EVA CHANGING

Vol.48

再会

 玄関の音に気が付いたアスカ、耳を澄まして聞いてみる。

 カサカサ

やっぱり聞こえる・・・!

 頭にある人物の顔が思い浮かんだ。

シンジ君!

 玄関に誰か居るとしたらシンジしか思いつかない。

シンジ君だ、シンジ君が帰ってきたんだ!

 急いで玄関に向かう。

シンジ君!・・・

「こんばんは」

レイさん・・・

 期待虚しく玄関に居たのはレイであった。

「どうしたのアスカ?元気無いわね」

べ、別に元気はあります・・・それよりどうしたんですか?

「ご飯」

え?

「お腹空いたからご飯食べに来たの」

ご飯食べにって・・・・どういう事?

 レイは上がるとスタスタとリビングへ向かっていった、後姿を見ながら唖然とするアスカ。

 

 

 

「アスカ、ご飯まだなの?」

は、はい今作りますから

 訳が分からないまま言われるままに夕食を作り始める。

「・・・葛城三佐」

 アスカが台所に向かったのを確認するとまだ寝ているミサトを小声で起こしにかかった。

「う、う〜〜んもう飲めないわよ〜〜じゃんじゃん持ってきて〜〜〜」

「・・・えいっ」

 ボカッ!

 起きないミサトにレイはTVの上に飾ってあった花瓶で頭を殴った。

いたたたたたたたたたたたたっ!

 痛さで部屋中を転がりまわる、レイの手に持ってある花瓶はわずかにヒビが入っていた。

ミサトさん、どうしたんですか?

 当然大声は夕食を作っているアスカにも聞こえ、何事かとやって来た。

「何でもないわ、起こしただけだから料理を続けて」

は、はい・・・物凄い起こし方をしますね

「絆だから」

?・・・嬉しくない絆ですね

 レイの過激な起こし方に冷や汗を流すと台所に戻って行った。

「レイ〜〜何をするのよ!死んじゃうじゃないのよ〜」

 痛みが引いてきたがまだヒリヒリして痛い。叩かれた個所をさするとわずかにこぶができていた。

「おはようございます、実は・・・ごにょごにょごにょ」

 重要な話だろうか、辺りを気にしながらミサトの耳元で外に漏れないように小声で話し始めた。ミサトも真剣な顔をして一字一句聞き漏らさずに集中して聞いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ご飯できましたよ〜

「ご飯ご飯〜〜♪」

「ご飯・・・それはとてもとても美味しいものなの」

 アスカの声に釣られお腹を空かした二人は台所にやって来た。

「いっただきま〜〜す」

「いただくの」

 テ〜ブルにはレイも食べられるようにシ〜フ〜ドカレ〜、鍋にはもう一人の同居人の為であろうか沢山のル〜が残っていた。

「パクパクパクパク、おいし〜〜〜♪、流石アスカのカレ〜ね。でもあたしのカレ〜の方が美味しいけどね」

「・・・笑いを取るのにはオイシイカレ〜、でも食べたくない」

「あ〜〜?レ〜イどういう意味よ」

「わからないわ、私死にたくないから」

「どうしてカレ〜を食べて死ぬのよ」

・・・ミサトさん

 アスカは思った『自覚は無いのかしら?』と思っても当然口に出して言えない。

「まあ良いわ、今度私の超おいしいカレ〜をごちそうしてあげるわよん」

「・・・・・もぐもぐ、アスカおかわり」

あっはい

 ミサトを無視する。ここで食べる約束をしてしまえば、それは死への序曲である。

「ちょっと、どうして無視するのよ、アスカは食べてくれるわよね?」

えっ、あのその・・・アタシ・・・はいっレイさんカレ〜このくらいで良い?

「OK」

「むう〜〜アスカも無視するの?良いんだ良いんだもん、いじけてやる〜」

 体育座りをし床にのの字を書いていじけるミサト、齢(ピ〜〜)である。

レイさん、お茶いる?

「濃いのが良いわ」

 いじけてミサトの周りだけが暗い雰囲気に包まれているが、アスカとレイはそんな事はお構いなし食事を続けた。

はい、たっぷりと濃くしましたよ

「ずずず〜〜。この苦いのが良いの」

へえ〜〜若いのに苦いのが良いなんて珍しいですね

「この苦さが羊羹に良く合うの」

へえ〜〜レイさんって渋いのね

「美食家なの」

 若い者同士会話が弾む、一方ミサトは。

「私は私は・・・要らない美少女なんだわ・・・美少女はいつの時代も不幸なのね」

 自分の世界に入り酔っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさま」

はい、おそまつさまでした

「それじゃあ、帰るわ」

 レイは時計を見ると立ち上がった。

えっ帰るの?泊まっていけば良いのに

「家が恋しいから帰るの」

そ、そう

 意味がわからないアスカであった。

「葛城三佐、送ってください」

「私は私は美少女ミサトちゃん・・・」

 まだ自分の世界をさ迷っている。

「・・・えいっ」

 ボカッ!

 再び花瓶でミサトの頭をヒット。

ぬおおおおおおおおおおおっ!

 痛さで部屋中を転がりまわる、ヒビが入っていた花瓶は完全に砕け花瓶の役目を終えた。

レイさん、過激・・・

「レイッ!何すんのよ、脳みそが砕けちゃうでしょうが!」

「お家に送ってください」

「お家〜?あ、ああそうね。送ってあげるわよ、イタタタタ」

 ヒリヒリする頭をさすりながらキ〜を取りに自室に戻った。

「アスカ」

はい?

「カレ〜明日食べたいからタッパ〜につめて」

 一日置いたカレ〜が美味しい事を知っている。そして朝は早起きして作りたく無い。

あ、はいわかりました

 タッパ〜を戸棚から取り出すとつめていく。

「レイ〜お待たせ〜〜」

 キ〜を指で回しながら戻ってきた。

はい、いっぱい食べてくださいね

「ありがとう」

 タッパ〜を受け取ると二人は玄関に向かう。

ミサトさん、安全運転してくださいね

「む〜失礼しちゃうわね、私はいつも安全運転よ」

 ミサトにとっては安全運転だが、他の者にとっては地獄の運転である。

「んじゃ、行ってくるわね」

「お邪魔様でした」

 二人は玄関を出、駐車場に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふう〜〜

 二人を見送った後台所に戻り席に座ると溜息をついた。

連絡まだかな・・・

 頬杖をついてボ〜とシンジの席を眺めた。

シンジ君・・・

 焦点が合わない瞳でボンヤリとシンジの席を眺めていると、そこにシンジが座って美味しくご飯を食べている映像が浮んでくる。

・・・

・・・

・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カチャッ

 席をボンヤリと見つづけて数十分、玄関の開く音が聞こえた。

ミサトさん、帰ってきたんだ

 普通レイの家まで往復するとまだ時間が掛かるのだが、スピ〜ド狂のミサトの運転は常識が通用しない。

ミサトさん、お帰りな・・・

 出迎えに玄関に向かったアスカ、そこにいた人物に言葉が一瞬つまった。

「た、ただいま・・・」

 歯切れが悪そうに頭をかいて帰宅するシンジであった。

・・・

「あ、その・・・アスカ・・・」

・・・

 なんとか喋ろうとするシンジであるがなかなか言葉が出てこない。アスカは俯いて黙っていた、ギュッと真一文字に結んだ唇が震えている。

・・・う、うう、うう・・うわ〜〜〜〜〜ん、シンジ君〜〜!

「アスカッ」

 アスカはシンジに抱きつくと大声で泣き始めた。

ごめんなさい、ごめんなさい。屋上で何も言えなくて・・・アタシ、シンジ君が出て行った事を聞いて死ぬほど後悔したの。うう、ひっく・・・ぐすっ

「僕の方こそごめん・・・」

シンジ君は悪くない、許さなかったアタシが悪いの・・・

 止めど無く流れる涙、赤くなった眼でシンジを見るが涙で滲んで良く見れない。

「そんな事無いよ、悪いのは僕・・・こんな僕でも許してくれるの?」

うん、今の生活にシンジ君がいなくなるのはいやなの

「ありがとうアスカ、ほら涙を拭いていつまでも泣いていると可愛い顔が台無しだよ」

 シンジはポケットからハンカチを取り出すとアスカの頬に優しく触れ涙を拭いた。

ぐすっ・・・ありがとう

「アスカ・・・」

シンジ君・・・

 静まり返った玄関、互いに見詰め合う二人・・・・

「・・・」

・・・

「・・・」

・・・

 ぐううううぅぅ〜〜〜〜

 シンジのお腹が鳴った。

「お、お腹空いちゃったな。ご飯ある」

「くすくす、シンジ君ったら、カレ〜があるから沢山食べてね」

 お腹を押さえて真っ赤になるシンジ、アスカはにこやかに笑うとシンジの手を引っ張り台所に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ど〜してそこで!キスに行かないのよ〜〜!!

 シンジとアスカがちょっと良い雰囲気になった時間、葛城家の駐車場からちょっと離れた路上でミサトは車載用TVを見て叫んだ。

「涙を拭くのは良いけどキスはダメ」

 助手席にはレイが居た。

「まったく、純情なシンちゃんアスカちゃんなんだから、もうちょっと大胆になってほしいわね」

「純情で良いの・・・純情な碇クン・・・ぽっ」

「二人は元通り仲良くなったし、流石ミサトさんね、すべでシナリオ通り!」

 腕を組んで仰け反ると高らかに笑う。

「シナリオ・・・葛城三佐にしては良くできたわ」

「どういう意味よ〜?そういう事言うコは超特急で送っちゃうわよ」

 アクセルを踏みこむと急激にクラッチを繋げホイルスピン。

「うきゅ〜〜〜〜〜〜〜・・・」

 レイの全身にGがかかり、意識が別の世界へ。

「うんうん、シンちゃんが帰ってきて良かった〜〜、これでまた元通りの生活だわ」

 ミサトは明るい生活に戻れる事を考えると口元が緩んできてスピ〜ドを上げるのあった。


「碇クンが帰ってきた・・・碇クンが私の為に帰ってきた・・・ぽっ」

「違うわよ、どうしてレイの為に帰ってくるのよ。私の為でしょ」

「そうね、碇クンが帰ってこなかったら葛城三佐は責任を取ってクビだから・・・そうしたらマッチを売って生活するのね。マッチ売りのばあさん」

「誰がばあさんよ?しばくわよ」

「葛城三佐」

「しばく!」

「じょ、冗談なの」

「その眼は冗談には見えないわよ」

「葛城三佐の眼が冗談じゃないの」

「ふっふっふっふ、この際だからハッキリさせとくわね。私は美少女だって事を」

「美少女・・・それは私の為にある言葉。葛城三佐は酒徒がお似合い」

「なんですって〜〜?こら〜〜〜!」

「退散」

 シンジ君が帰ってきました(^^)アスカちゃん良かったね。

 そしてこのシナリオはミサトさんが立てた?嘘みたい(爆)

 こんな連載小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


Vol.47 果報は寝て待て Vol.49 日記より

EVA CHANGING Vol.48 再会