し暗くなるだけで何も言わなかったのでわからない。

(碇君、早引きしちゃうし・・・もうっ全然スッキリしないわ。明日碇君に聞いてみないと)

 指の骨を誰にも聞かれないように鳴らし、委員長としての責任?を燃やすのであった。

 

 

(・・・・・・・)

 ヒカリと同じくアスカを盗み見ていたレイ。

(・・・・・もうダメなの?・・・すやすや、すやすや)

 そして再び眠りの世界へ。

 

 

 

 

 

 キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン

 午前の授業の終わりの合図、これから楽しい昼食の時間である。

メシィ〜〜!メシィ〜〜!

 ヒカリからお弁当を受け取ると叫びながらケンスケと一緒に教室を出て行く。行き先は屋上、天気が良い日は必ずそこで食べる。

「アスカ、食べましょう」

・・・・うん

 ヒカリが自分のお弁当を持ってやって来た、アスカはユックリと自分の鞄からお弁当を取り出すと机に置いた。

「碇君、お弁当食べれなかったね」

・・・・・うん

 鞄にはもう一つのお弁当が入っていたが、それを食べる者は教室には居ない。

「アスカ」

 そこへレイがやって来て手を差し出した。

 アスカはレイの行動がわからなかった。

「碇クンのお弁当、私が食べてあげるわ」

え、でも・・・

「食べ物を粗末にしてはいけないわ」

 そう言うが単に自分がお弁当を忘れただけだった。

これは、その・・・・

 アスカはお弁当を出すのを躊躇った。

「アスカ、どうしたの?碇君が居ないんじゃお弁当が勿体無いでしょ、綾波さんに食べてもらったら」

「そう、今日はアスカのお弁当を食べたいの」

 自分が忘れた事を言わないレイである。

う、うん・・・・はいレイさん

 鞄からお弁当を取り出すのを一瞬躊躇ったが、渡さなければいけない状態なので渋々渡した。

「ありがとう、感謝の言葉」

「綾波さん良かったわね、天気が良いから外で食べましょう」

 三人は屋上に向かった。

 

 

 

 

「おっイインチョ達も来たんか」

 先客にトウジとケンスケが居た。トウジはすでにヒカリのお弁当を食べてしまい、購買部で買ったパンを食べている。

「ええ」

 ヒカリ達はベンチに腰掛けると力作のお弁当を広げた。

・・・・ふう〜〜〜

 アスカはお弁当を広げると溜息をついた、いつも食べる者が居ないと寂しいものである。

 わくわく、わくわく

 そしてレイもシンジ用のお弁当を広げた。

「・・・・・・夢?」

 ふたを開けた瞬間目に飛び込んできたものが俄かに信じられなかった、目をこすりもう一度見てみる。

「・・・・・・ん?」

 また信じられなかった、今度はふたを閉めて数秒してまた開けた。

「・・・・・・日の丸」

 そう、レイが貰ったシンジ用のお弁当はご飯が敷き詰められ中央に真っ赤な梅干一個の日の丸弁当であった。

「アスカ、これ・・・嫌がらせなの?」

ご、ごめんなさい、実はそうなの

 アスカは何回も頭を下げて謝った。本当はお弁当を作らないと決めたのだが食べ盛りの中学生、昼食抜きでは可哀想であると思いオカズ抜きの日の丸弁当を作ったのである。

「綾波さん、仕方が無いわ。碇君が悪いんだから」

「しくしく、しくしく」

 折角昼食代が浮いたと思ったが、味気ないご飯だけだった。止めど無く涙が流れる。

レイさん、泣き止んで〜〜分けてあげるから

「しくしく、しくしく・・・・本当?」

ええ、だから涙を拭いて

「うん」

 ハンカチを受け取ると涙を拭き、鼻に持っていく。

あっレイさん!ちょっと待っ・・・

 ちゅい〜〜〜〜〜ん!!

「ぐすっはい、ありがとう」

 鼻をかんだ部分を内側に折りアスカに返すが半笑いだった。

レ、レイさんにあげるわ

「そう、ありがとう」

 ハンカチをしまうとお弁当を食べ始める。

 もぐもぐ、もぐもぐ

レイさん、卵焼きいる?

「ええ」

 お弁当箱を差し出され箸で刺して自分のお弁当箱に入れた。

 じ〜〜〜〜〜

 そして獲物を狙う眼でもう一つのお弁当を見つめる。

「委員長さん、そのウサギさん美味しそう」

 兎では無い、ウサギ型の林檎である。

「えっ?ウサギ?あ、あ〜あ林檎ね。はい」

「ありがとう」

 もぐもぐ、もぐもぐ

レイさん、美味しい?

「ええ」

 レイの食べっぷりに微笑むアスカ。

 もぐもぐ、もぐもぐ

「アスカ」

なあに?

 レイは食べるのを止めると箸を置いてアスカを見つめた。

「大丈夫だから」

えっ?

 もぐもぐ、もぐもぐ

 再び食べ始めるレイ、アスカは意味がわからずにキョトンとするのであった。

「・・・梅干、美味しい」


「レ〜〜イ、ちゃっかり食費を浮かしているわね」

「ちゃっかりではないの、全てシナリオ通り」

「凄いシナリオね」

「でも日の丸お弁当だったのは予想外だったわ」

「そうね、今朝アスカが作っているの見たんだけどパンパンパンってご飯をつめるだけで完成だから手軽よね。まさにお手軽愛妻弁当」

「愛妻弁当・・・それは私にある言葉、明日碇クンに作ってきましょう」

「私の分もお願いねん」

「・・・・・・・」

「ちょっと、なんで黙るのよ」

「・・・・すやすや、すやすや」

「こら、寝るな〜〜〜!」

「・・・寝不足だから」

「じゃあ早く寝なさい。それにしても作中で意味深な言葉を言っているわね〜〜『もうダメなの?』や『大丈夫だから』とか何か知っているの?」

「・・・知らない、ただ言ってみただけ」

「そ、そうなの。レイらしいわね」

「そういうシナリオなの」

「ふ〜ん、わけわかんないわ」

 今回はちょっとした閑話ですね。シンジ君が早引きした後の昼食風景です。

 アスカちゃん、怒っていてもお弁当をちゃんと作ってきていますね(日の丸だけど^^;)

 レイちゃん、ラッキ〜〜と思ったら日の丸、泣きたくなりますね(笑)

 こんな連載小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


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