エヴァンゲリオン学園外伝
姉の役目
ぱく・・・もぐもぐ、ぱく・・・もぐもぐ・・・
ミカンが美味しいわ。
「レイ、お茶入れましょうか?」
「うん」
ずず〜〜〜・・・お茶も美味しい。
コタツがぬくぬく、壁にかけてあるカレンダーを見ると十二月、コタツに入ってミカンを食べてお茶を飲む、冬の定番ね。
私は碇レイ、碇家の長女、弟にシンジがいるわ。さっきお茶を入れてくれたのが、お母さんの碇ユイ、世間からはよく姉妹に見えるって言われるけど、それはお世辞よお母さん。
「レイ、何か言ったかしら?」
「何も・・・」
口に出して言ったら怒られるから言わないわ。
もう十二月なのね。この間新年を迎えたと思ったのに早いわね。
十二月・・・十二月といえば・・・確か、アスカちゃんの誕生日だわ。シンジはプレゼントを用意したのかしら?
「お母さん、シンジは?」
「シンジなら部屋に居るんじゃないの」
そうね、また部屋でプラモでも作っているに違いないわ。
コンコン
「シンジ、居る?」
「な〜に?」
ノックをしたら返事があったわ、部屋に入るわよ。
「シンジ」
「何か用?」
「またプラモ作っている」
「いいじゃん」
今日もガンダムのプラモを作っていたわ、それは何て名前なのかしら?
「今から質問するわよ」
「質問?」
「十二月四日は何の日か知っている?」
「十二月四日?何だろう?」
・・・我が弟ながら呆れるわ。
「毎年のイベントよ、シンジには必要なイベントよ」
「僕に必要なイベント?う〜〜〜ん、何かな・・・」
・・・忘れているようね。
「誕生日よ」
「へ?」
「誕生日、アスカちゃんの誕生日」
「あ〜〜アスカの誕生日だったね。それがどうしたの?」
「プレゼントは?」
「プレゼントって?」
「アスカちゃんへのプレゼントは用意したの?」
「してないよ」
あっさり言うのね。
「当然用意するでしょう」
「しないよ。お金ないし毎年の事じゃないか」
「シンジの誕生日の時はアスカちゃんからプレゼントを貰ったでしょう」
「うん、貰ったよ」
「じゃあ、プレゼントしないと失礼になるわよ」
「別にいいんじゃない、アスカだもん」
シンジ・・・貴方はアスカちゃんの気持ちを踏みにじるのね。それは将来私の妹となるアスカちゃんを悲しませる事になるわ。
「シンジ、出かけるわよ」
「出かけるって?」
「アスカちゃんの誕生日プレゼントを買いに行くのよ」
「プレゼントを買いに?行かなくていいよ」
「行くのよ」
「お金ないし」
「今月のお小遣いは?」
「これに消えちゃった」
そう、今作っているプラモに消えたのね。そんな事だろうと思ったわ。
「シンジ、これを」
「これは」
「プレゼントの費用よ」
「うわっレイ姉ちゃんが出してくれるの?」
「ううん、シンジのお年玉の前借りよ」
「ええっ!?」
事前にお父さんに言っておいて良かったわ。
「そんな、勝手な事しないでよ」
「そう、そんな事言うのね。それじゃあお父さんに言って、お小遣いとお年玉を停止してもらうわ」
「な、なんでそんな事言う権利が、レイ姉ちゃんにあるんだよ」
「じゃあお母さんに停止してもらうわ」
「か、母さんに!?・・・わ、わかったよ」
流石お母さんの力、凄いわ。
「それじゃあ、着替えたら出かけるわよ」
「わかったよ」
愚痴を言っているけど、出かけさせる事に成功したわ。
「それじゃあ行ってきます」
「・・・行ってきます」
「気をつけるのよ〜」
お母さんに見送られて家を出たわ、風が冷たいわね。
「それで、どこへ行くの?デパートに行きましょう」
隣町のデパート、何でも揃っているから便利だわ。
「へっくしゅんっ、う〜〜寒っ」
「ちゃんと着込んでこなかったのね。シンジ、これを巻きなさい」
私は自分の首に巻いていたマフラーをシンジの首に巻いてあげたわ。
「い、いいよ。レイ姉ちゃんが寒くなるだろ」
「私は十分に暖かいからいいわ。巻いておかないと風邪を引くわよ」
シンジは小さい頃はよく風邪を引いていたわ。その度に私やお母さん、アスカちゃんが看病したわね。
「う、うん」
「まだまだ、寒くなるから風邪を引かないように注意するのよ」
「わかっているよ」
素直で良いわね。話していると電車が着たわ。乗って隣町のデパートへ行くわ。
「人が多いわね」
「日曜だからね」
人が多いところは、あまり好きではないわ。人の波に酔いそう。
「何を贈ったら良いかな?レイ姉ちゃんは何を贈るの?」
「私はすでに買っている」
「早っ、それで何を買ったの?」
「秘密」
「秘密〜?僕は何を贈れば良いの?」
「それは自分で考えるのね。とりあえず入りましょう」
私達は中に入ってエスカレータで売り場へ上がったわ。
「う〜〜ん、冬物が良いのかな?」
シンジ、悩んでいるわね。女性物は値段が高いから、お金の問題もあるわね。
「そうだ!レイ姉ちゃんのマフラーはここで買ったんだよね」
「ええ」
「アスカにもこれをプレゼントしよう」
それはいい提案ね。普通のマフラーよりはちょっと値段が高いけど、暖かいからオススメよ。
「マフラー売り場に行こう」
「ええ」
私とシンジはマフラー売り場へ向かったわ。
「色々あるなあ」
「アスカちゃんにはどれが似合うかしら?」
「やっぱりアスカだから赤だね」
赤と言っても明るい赤から暗めの赤まで多種多様あるわね。
「え〜〜と、ちょっと濃い目の赤がいいかな」
「赤と言うより紅ね」
アスカちゃんは可愛いから何でも似合うわ。
「じゃあ買ってくるね」
「ええ、そこのベンチで待っているわ」
「ふう〜〜」
歩き回ると疲れるわね、ちょっと運動不足かしら?今度からお母さんと一緒に歩こうかしら。
シンジと二人で出かけるのも久しぶりね。たまには姉弟で出かけるのも良いわね。
「お待たせ〜帰ろうか」
「お姉ちゃん、疲れたから休憩していきましょう」
休憩しないと倒れてしまうわ。地下の喫茶店へ向かうわよ。
「ふう〜〜〜美味しいわ」
温かいコーヒーは疲れを癒すわね。シンジはお腹が空いたようだからスパゲッティーを食べているわ。
「レイ姉ちゃん、今日はありがとう。アスカの誕生日、すっかり忘れていたよ」
「アスカちゃんの誕生日を忘れたらダメよ。アスカちゃんが悲しむでしょう」
「うん」
口の周りにミートソースがついているわ。まだまだ子供ね。
「シンジ、口の周りを拭いてあげるわよ」
「い、いいよ。自分で拭くよ」
「お姉ちゃんに任せなさい」
「わ、わかったよ」
小さい頃はよく拭いてあげたけど、アスカちゃんが拭いてあげるようになるのかしら。
「レイ姉ちゃん、これ」
「なに?」
シンジが私の前に包み紙を置いたわ。
「今日のお礼、開けてみて」
お礼?私は包み紙を開けたわ。
「手袋」
「マフラーと同じメーカーのを見つけたんだ暖かかったよ」
「ありがとうシンジ、大事にするわ」
「へへっ」
いつの間に見つけていたのかしら。その心優しさ、いつまでも持ち続けてアスカちゃんを大事にするのよ。
十二月の最初のイベントはアスカちゃんの誕生日、レイちゃんは憶えていますが、シンジ君は忘れています(^^;)
シンジ君の発言に怒る?レイちゃん、姉として許せませんね。シンジ君を連れてプレゼントを買いに行きました。
プレゼントを購入してレイちゃんへもプレゼント、やっぱりシンジ君は優しいです。
こんな小説でも飽きずに読んでくれた方々に感謝します。
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