EVA CHANGING

Vol.44

居ない生活

「うそじゃないわよ、シンちゃん出て行っちゃったわよ」

そんな・・・

 アスカは呆然としその場に立ち尽くした。

「さあ、突っ立ってないでご飯食べましょ」

 ミサトは冷蔵庫からビ〜ルを取るなり一気飲みし、ロ〜ルキャベツを頬張る。

出て行った・・・・

「アスカ、早く食べないと冷めちゃうわよ」

・・・・・

「アスカァ〜〜聞こえてる?」

 ドンッ!

 ミサトの声に気づくとテ〜ブルを両手で勢い良く叩いた。

ミサトさんっ!

「な、何よ」

どうして止めなかったんですか!?

「シンちゃん意思が強かったし喧嘩してたんでしょ〜ちょうど良かったじゃない」

け、喧嘩なんかしていません

「そう〜〜?私には喧嘩しているように見えたんだけど」

してません・・・・

 アスカは顔を伏せ小声で呟いた、今朝の情景が浮んでくる。

「ふ〜〜〜ん、まあ出て行ったものはしょうがないから食べましょ」

 ロ〜ルキャベツが次々に胃袋に収まって行く。

良く食べていられますね、アタシ探してきます!

 エプロンを脱ぐと玄関に行く為に振り向いた瞬間、さらなる衝撃がミサトの口から発せられた。

「無理だと思うわよ、もう第三新東京には居ないから」

えっ?

「ネルフも辞めちゃったのよ、だからシンちゃんはもう赤の他人になっちゃったの」

や、辞めるってそう簡単に辞められるわけないでしょ、うそを言わないでください!

 世界に極わずかしかいないチルドレン、辞める事は不可能に近い。

「うそじゃないわよ、司令も許可したんだから」

うそ・・・・

「うそじゃないって〜〜司令も新しいチルドレンを探すって言ってたわよ」

そ、そんな・・・・

 シンジがもう第三新東京に居ない事に呆然とした。

「さあ食べましょ、食べましょ。食べないんならシンちゃんの分も全部食べちゃうわよ〜?」

・・・・・・

 ガツガツと食べるミサトにアスカは何も言わずにトボトボと自室に戻るのであった。

「アスカ・・・ちとやりすぎたかしら」

 ミサトはビ〜ルを飲むと溜息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・

 ポムッ!

 自室に戻ると電灯も付けずにベッドに倒れこんだ。

どうして出て行っちゃったの?・・・・・・

 枕に顔を埋めると呟いた。

出て行く理由なんて無いのに・・・・

 枕の端をギュッ握り締めると肩が小刻みに震えて行く。

アタシがアタシが・・・・何も言わなかったから?・・・・

 学校の屋上での事が頭に浮んだ。

あの時シンジ君がさよならって言ったのは・・・・

 シンジが言った時はさほど気にしていなかったが、今になるとその言葉が重くのしかかる。

・・・バカ・・・アタシのバカ・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジリリリリリリ〜〜〜!!!

 朝、アスカの目覚ましがけたたましくなった。

ん・・・・・

 枕に顔を埋めたまま目覚ましを見ないで音を止める。

・・・・・・そのまま寝ちゃったんだ

 服装は昨日のままである、枕を見ると目元の所が濡れていた。

・・・顔洗ってこよう

 重い足取りで洗面所に向かう。

・・・・・ひどい顔

 鏡を見ると瞳は充血しており頬には涙の跡がついていた。

・・・・・

 水道を勢い良く出すと、何回も何回も顔を洗った。

まだ取れない・・・・

 涙の跡は取れたのだが充血は簡単に取れるものではない。

・・・・行きたくないなあ

 無論学校の事である。顔を拭くとボ〜と鏡を見つめリビングへ向かった。

・・・・・

 TVのスイッチを入れると焦点が合わない目でジッと番組を見た。

・・・・・

 何気に見てるTV、いつも時間は朝食を作っているので番組名はわからない。

・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・」

 ボ〜とTVを見て数10分が経った、何気にシンジの部屋の閉められた襖を見た。

「・・・・・」

 いつもならこの時間に襖が開いて寝ぼけたシンジが出てくるであったが今日は襖が開かなかった。

・・・・居ないんだ

 数分見つめるが襖は開かなかった。

・・・・シンジ君

 体育座りをすると両膝に顔を埋めた、TVの音が虚しくリビングに響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガラッ!

 アスカが起きてから数時間後、もう一つの襖が勢い良く開いた。

どえ〜〜遅刻遅刻!初日じゃないけど、かなりやばいって感じ〜〜リツコに改造されちゃうぅ〜

 ズルッ!ゴンッ!

ぐえっ!

 勢い余って足が滑りこけて後頭部を床に強打した。

「いたたたたた・・・・もう、アスカったらどうして起こしてくれなかったのかしら」

 普通は保護者が起こすものであるが、葛城家ではその常識が通用しない。

「ん、TV?」

 ミサトの耳に何か喋っている音が聞こえた、発生の元のリビングへ向かう。そこには体育座りをしTVを見ているアスカが居た。

「アスカ〜〜何やってんの〜?学校は」

・・・・・ごめんなさい、行きたくないんです

「そう・・・」

 TVを見たまま呟いた、ミサトも小さく答える。

「行きたくないなら強制しないけど、お腹空いちゃったご飯ある〜〜?」

・・・・作ってません

「はうっ!」

 お腹を押さえうな垂れるミサト、空腹で鳴っている。

「じゃあ、何か作ってくれない?お腹空いたままじゃあ仕事に行けないわ」

「昨日のご飯が残っているんじゃないんですか?」

「あっそうね〜まだロ〜ルキャベツが残っていたわ。流石にシンちゃんの分は食べきれなかったわ」

 『シンジ』の名が出るとアスカは肩をビクッ震わせた。

「アスカ・・・・・・」

ご、ご飯作りますから

 アスカは急いで立ち上がるとミサトの横を通り抜け台所に向かおうとした。

「アスカ、シンちゃんに会いたいんでしょ」

・・・・・・・・

 ミサトの横を通りすぎようとしたアスカの足が止まった。


「碇クン居ないのね」

「そうよ、どっかに行っちゃった」

「どこに?」

「私にもわかんないわ」

「・・・・探しに行かないと」

「どこ探しに行くの?」

「碇クンと私は以心伝心だからすぐにわかるの・・・ぽっ」

「はいはい、そうですか、ごちそうさま」

「ごちそうさまだなんて葛城三佐、えっち」

「アンタの妄想には負けるわよ」

「妄想じゃないわ、これから起こる事なの・・・ぽっ」

「はいはい、頑張りなさいよ」

「言われなくてもわかっています、ばあさんは用済み」

「あんっ!なんか言った?」

「い、いいえ。空耳です」

「そう〜?聞き間違いじゃなかったら、このゴットフィンガ〜が首を握りつぶすわよ」

「は、はい」

 アスカちゃん、シンジ君がネルフも辞め第三新東京を出て行った事を知りました。そうとうショックが大きかったようですね。何もする気力がありません。

 こんな連載小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


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