EVA CHANGING

Vol.9

高原の風

「シンジ君、アスカ!明日から別荘に行くわよん」

「「え?」」

 ミサトは帰ってくるなり、リビングでくつろいでいた2人に告げた。

「別荘ですか?」

「そ、山々が綺麗な高原の別荘よ」

「いきなりですね」

「司令がね、チルドレンの休養って夏休みをくれたのよ」

 ミサトは車のキーを指でまわしながら、公然の休暇に喜んでいた。

「父さんが」

「明日早く出かけるから、用意しといてね」

「何日ですか?」

「司令は飽きるまで居ていいって、いったわ」

「太っ腹ですね」

 シンジはゲンドウの意外さに驚いていた。

「ふふ、湖があるから水着も持って行った方がいいわよ」

湖ですか、泳ぎたいですね

 アスカは瞳を輝かせていたが、ミサトのチョッカイがはいる。

「アスカ、シンちゃんに水着を見せればバッチリ落せるわよ。夏って開放的になるのよね」

そっそんなんじゃありません

 アスカは真っ赤になると、チラリとシンジを見た。すると同じく真っ赤になっていた。

「ミサトさん・・・・」

(ふふふ、2人とも可愛いわね)

「明日7時に出発してレイのところによっていくからね」

「綾波もくるんですか」

「そうよレイもチルドレンだもの。それともアスカと2人っきりがよかったかな?」

「な、な、などうしてそうなるんですか」

 シンジは顔を真っ赤にして口を震わせ、否定したがミサトには聞かない。アスカは真っ赤になりうつむいていた。

(シンジ君と2人・・・・・ポワァ〜)

「お腹空いたから、ご飯早くね」

 ミサトは着替えるためにリビングを後にした。シンジとアスカは後姿を見ながら固まっていた。

「べっ別荘楽しみだね」

う、うん

「・・・・・」

・・・・・

 妙な空気が流れる。

ごっご飯用意しますね

 アスカは立つと真っ赤な顔を隠すように台所に走りこんだ。

くう〜〜〜明日から休みだとビ〜ルが美味しいわ!

 一気飲み別にいつでもミサトはビ〜ルが美味しかった。

「ア、アスカこれ美味しいね」

う、うん

 2人はミサトの言葉が頭から離れずに、ギクシャクしていた。

「こ、これも美味しい」

う、うん

(ゴクゴク、2人とも固くなって楽しい夏休みにしないと)

「2人とも気にするのはいいけど、私の目の黒いうちはしたらダメよ」

 ミサトはビ〜ルを置き真剣な顔で、忠告した。今2人に何か合ったら、上司として失格な為である。

「は、はい」

わかりました

「よし!じゃんじゃん飲むわよ」

 次のビ〜ルを開けようと手を伸ばすがシンジによって遮られる。

「ダメです。明日早いんですから」

「そっそんな〜、シンちゃんのいけず〜」

「ダメです」

「トホホ・・・」

 ミサトは涙を流しテ〜ブルにのの字を描いて注意するタイミングを間違えたと後悔していた。

 夕食も終わりアスカは後片付けを終え、自室で用意していた。

これとこれと

 ベットや床一面に夏服を並べ、持っていくものを吟味していた。

高原ってこれが似合うかしら

 鏡の前に立ち服を合わせる、それが幾度と続いた。

ふう〜これでいいわね。あとは水着ね」

 水着も並べると、次々と身体にあてて鏡で見てみる。

ちょっと大胆?こっちの普通のが、シンジ君どういうのが好みかな?

え〜と・・・

 どれにするか長い時間迷ったが、気に入ったものを何着か持っていく事に決めた。

バッチリ、早く明日にならないかな

 アスカはワクワクして、何度も持っていくものをチェックしていった。その頃レイのアパ〜トでは。

「碇クンと2人っきりで・・・・・」(ポッ)

 服を持ったままトリップしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして次の日、アスカとシンジはパッチリと眼が覚めた。シンジは普通にTシャツとチノパン、アスカは黄色いワンピ〜スにリボンがついた麦藁帽子。

シンジ君・・・この格好どうかな?

 アスカは照れくさそうに帽子で顔を隠しながら、聞いてみる。シンジは可愛い仕草にポカンとしていた。

「あ・・・うん、似合っているよ」

よかった!気に入ってくれて

「え?」

な、なんでもないの!

「そっそう」

うん

 リビングで立っている2人のやりとりは何時間も続きそうである。ミサトは時間を気にして口を挟む。

「それじゃあ行きますか〜!」

「あ、安全運転してくださいね」

制限速度を守ってくださいね

 楽しい休暇の前に地獄のドライブが待っている。2人は冷や汗をかきながら念入りに注意するが、ミサトは聞き流す。

「わ〜た、わ〜た。行きましょう」

 ギュオオオオンン!!!

「う、うわ〜〜」

きゃあ〜〜

 ミサトにとっては安全運転でも2人にとっては暴走運転、レイのアパ〜トに着いた時には虫の息であった。

「今日は最高記録ね」

 到着のタイムを確認し満足なミサトであった。

「ア、アスカ大丈夫かい?」

 自分もあまり平気ではないのだが、後部座席に座っているアスカを心配してふりかえる。

おでこをシ〜トにぶつけて痛いの

 急ブレ〜キの時バランスを崩して前のシ〜トに顔から突っ込んだようで、前髪を上げ赤くなった額をシンジに見せた。

「あっ本当だ、赤くなってる。ミサトさん、安全運転してくださいよ」

「ごめんごめん、血が騒いじゃって」

 ミサトは反省はしてないのだが、とりあえず謝った。シンジは呆れながら、後部座席に置いてあるペンペン入りのク〜ラ〜ボックスを開け、氷を取り出しタオルに巻く。当然ペンペンも気絶していた。

「これで冷やすと良いよ」

あ、うっうん・・

 額にタオルを当てる、その時一瞬だがシンジの指が顔にあたりアスカは赤くなる。

・・・・・」(ポワァ〜)

 その一瞬も見逃さないミサトの瞳が輝き、からかいモ〜ドに入る。

「よかったわね〜アスカ、どうしたの?顔赤いわよ」

 ミラ〜でアスカを見ながら、クククと笑っている。

あっ暑いんです!ク〜ラ〜効かせて下さい!

「これで全開よ!シンちゃんは暑い〜?」

「いえ、このくらいで十分です」

「あら、じゃあどうしてアスカは赤いのかな〜?もしかして?」

 ミサトはアスカにとっては悪魔の如く笑っていた。

もっもう、レイさんを呼んできます。シンジ君行きましょう!

 アスカはまだシンジが座っている席を無理やり倒すと、車から降りアパ〜トに駆け出した。

「わっまってよ」

「うんうん、楽しい夏休みね」

 ミサトは2人の後姿を見ながらうなずいていた。

 コンコン

「綾波〜」

 呼び鈴が無いのでノックをしてレイを呼ぶ。少しすると玄関が開き出てきた。

「おはよう、碇クン、アスカ」

「あ、綾波おはよう」

おはようレイさん

 レイの姿はMLBの野球帽をかぶり、Tシャツは肩をまくり少し長い短パンである。ボ〜イッシュな格好にシンジは一瞬驚いた。

「どうしたの?」

「綾波の格好がいつもと違うから驚いて」

レイさん、似合ってる

 2人はしきりにレイの格好を誉めた。レイも帽子で顔を隠すようにすると少し頬を染めた。

「赤木博士に教えてもらったの」

「そうなんだ」

 2人はリツコのセンスのよさに驚いていた。いつもMADであるから、まともなセンスを持っているとは思えなかったのだ。

「葛城三佐、おはようございます」

「おはようレイ、あら似合うわよ」

「ありがとうございます」

 ミサトもレイの姿に関心していた。そしてシンジは助手席、アスカとレイは後部座席にすわった。

「それじゃあ、行くわよ〜ん」

「ミサトさん、今度は本当に安全運転でお願いします」

レ〜スじゃありませんからね

 2人は念を押すがミサトは手をパタパタさせ聞き流し、応対する。

「わかってるって、2人とも心配性ね。ほらレイは堂々と座っているじゃない」

 レイは足を精一杯伸ばし、両手はシ〜トについていた。

「死にたくないから、努力してるの」

「・・・・・・あっあら、そうなの」

 シ〜トを持つ手に力を入れると、ミラ〜越しにミサトに瞳で安全運転と訴えていた。

「わっかりましたよ、出発よん」

 3人の努力の甲斐があって、比較的に安全運転であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ到着よ」

「ここですか、大きいですね」

素敵!

「すごい」

 後ろは林で目の前は澄みきった緑が広がっていた、遠くには湖が見える2階建てのロッジ、チルドレンは一様の声を上げた。

「空気が美味しいですね」

「気に入ってくれた?この空気の中でのビ〜ルは格別なんだから、じゅるじゅる」

 よだれを垂らしているミサトに呆れながら3人は早速、荷物を持ってロッジに入った。

「あ、まってよ!ふきふき。夜はビ〜ルお願いねシンちゃん」


「こんにちはアスカです。風がキモチイイです、なんだか歌いたくなっちゃった」

「給料上げろ〜〜〜〜〜〜!!」

「なんですかミサトさん」

「あまりにも景色がいいから叫んだのよ。アスカも一緒にどう?」

「けっこうです」

「あらそう、叫ぶとすっきりするわよ。ネルフじゃ言えないから」

「・・・・・・」

「そんな眼で見ないで、アスカもシンちゃん好きだ〜〜〜〜で叫んだらいいわよ」

「ミッミサトさん・・・・・ポッ」

「あらあら、まっかになっちゃって、ふふふ」

「もう」

「碇クン、私と1つになりましょう」

「ほら、レイも叫んでいるわよ。うんうん、切実な願いね」

「レッレイさん、そういう事は大声で言わないんですよ」

「どうして?」

「どっどうしてっていわれても・・・・・」

「それは気持ちイイことなのよ」

「レイって大胆ね」

「レイさん!やめてください」

「イヤ」

「アスカも負けずに叫んだらいいわ」

「そっそんな事できません!」

「あ〜あ、走って行っちゃった。今のアスカは純だからね、レイそのくらいにしとけば」

「イヤです。葛城三佐も一緒にどうですか?」

「ん〜そうねストレス発散!」

「2人ともみっともないですよ!」

「あら、そうかしら?楽しいわよ」

「碇クンも一緒に」

「・・・・せっかく素敵な場所に来ているのに、他にする事があるでしょう」

「あら、なに?」

「たとえば、景色を堪能するとか、歩くとか」

「そんなのいつでもできるじゃないやっぱり、爽やかな太陽、緑の大地に座ってビ〜ル!これが1番よ」

「ミサトさん・・・」

「そうよ、いつもできない事、碇クンと1つになること・・・ポッ」

「あ、綾波〜・・・」

 「エヴァンゲリオン学園」、「EVA CHANGING レイ編」にはプールをもってきたのでアスカ編は高原にしてみました。

 夏は海だ!アスカ編も描け!そのほうが萌える!と言う方がいましたら、描くと思います。(伏線として水着を持っていっているので)とりあえず山らしい事を描こうかな。

 こんな連載小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


Vol.8 バトル、クッキング Vol.10 ひととき

EVA CHANGING Vol.9 高原の風