EVA CHANGING

Vol.54

眠り姫

「で、アスカの様態はどうなの?」

「これといった異常は無いわ」

 病院の一室、ミサトとリツコはアスカの検査結果について話し合っていた。

「そんなはずはないわ、アスカは頭が痛いって気絶したのよ。普通頭痛で気絶する?何かあるわ、脳に異常は無いの?」

「最高の設備で検査をしたのよ、ほんのわずかな異常があれば見つかるわ」

「でも・・・」

 ミサトは部屋に備え付けられているモニタ〜を見た。ベッドに呼吸器をつけ眠っているアスカ、その横でシンジがアスカの手を握っている。

「シンちゃん・・・」

 

 

 

 

「アスカ、目を覚ましてよ〜」

 シンジは眠っているアスカに何度も何度も問いかけたが返事は戻ってこない。

「うう・・・誕生日なのにどうしてこんな事に」

 頬から涙が落ち握っているアスカの手を濡らした。

「元気な声を聞かせてよ、アスカ」

 だがアスカは答えようとしない。

 

 

 

 

「リツコッ!お願いアスカをアスカを・・・」

 ミサトの瞳から一筋の涙が流れた、血が繋がっていなくても実の妹のようなアスカ、何が何でも救いたい。

「わかっているわミサト、他ならぬ親友の頼みアスカは私が絶対になんとかしてみせるわ」

「リツコ・・・・ありがとう」

 深くお辞儀をし続ける、それほどリツコを頼りにしている。

「ミサト、頭を上げて細かく調べるから少し時間がかかると思うわ。今日はシンジ君と帰って休むと良いわ」

 ミサト、シンジの顔には疲れの色が表れていた。

「わかったわ、甘えさせてもらうわ」

「ええ、良い結果を期待していて良いわよ」

 リツコは微笑むとミサトを勇気付けた。

 

 

 

 

「検査結果からは異常は発見されていない・・・」

 ミサトが去ったあとリツコは椅子に深く腰掛けると、タバコを吸いながら検査結果をもう一度見直していた。

「ここの設備で検査をして病状が発見される率は100%、それなのにアスカからは発見されていない。機器類に故障はない・・・ふう〜〜こんな事は初めてだわ」

 吸い終わった煙草をもみ消すと溜息をつき天上を見つめた。

「なんとかしてみせるって言ったけど難しいわね・・・」

 親友の顔が浮んでくる、モニタ〜に目をやるとミサトが部屋にやって来たところだった。

 

 

 

 

「シンちゃん・・・」

「ミサトさん、アスカのアスカの検査結果はどうなんですか?病気なんですか?」

「いいえ、検査結果に異常はでてないわ」

「じゃあどうしてアスカは起きてくれないんですか?」

「・・・ごめんなさい、わからないの」

 ミサトを首を横に振ると俯き唇を振るわせた。

「そ、そんな・・・」

「でも安心してリツコがなんとかしてくれるわ」

「リツコさんが?」

 ネルフ内部でMADの名で通っているが、いざという時は頼りになる。

「ええ、詳しく調べるから時間が掛かるみたいよ。今日はひとまず帰りましょう」

「アスカを残して帰れません!」

「でも休まないと体が持たないわよ」

 朝からずっとアスカに付きっきりのシンジ、顔には明らかに疲れの色が出ている。

「帰っている間にアスカが目覚めるかもしれませんから僕は居ます。ミサトさんは帰って休んでください」

「・・・そうわかったわ、それじゃあ着替えを持ってくるから」

「ありがとうございます、それと僕の机の上にあるプレゼントも持ってきてもらえませんか」

「プレゼント?」

「はい、アスカが目覚めたらすぐに渡したいんです」

「机の上ね、ふふお姫様は幸せね」

 ミサトはアスカを見ると微笑んだ。呼吸器を付けていなければ今にも目覚めそうである。

「今は眠り姫ですけど、すぐに元気なお姫様になりますよ」

「そうね、じゃあ取ってくるから」

「はい、お願いします」

 ミサトは着替えとプレゼントを取ってくる為に病室を出て行った。

 

 

 

 

「検査には発見されない異常・・・肉体的でないのかしら?精神的なもの」

 リツコは腕を組み目を閉じずっと思考を巡らせていた。

「機器に精神は調べられないから・・・直接見に行った方が良さそうね」

 すでにタバコは十本目、それをもみ消すと立ちあがり病室に向かった。

 

 

 

 

 コンコン

 病室に入る前、ノックは忘れない。

「はい、どうぞ」

「失礼するわね」

「リツコさん!何かわかりました?」

「いいえまだよ、機器で調べたけど異常は発見されなかったわ。だから直接調べてみるわ、悪いけどシンジ君は部屋から少しの間出ていてちょうだい」

「えっでも・・・」

 当然躊躇う、一時でもアスカのそばに居たい。

「気持ちはわかるけど往診するのよ。アスカの裸を見たい?」

「い、いえっ!で、出ておきます」

 往診する為にはパジャマを脱がす必要がある。シンジは真っ赤になるとすぐさま病室を出た。

「ふふ、純情ね。さあ異常は・・・って大体目星はついているんだけど、ヘッドセットを」

 往診とはまったくの嘘、ヘッドセットを調べているのを見られたら怪しまれてしまう。ヘッドセットを取り外すとカバ〜を取り外しノ〜トパソコンのコネクタ〜に繋げるとキ〜を数回打ちEnterを押した。

 ピッピッ

 画面はハイスピ〜ドで文字列を映し出されて行く。

「やっぱり・・・」

 画面を読み取ると呟いた。

「原因はこれの故障・・・私のした事が・・・まあ天才にも一度や二度の失敗もあるわ」

 数え切れないくらい失敗をしている。

「でも、どうして故障したのかしら?計算では100%故障はしないのに」

 もう一度画面を確認していく。その文字列は常人には理解できない文字列であった。

「ここは良いとして・・・ここも良い、ここは・・・!」

 目を見開くと発見した文字列を指でなぞり確認する。

「まさか、これが・・・もし目覚めたらアスカは・・・わ、私のせい?」

 リツコの血の気がサ〜と引いた。


「目覚めたらアスカはどうなるのかしら?」

「きっとおSALさんになるのよ」

「ふ〜〜ん、じゃあ尻尾が生えるのかしら?」

「多分生えないと思うわ、生えるのは角」

「それじゃあ鬼じゃない」

「そうとも言うわね」

「・・・ふう〜〜レイと喋ると疲れるわ」

「じゃあ聞いていて」

「それも疲れるからイヤ」

「聞いてくれないの?しくしく、しくしく」

「泣くんじゃないの、聞いてあげるから」

「ほんと?」

「くっ・・・嘘泣きか、やっぱ聞かない」

「ビ〜ルあげるから聞いて」

「OK〜〜」

「現金なのね、こんな人が上司・・・いやだわ」

 原因はリツコさん特製ヘッドセットにアリ!リツコさんの発明・・・順調に行っていたのに失敗するなんて・・・やっぱりMAD(^^;)

 こんな連載小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


Vol.53 ASUKA Vol.55 結果

EVA CHANGING Vol.54 眠り姫