エヴァンゲリオン学園外伝

アスカちゃん、風邪を引く(後編)

 ふあああ〜〜〜

 シンジは授業を聞かずにボンヤリと外を眺めていた。教室内でぽっかりと席が一つ空いており、それが気になって授業どころではない。

(アスカ大丈夫かな?)

「シンちゃん、次を読んでちょうだい」

「えっ?はいっ、ええと・・・」

 いきなりミサトに指名され立ち上がり教科書を読もうとするが、どこを読めばわからずに大粒の汗が流れ出る。

「224ページの5行目からよ。アスカの事が気になっていたんでしょう」

「ち、違いますよ」

 ニヤリと口元を歪めるミサトにシンジは否定をするが信じてもらえそうにもない。

「わかってるって、早く時間が経てば良いのにね〜こういう時にかぎって時間は遅いから困るわよねえ」

「だから違いますって」

 真っ赤になって否定をするが無駄のようである。

「はいはい、そういう事にしておくわ。集中してれば時間は早く経つから頑張りなさい」

「はい・・・」

 お茶らけているが生徒の事を心配しているミサト、立派とまではいわないが流石教師である。

(ようし集中して早く帰るぞ)

 気合を入れるシンジであった。

 

 

 その頃アスカは・・・

「今はミサト先生の授業ね・・・」

 ベッドに横になっているが眠たくない、目覚し時計を手に取り時間を確認する。

「シンちゃん・・・ボンヤリしていたら絶対に当てられるわね」

 的中、シンジはミサトに当てられていたが、アスカの事でからかわれていたのは想像していない。

「ふう〜〜〜退屈・・・」

 仰向けになり天井をボンヤリ見つめ、目を閉じ眠ろうとするがなかなか眠れない。

「ふああ・・・早く学校終わらないかな・・・」

 学校が終わってもアスカには関係無いが一つだけ期待していることがある。

「シンちゃん、お見舞いに来てくれるかな?」

 毎日会っているとはいえ風邪のアクシデント、見舞いに来て欲しいと胸を膨らませている。

「無理よね、毎日会っているから・・・でも来て欲しいなあ」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「考えてもしょうがないわ、寝よっ!」

 沈黙、数秒して布団の端を掴むと頭からかぶり眠りに入った。

 

 

 そして帰りのホームルーム、シンジは終わるのを今か今かと待ちわびている。

「さあみんな今日は終わりよん。気をつけて帰りなさいよ」

 ヒカリの号令でその日の学校が終わった。

(よし、帰るぞ)

 すかさず席を立ち上がりダッシュで教室を出ようとするがすんなりいかない。

「シンちゃん、アスカのお見舞い頑張ってね〜〜」

「な、何を頑張るんですか」

「何って、ふふわかってるくせにぃ〜〜、おっとこれをアスカに渡してちょうだい」

 白い封筒を受け取る、表裏を見まわしても何も書いていない。

「なんですかこれ?」

「お見舞いの手紙よ、シンちゃんは見ちゃダメよん」

「見ないですよ!さよなら」

 ミサトは手を振るとにこやかに何かを期待するような眼差しであった。当然クラス中は爆笑の渦、シンジは顔を真っ赤にして素早く教室を出るのであった。

 

 

 タッタッタッタ

 学校から走り出したシンジは早かった、肩で息をしているが歩く気配は無い、それどころか速度があがっている。

 タッタッタッタ

 学校から自宅までいつもの時間の半分で到着、息を切らしながら惣流家の玄関前へ到着し2、3度深呼吸をするとインターフォンを押し、ドアを開けた。

「こんにちは〜〜」

「シンジ君、お帰りなさい」

 シンジが来るのを予想していたらしく素早く出てきたキョウコ。

「アスカは、大丈夫ですか?」

「ごめんなさいね心配かけて、あのコったら昨日はしゃぎすぎちゃって、本当にへっぽこよねえ〜〜ふふふ」

「は、はあ〜」

 笑顔で話すキョウコ、未来の息子と存分に話しをしたいのだろう、自分の娘をへっぽこ呼ばわりする始末、当のシンジはアスカの事が気になってそれどころではない。

「それでね〜シンジ君、この前もアスカのへっぽこが面白かったのよ〜聞きたい?」

「は、はあ〜」

 喋り捲るキョウコ、シンジは否定する事ができずに生返事しかできない。

「アタシはへっぽこじゃないもん」

「あ、アスカ」

「あら〜〜起きてきたの、もう熱は下がったの?」

 アスカが赤いパジャマに赤いちゃんちゃんこを着てやって来た、ぷう〜と頬をふくらませて怒っている。

「ママ、シンちゃんにそんな事話して迷惑でしょ」

「あら、そんな事無いわよね〜シンジ君?」

 シンジに向かって微笑むキョウコ、その笑顔は否定ができないほどの笑顔である。

「え、ええまあ」

「ほら、シンジ君は全然迷惑じゃないわよ。ここじゃあなんだから上がってちょうだい、アスカお茶を出して」

「ママァ〜、おもいっきり迷惑なの!シンちゃんはアタシのお見舞いに来たんだからね。そうでしょ?」

「え、うん」

 勢いに釣られて首を縦に振るシンジ、もともとその為に来たのだから否定はしない。

「ほらあ〜、ママこそお茶を出してよね。シンちゃん上がって」

「あ、うん」

 シンジの手を取ると家に上げ、アスカの部屋に向かった。キョウコは二人の後姿を見てにこやかに頷くのであった。

(うんうん、これで安泰ね)

 

 

「アスカの部屋に入るのって久しぶりだね」

 座ったシンジ、部屋を見まわして何年か前に入った時の事を思い出していた。

「あんまり見まわさないで恥ずかしい」

 頬を染めるアスカ、ごく普通の女の子の部屋、恥ずかしいところは無いが見まわされると恥ずかしいものである。

「ごめん、それより風邪は大丈夫?」

「うん、薬飲んで寝たら下がっちゃった、明日は学校に行けるわ」

「そう、良かった。これミサト先生から預かってきたんだ」

 ミサトから預かった封筒を渡す。

「ミサト先生から?」

「うん、お見舞いの手紙って、流石ミサト先生だねズボラでもちゃんと教師をしているよ」

「ふふ、そうね」

 二人でミサトのズボラさを笑い、アスカは封筒を開け中の手紙を取り出した。

「ええと・・・」

 口に出さずに目で読んでいく。読んでいくうちにどんどんと顔が赤くなって肩が震えてくる。

「何て書いてあるの?」

 シンジはミサトからお見舞いの手紙と言われているので、見舞いの事を書いてると思っているがミサトの手紙、内容が気になる。

「な、なんでもないわよ、風邪お大事にって」

 素早くたたんで封筒にしまいこみ、ちゃんちゃんこのポケットに押し詰めこむ。

「ふ〜〜んミサト先生にしては普通だね」

「ど、どうして?」

「ミサト先生の事だから凄いことが書いてあると思ったよ」

 ビクッ!

 アスカのポニーテールが逆立った、そして額から汗。

「そ、そんな事無いわよ、ごく普通のお見舞いのごく普通の手紙だったわ」

「ふ〜〜ん、そう、じゃあ僕はこれで帰るよ」

「えっ、もう帰っちゃうの?」

「まだ完全に治ってないだろ、また悪化したらまずいからね。じゃあまた明日」

 シンジは手を振ると部屋から出て行った。アスカは残念そうにシンジが出て行ったドアをジッと見つめつづけるのであった。

「まだ居てもいいのに・・・でも良いやっ、明日はシンちゃんを起こしに行くわよ〜〜!」

 人差し指を天に向け気合を入れるアスカあった。


 アスカちゃんが学校を休んではシンジ君授業に集中できませんね。ミサトさんは相変わらずからかうし。

 ダッシュで帰るシンジ君、アスカちゃんが心配なんですね。でも会う前にキョウコさんという巨大な壁が(笑)キョウコさんお喋り主婦ですね。

 そしてミサトさんがアスカちゃんに渡したお見舞いの手紙、内容は謎ですね(笑)

 こんな小説でも飽きずに読んでくれた方々に感謝します。


前編

エヴァンゲリオン学園外伝 アスカちゃん、風邪を引く(後編)