「・・・一睡もできなかった」

 まだ太陽が完全に昇っていない朝、シンジは布団を抱きしめ目をギラギラさせていた。

「誕生日・・・アスカに・・・」

 目線の先、机の上には昨日買ったアスカへの誕生日プレゼントが置いてある。

「ミサトさんに言われたけど・・・」

 昨日デパ〜トのレストランでミサトに言われた事が頭から離れない。

 

「アスカの事好きなんでしょ?」

「アスカ、可愛いもんね。告白しちゃいなさい」

「アスカもシンちゃんが大好き」

「アスカは待っているのよ」

 

 ドキドキドキドキドキ〜〜!

 アスカの事を思い浮かべるだけで鼓動が高鳴る。

「・・・僕はアスカが好きなのかな?・・・・好きだと・・・・思う・・・」

 本心はそうであろうが口に出して自問自答を繰り返す。

「プ、プレゼントをあげる時にこ、告白・・・」

 誕生日パ〜ティ〜は夜にアスカ、ミサト、シンジの三人で行う事になっている。プレゼントを渡す時にミサトはネルフに行ってくれると言っていた。

 

「頑張りなさいよ〜〜〜」

 

「よし!頑張るぞっ」 

 レストランでのミサトの応援がシンジに勇気をくれる。

「・・・でも、眠れないよ〜〜〜〜〜」

 碇シンジ、人生最大の勝負が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

EVA CHANGING

Vol.53

ASUKA

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「眠っていないのにどうして眠くないんだろう・・・?」

 ベッドの上でボ〜〜としながら頭をかきむしった。時計を見ると学校に行かなければならないので、そろそろ支度をしなくてはならない。

「起きよう・・・」

 ゆっくりと体を起こすと顔を洗うために洗面所に向かう。

 

 

 

ふんふんふんふ〜〜〜ん♪

 洗面所に行く途中、こっそりと台所を覗いてみるといつものようにアスカが楽しく鼻歌を歌いながら朝食を作っていた。

(台所に立つアスカ・・・可愛いなあ)

ん?あっシンジ君おはよう〜

 気配に気づいたアスカ、振り向くとそこには頬をちょっと赤らめたシンジの顔が見えた。

「あ、あああああアスカ、おおおおおおはようっ」

 突然で心臓が口から出そうになる。

もうすぐできるから顔洗ってきてね

「う、うううううううんんんんんん」

 朝の挨拶は毎日の日課であるが意識をしているのでなかなか言葉にできない、首を激しく縦に何回も振ると回れ右をして洗面所に向かう。

 ゴン!

いたたたたたたたたたたたたたたたたたたたた!

シンジ君っ大丈夫?

 柱に右足の小指をぶつけてしまった、飛びあがると苦痛でおもわず涙がにじみ出る。

「だ、大丈夫・・・か、顔を洗ってくるから・・・」

本当に大丈夫なの?

 右足の小指を上げているので上手く歩けないが洗面所に向かう、アスカはシンジの後姿を心配そうに見つめていた。

 

 

 

 バシャバシャバシャバシャッ!

 水を勢いよく出し顔を何回も何回も掌でこすりつけるように洗う。

「いつものことなのにどうして緊張するんだろう、大丈夫いつも通りにしていれば・・・よしっ!」

 頬を叩き気合を入れると台所へ乗り込む。

「シンちゃん、おっは〜〜〜〜」

 ミサトがすでに起きてきておりビ〜ルを空けてできあがっていた。

「ミサトさん、朝からのみすぎですよ」

「いいの〜〜いいの〜〜〜今日はめでたい日だからね」

 それはアスカの誕生日の事であろうか、それともシンジの・・・

全然めでたくありません、それ以上飲むと今夜のビ〜ルは抜きにしますよ

「う〜〜んアスカちゃんのいけずぅ〜〜、良いじゃない今日は誕生日だから無礼講という事でね」

無礼講は夜からです、それで終わりにしないとご飯も抜きですよ

「ええっ〜〜〜?、むうぅ我慢するしかないか」

 今飲んでいるビ〜ルはあとわずかしか残っていない、ミサトはそれをちびちびと心行くまで味わった。

はい、ミサトさん

「ん〜あんがと」

 絶妙の焼き具合の目玉焼きがミサトの前に出される。目玉焼きは光っておりシンジもこれほど極上の目玉焼きは作れないだろう。

はい、シンジ君

「あ、あああありがとう」

 微笑んで出された目玉焼き、微笑みに先ほどの気合は効き目がまったく無い。

「シンちゃんどうしたの〜〜〜?口が回ってないようだけど」

 訳を知っているミサトはニヤニヤしながらからかい始める。

「な、なななな何を言うんですか。まわまわまわ回っていますよ」

「本当〜?アスカ、シンちゃんちょっとヘンじゃない?」

いいえ、朝からビ〜ルを飲むミサトさんがよっぽどヘンですよ

「うわっちゃ〜〜〜アスカ、毒舌ぅ〜〜」

ふふ、ミサトさんほどじゃないです・・・・あっ・・・・・・・・・

 ガッシャ〜〜ン!!

 デザ〜トのイチゴをテ〜ブルに運ぼうとした時、ふいにアスカの焦点が合わなくなり崩れるように足元から倒れこみ、手から滑り落ちた皿が音を立ててこなごなに砕けた。

アスカッ!?

アスカどうしたの?

 突然の出来事、二人は驚いてアスカに駆け寄った。

「アスカッ!大丈夫?」

 シンジはアスカを抱え起こすと倒れないように肩に手を回し優しく支える。

い、いたい・・・あ、頭がいたいの・・・

 苦痛に歪む表情、頭を両手で押えると痛さを必死に我慢するが額から脂汗が流れおり、シンジにも如何に痛いかわかる。

「アスカ、どんな風に痛いの?」

あ、頭が締めつけられるような・・・割れるような・・・い、いたいっ

 ミサトは汗を拭いてやると、多少なりに医学に詳しいので症状を聞いて原因を探し出そうとする。

「ミサトさん、アスカはどうなんですか!?」

「病院に連れて行った方が良さそうね。電話をするからシンちゃんはアスカを車に運んでちょうだい」

 救急車を待つよりミサトの運転の方が速い。

「わかりました。アスカしっかりして病院に行くから大丈夫だよ」

いたい・・・いたい、いたいよ〜シンジ君、助けてシンジく・・・・・ん・・・・・・・

 頭痛の為に呼吸が苦しく激しい、シンジの手を握ると重力に逆らっていた首がガクンと力を失って垂れ下がった。

アスカッ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!

 シンジの絶叫が家中に響き渡った。


「ぬおっ?ラヴラヴな誕生日なのにいきなり急展開、アスカどうなるのかしら?」

「私の推測だとアスカは進化するわ」

「進化〜?どんなになるの」

「アスカからSAL、そうおSALさんになるの」

「ほほう〜おSALに、ってなるわけないでしょ」

「・・・嬉しい」

「何が嬉しいの?」

「つっこんでくれた」

「なっ・・・」

「でもこの展開、いや」

「どうして?」

「だって碇クンとアスカがもっとラヴラヴになりそうな予感・・・私が出てこないわ」

「ん〜〜それは我慢しないとね、ここの主役はアスカだから」

「それでもいや・・・巨大化しちゃおう」

「それだけはやめいっ!」

 アスカちゃんの誕生日、シンジ君の告白か〜〜?とおもいきや急展開、アスカちゃんどうなるの〜?

 誕生日なのにこんなSSじゃLASファンに怒られそう(^^;)

 こんな連載小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


Vol.52 COUNT DOWN 1 Vol.54 眠り姫

EVA CHANGING Vol.53 ASUKA