EVA CHANGING
Vol.8
バトル、クッキング
「あれ?鍵がかかっている。アスカ帰ってきてないのかな」
シンジは疑問に思った。それもそのはず、アスカは早引きしたのでてっきり帰ってると思ったのだ。
「ただいま〜」
玄関を見るとアスカの靴は無かった。
「どこ行ったんだろう?」
首を傾げながら着替えるために自室に向かう。家の中はペンペンが冷蔵庫で寝ているだけだった。
「ふう〜・・・どうしよう」
何も見る番組は無いのだが一応テレビをつけ、重大な役を押し付けられ苦悩していた。
「アスカと綾波の弁当・・・・選べって言われてもなあ・・・」
ため息をつくと仰向けになり天井を見つめ、また大きなため息をつく。
「アスカを選んだら綾波が悲しむし、綾波を選んだらアスカが悲しむ・・・・僕は・・うわ〜〜〜!」
頭をかきむしり身悶える。その姿を起きてきたペンペンが見ておもわず引いた。
「ク、クエ?」
その頃アスカは本屋で家庭料理、高級料理、世界の料理、お弁当のおかずなど料理と名のついた本を片っ端から眼を通し、頭に記憶していった。
(シンジ君、どういったおかずが好みかしら?)
シンジが好みそうなものを思い浮かべていたが、ずっとシンジが作っておりアスカの好みが大半だったので、どんなものが好きなのか思い浮かばなかった。
(わからないわ・・・もう、どうして以前の私は作らなかったのかしら)
自分に腹を立てるが、怒ってもどうにもなるものではない。気をとりなおし再び本に眼を通す。
(洋食がいいかな?やっぱり日本人だから和食がいいかな?)
めぼしい本を決めレジに持っていくが10冊ほどになっていた。
(後は材料ね)
本がギッシリ詰まった袋を抱えてス〜パ〜に向かった。
一方レイはネルフの魔の研究室、研究室の主リツコの元に来ていた。
「あらどうしたの?レイ」
「お料理教えてください」
「料理?」
「はい」
リツコは突発的な事で、理解できなかったがレイは真剣な表情である。
「わけがあるみたいね話してみなさい」
「はい」
レイは昼休みの出来事は話した。リツコはコ〜ヒ〜を飲みながらいつになく真剣なレイにうなずいていた。
「なるほど、対決それでアスカに勝ちたいわけね」
コクリ
「難しいわね。今のアスカには勝てないかもしれないわ」
「え?」
リツコの意外な発言にレイは身を固まらせる。
「どうしてですか?」
「それはね、私が作った・・・・・って違うわよ。コホン、アスカはシンジ君に習っているからよ」
自分が作った偉大なる発明でそうなったとは言えない。もし知られたらレイの攻撃によって命の保証はなかった。
「ちょっと待ってなさい、なんとかしましょう」
「はい、お願いします」
リツコはマグカップを置くと、パソコンに向かって高速スピ〜ドでキ〜をたたき、怪しげな物を作り始める。
「完成よ」
「これは?」
渡したものは一見すとリストバンドであった。レイは不思議そうに手の上のものを眺めていた。
「これは黄金の腕といって装着した者を料理の天才にしていまう最高の発明品よ。これさえ着ければどんな材料を使っても五つ星レストランのシェフでさえ、敵ではないわ」
「ありがとうございます」
レイは一礼すると研究室を後にした。リツコは嬉しそうな姿を見て、喜んだ。
「レイ頑張るのよ。くくくく・・・短時間で作成してしまうなんて、私って天才ね」
所かわりス〜パ〜。
「これと、これと」
アスカはカゴに必要とある材料を片っ端から選んで入れていった。
「これは重要ね、あ、すいません」
調味料を取ろうと手を伸ばすとそれを取ろうとした手に当たり、謝る。
「・・・・私のよ」
「レッレイさん」
横にいたのはレイであった。ネルフを出た後、直行でここにきて材料を選んでいたのである。そしてアスカより早く取った調味料をカゴに入れる。
「そっそれは私が・・・」
「何?」
アスカは恨めしそうにカゴを見ていたが、レイはすましていた。
「それは私が取ろうとしていたんです」
「そうなの」
レイが取ったのが最後で売り切れになってしまった。
「でももう品切れで、私が見つけたんですよ」
「他のにすれば・・」
レイはそれだけ言うとスタスタと行ってしまった。アスカは後姿を呆然と見つめ手に持ったカゴに力が入る。
(ヒドイ・・・でも負けないわ)
「アスカ遅いな」
時間は18時をまわり、シンジは夕食の用意をしていた。
「ただいま帰りました」
玄関からアスカの声が聞こえ、足音が台所に向かってくる。
パタパタパタ
「ごめんなさい、遅くなって」
額に汗を掻き息を切らしていた。どうやら走って帰ってきたようだ。
「いいよ、遅かったね」
「・・本屋さんとス〜パ〜に行っていて、ごめんなさい!」
アスカは後ろ髪が勢いで前にくるほど頭を下げる。
「かわりますから」
「もうすぐだから、着替えておいでよ」
シンジの優しい心遣いにアスカは感動して、笑顔で部屋に戻っていく。
「はい」
「それにしても凄い量だな」
テ〜ブルの上に置かれた買い物カゴを見ながら驚いた。
そしてアスカは夕食を取り、お風呂に入ったのち自室にこもり買ってきた料理の本を研究していた。
(美味しそう、これがいいかしら?それともこっちが・・・)
研究は深夜まで続いた。
(碇クン ポッ)
レイは黄金の腕があるので、すでに夢の中だった。
「ふあ〜今日か・・・・」
どちらの弁当を決めなければいけないシンジは憂鬱であった。いつもよりゆっくりな動作で着替え、重い足取りで台所にむかう。
「おはようございます」
「あ、おっおはよう」
すでにアスカが朝食を作り終えて、本を広げ弁当の用意をしていた。
「シンジ君、私負けませんから」
「そっそう・・・は、はは・・・」
気迫にただ笑う事しかできなかった。
(どっどうしよう)
シンジは朝食もまともに喉に通らずに、登校した。
「なんや?シンジ顔色悪いの〜」
「そっそう・・・・」
「どっちにするか決めているのか?」
教室でトウジとケンスケは対決が気になり、それを決めるシンジに色々と聞いていた。
「・・・逃げたいんだ」
「「はあ?」」
「だって選べっていわれても僕には選べないよ」
「そうか、でもなあシンジ男には避けて通れない道があるんや」
トウジはシンジの肩をたたくと、男の道を語り出した。
「男はこうやって、でかくなっていくもんなんや」
「・・・・」
「まあ、自分の素直な気持ちで選べばいいさ」
「・・・・」
その後の授業は頭に入らず、ずっと混乱していた。
(・・・・・どうしよう)
そしてとうとう昼休みになり、屋上で審査する事になった。
「ではこれから、どちらのお弁当が碇君に相応しいか味見してもらいます」
ヒカリは仕切り、すでに弁当を広げているアスカとレイの前に顔面蒼白のシンジを立たせていた。
(・・・・どっどっどうしよう)
目の前にだされた豪華な弁当に汗を流し、生唾を飲んでいた。一方トウジとケンスケはうらやましそうに見ていた。
(か〜うまそうやな)
(食べて見たいな、写真にとって売ってやる)
「それじゃあまずはアスカのからね」
ジャンケンでアスカからになり、シンジは箸を持った。
「シンジ君、私一生懸命つくったから」
アスカの瞳が多少潤んでいた。シンジは可愛いと思いながら、箸を動かすことができない。
「碇君どうしたの?審査しないと」
「・・・・・・」
「碇君?」
シンジは体を左右に揺らしてそして、白目をむき背中から倒れた。
「シンジ君!」
「碇クン!」
「碇君!」
「「シンジ!!」」
アスカとレイはシンジの異変に驚き弁当を落してしまう。ヒカリ達はシンジに駆け寄った。
「ケンスケ、シンジを保健室に運ぶで」
「わかった」
2人はシンジを抱え急いで屋上から出ていった。3人は呆然とその場に立ち尽くしていた。
「シンジ君・・・・シンジ君〜」
アスカは素早く我に帰ると、走って屋上を出た。レイ達も続いた。
保健室でベットに寝かされたシンジにみんなは不安であり、アスカは泣いていた。
「グス・・・シンジ君・・・」
「センセ、シンジは大丈夫なんやろか?」
保険医は不安がらせないように優しい口調で、説明した。
「大丈夫よ、精神的なつかれだから何か心当たりはない?」
「「「「「!!!!!」」」」」
言葉に一瞬固まった。シンジの性格から思い悩む事は当然であり、最終的にこうなったのである。
「少し眠れば大丈夫だから、帰りにいらっしゃい」
シンジを残して保健室を出たみんなは、肩を落しため息をついた。
「「「「「・・・・・」」」」」
重苦しい雰囲気が流れるが、破ったのはトウジであった。
「引き分けやな、シンジに審査員はできへん」
「そっそうね。この勝負は引き分け、アスカと綾波さん交代で作ったらいいわ」
そうしてこの勝負は引き分けというカタチで終わった。
「ん・・・ん〜ん」
「シンジ君!」
目覚めたシンジにアスカは嬉しくなりおもわず抱きついた。
「ア、アスカ!どうしたの?」
「ごめんなさい〜」
涙をポロポロ流し、勝負の事を謝る。
プニ
「碇クン、ごめんなさい」
「あ、綾波!」
アスカが抱きついている上でレイはシンジの顔を胸につけ、謝る。
「レッレイさん、何をしているんですか」
「謝っているの」
「やっやめてよ」
シンジは赤くなりながら離そうとするがアスカにも抱き着かれていて力が出なかった。
「シンジ君が嫌がってます、はなれて」
「イヤ」
「ダメ!」
「碇クン、喜んでいるわ」
「な、何言ううだよ綾波〜」
「本当?シンジ君」
「えっあ・・・その」
シンジの取り合いは続き、それを見ていた3人は呆れていた。
「ふっ不潔よ〜〜〜」
「セッセンセ!」
「うやらましい〜」
「こんにちは、アスカです。ペコリ」
「ハロ〜!美少女戦士ミサト参上!」
「・・・・・恥ずかしくありません?」
「うっさいわね、私は花も恥らう・・・・歳なのよ!文句ある?」
「いっいえありません」
「よろしい!あ〜あシンちゃん倒れちゃった」
「シクシク、シンジ君・・・優しいんですね」
「うんうん、シンちゃんらしいわね」
「はい」
「私の勝ちね」
「レイさん、どう言う事ですか?」
「碇クンは食べなくてもわかるの、絆だから」
「・・・・」
「それにしてもリツコはヘンなもの発明してるわね、呆れるわ」
「そうですね」
「でしょう!まさにネルフのMADね」
「でもミサトさんが使えばよかったですね。そうすれば少しは美味しいものを作れると思いますよ」
「どういう意味よ」
「無駄よ・・・赤木博士の発明でも葛城三佐の腕はなおせないわ」
「レ、レイそう言う事いう?」
「葛城三佐の料理の腕は使徒も逃げ出すわ。だから無駄なの」
「お、乙女にヒドイこというのね」
「クス、誰が乙女?」
「ち、ちくしょ〜〜〜」
「・・・ミサトさん、言わなければいいのに、それではこのへんで次回もお楽しみください」
「さよなら」
ちなみにタイトル、シンジが食べないで倒れるのは愛読書、封神演義から使わせてもらいました。まあシンジの性格上勝ち負けをつける事はありませんからね。
こんな連載小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。
EVA CHANGING Vol.8 バトル、クッキング