EVA CHANGING

にじゅうよんわ

あいのために

 朝の登校風景、レイは元気いっぱい歩いて学校を目指していた。

今日も、シンちゃんに会える〜〜♪

 シンジの歌を唄い、十字路を曲がると前方に・・・

ん、あの何処にでもいそうもない髪の色は・・・アスカ?でもシンちゃんがいない

 そういつもと違う光景に気がついた。いつもアスカの横にいるシンジ。レイに言わせてみれば「シンちゃんの横にはただの同居人のただのアスカがいる」のシンジがいない。

シンちゃんどうしたんだろう?

 レイはシンジの事となるとMAGI以上の処理能力で考え始めた。そして考えられる答えが出た。

うん、ケンカだ!アスカは乱暴だから、愛想をつかしたんだ、うんうんっという事は・・・・・・・・・

 モワモワと頭の中で想像し始めた。

 

 

シンちゃんどうしたの?

 太陽が沈みかけている夕方、シンジとレイは湖のほとりに膝を抱えて座っていた。

「・・・・」

 レイは優しく問い掛けるが返事がない。ただ俯いている。

私でよければ、相談にのるけど

「・・・アスカが・・・・」

アスカ?

「アスカが僕をいぢめるんだ」

「いつも僕にご飯を作らせて、お風呂の用意をさせて、洗濯を押しつけて、宿題をやらされて、お使いをさせられて、おかずを横取りされて、口答えするとビンタをされて、逆に怒るとパンチがきて・・・・それはまだ我慢できるんだけど、僕の僕の小遣いまで取るんだ・・・うっうううう」

 シンジは顔を膝に埋め泣き始めた。レイは言葉を失った。

アスカ・・・・ひどいとは思っていたけど、それほどまでひどいなんて・・・・・シンちゃん

「うっううう・・・」

 シンジはなるべく声を出さないように泣いていた。男としてのプライドだろうか激しく泣くなんてできない。レイはそっとシンジを抱きしめた。

シンちゃん・・・・・

「ひっく・・・ひっく、綾波・・・」

シンちゃん!一緒に逃げましょう

「え?」

 シンジは驚いた。突然のことである。

アスカと一緒に住んでいたらシンちゃん・・・ダメになっちゃう。私と一緒にどこか遠くに行きましょう

「ひっく・・・・綾波・・・」

私がシンちゃんを幸せにしてみせる

「綾波・・・」

 シンジはコクリとうなずくと立ちあがった。

「ありがとう綾波」

ううん、いいのだってシンちゃんがす、好きだから

 真っ赤になって告白するレイ、夕焼けの空と同じくらい赤い。

「あ、綾波・・実は僕も綾波のことがす、好きだ」

「シンちゃん・・・・」

「綾波・・・・」

 夕日が沈み輝く星、そして二人は重なり・・・・

 

 

うへ、うへへへへ、シンちゃん〜〜〜

 道の真ん中でヨダレを垂らしてにやけ笑い、通行人は見ないフリして避けて通っていた。そうしているうちにアスカは見えなくなる。

(はっ、シンちゃんをアスカから守らなくては!)

 ダッダッダッダ!

 現実に戻ると目標を定めて走り出した。

 ダッダッダッダ!

 ダッダッダッダ!

 ダッダッダッダ!

 ダッダッダッダ!

アスカ殲滅、とおおおおおおおお!

 ゴンッ!

 アスカの首にクロスアタック、アスカは突然の事なので無防備に顔から地面に突っ込んだ。

「ふぎゃ!」

シンちゃん、やったわ。これでもう苦しむ事はないわ、あいのために二人で逃げるのよ!

 天を見上げ涙を流して喜ぶレイ、空にはなぜかシンジの笑顔が浮かんでいる。

 ボクッ!

あふっ!

「何涙流してんのよ!不意打ちなんてレイ、いい度胸しているじゃない。え!」

 レイの頭に衝撃が走り、その場にうずくまった。そして声がした方を向いて見ると、アスカが腕を組んで怒りで睨んでいた。

ええい!シンちゃんをいぢめる極悪面悪党め、成敗!とおおおお

 レイはパンチをアスカの顔面にくりだした、だが・・・

 パシッ!

え?

 当たる寸前で止められ、そして・・・

 ガツッ!

あう!」 

 アスカの左手がアイアンクロ〜をくりだす。

「レ〜イ、誰が極悪面悪党よ?その若さで死にたいわけね」

うきゅきゅきゅきゅ・・・い、痛いよ〜アスカ

「当然よ、殺す気で掴んでいるから」

う、このままじゃ・・・シンちゃんと逃げられない・・・ここはウソをついてでも

「さあて、力を込めようかしら」

 ギュギュギュ!

 アスカの手がさらに力が込められていく。

ご、ごめんなさ〜〜い。もうしないから〜〜

「ほんとね?」

 こくこく

 うなずくとようやく解放された。こめかみには指の跡がついた。

いたたたた、でもお馬鹿なアスカ、油断したところを・・・・ニヤリ

 ボカッ!

いたっ!何するの

「今なんとなくアンタを叩きたかったのよ」

 アスカはレイの心を読めたのであろうか?そのコブシには怒りがこもっていた。

アスカってなんて感が鋭いの、おサルさんね

 ボカッ!

うきゅ〜〜

「レイ、アンタヘンな事考えてない?」

か、考えてない

「そう」

 恐るべき鋭さレイはアスカの前で戦略を練るのをやめた。

「で、さっきは何よ?シンジをいぢめるって」

だってシンちゃんいないじゃない。アスカがいぢめたからシンちゃん、旅に出たんでしょ?

「旅〜?」

 レイの言葉にアスカは目を丸くした。

「何言っているのよ。シンジは風邪よ」

か、風邪〜〜!!!

 その瞬間レイの頭にはある場面が浮かんだ。

 

 

 シンジの部屋、暗い室内、咳がこだまする。

「ゴホッゴホゴホ・・・・く、苦しい・・・綾波〜〜」

 額にタオルをのせ顔は熱で赤い。

「ゴホッゴホゴホゴホッゴホゴホゴホゴホッうっ・・・・・血が・・・・」

 口に手を当て激しく咳き込む。咳が止ると手に違和感を、感じ静かに見てみると血がついていた・・・吐血。

「僕は・・・もうダメかもしれない・・・・綾波・・・・・・・・・・・」

 静かに瞳を閉じると涙が一滴、頬を流れた。その一滴だけ、そして・・・・・・

 

 

 

いやあああ!シンちゃ〜〜〜〜〜ん

 レイは叫び声をあげると、アスカに背を向けアスファルトなのに砂煙を上げ走り出した。

「ちょちょっとレイ、どこに行くのよ?」

 だがすでにレイの姿はなく、砂煙が上がっている。その方向は・・・・・

「何考えているのかしら?」

 アスカは腕を組んで首を傾げていた。

シンちゃ〜〜〜ああああん!!


「シンちゃん、待っていてね。今すぐかけつけるから、それまで死なないで」

「アンタねえ、シンジは風邪なのよ。どうして死ぬのよ」

「だって血を吐いている」

「血〜?それはアンタの妄想でしょうが!」

「えっ?あっ本当だ」

「まったく、どっからそういう考えが出てくるのかしら?」

「それはね。いつもアスカがいぢめているから」

「いぢめ?私はシンジをいぢめてなんかいないわよ」

「うそ〜、証拠はあるのよ。ほら」

「なんなのよ。この写真は?うっ」

「ほら、アスカがシンちゃんをビンタしている。可哀相」

「これはシンジが私の部屋に断りもなく、起こしに来た時じゃない。どうしてレイが持っているのよ?それよりなぜこんな写真が?」

「葛城三佐がたくさんもっていたから、くれたのほら」

「なっシンジの写真じゃない!着替え中や、入浴・・キャ!ってミサト〜隠し撮りしているのね」

「アスカ、どこにいくの?」

「決まっているでしょ、ミサトに会いに行くのよ」

「あらら行っちゃった。私はシンちゃんの写真でも眺めてよ!」

 ここでは風邪ネタ第2弾です。前はじゅうわでレイが風邪をひきましたが、今回はシンジです。

 次回はレイが看病します。お楽しみに!

 こんな連載小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


にじゅうさんわ おかいもの にじゅうごわ レイちゃんしき、かんびょう

EVA CHANGING にじゅうよんわ あいのために