エヴァンゲリオン学園外伝
アスカちゃん、泣く
「1年後に本社への転勤か・・・忙しくなるな」
ドイツ、ネルフ独支部に惣流夫妻は勤務していた。2人とも優秀で社内でも評判の夫婦である。現在休み時間、外のカフェで一休みしていた。
「ええ」
キョウコはコーヒーをすすりながら夫の話しを聞いていた。今朝辞令で決まった事である。
「碇に会うのは久しぶりだな」
「そうですね、ユイは元気にしているかしら?」
2人は友も顔を思い浮かべて昔話に花を咲かせていた。
「シンジ君にも会いたいな」
「ええ、写真でしか見たこと無いから可愛い子ですね」
2人はシンジにあった事は無く写真でのみ姿を確認していた。ユイ似で2人ともゲンドウに似なくて良かったと胸を撫で下ろして、会いたかったが時間が無くそれはできなかった。
「アスカと仲良くできるかな?」
「大丈夫ですよ、同い年ですから」
このときアスカ4歳、1年後にシンジと出会う事になる。
「そうか、早く孫が見たいな」
「もう何言っているんですかアナタ、アスカはまだ4歳なんですよ。でも誰がお婿さんになるのかしら」
2人はすでに老後の事まで考えていた。
「だか1つだけ問題がある」
「何ですか?アナタ」
「碇だ」
「ゲンドウさんですか?」
「キョウコは慣れているが、アスカがいきなりアイツの顔を見たらどうなると思う?」
キョウコはゲンドウの顔を思い出し、生唾をゴクリと飲み込む。
「・・・・泣きますね」
「ああ、泣くどころか2度と碇には近づかなくなる。そうなったら困る」
「確かに困りますね」
「碇とのシナリオが台無しになる」
「?シナリオ」
「なっなんでも無い、それでは碇が悲しむ」
「ゲンドウさん可哀想ですね」
コーヒーをすすりながら、愛娘の為に良い方法を思案していた。
「今から慣れさせるのはどうでしょうか?」
「どうやって?」
キョウコは科学者としての頭脳をフル回転させ、方法を考えついた。
「ゲンドウさんの写真を今から見せていくんです、それなら1年後に実物を見ても泣かないと思いますよ」
「おお!それはいいな」
「アスカには酷だと思いますけど耐えてもらわないと・・・」
アスカの泣く姿をおもい、キョウコは涙を流した。
「ああ辛いだろうが私達も頑張ろう。まったく碇め、私の愛する家族を悲しませるなんて外道だな」
顔だけで非難されるゲンドウ。惣流夫妻はその日から実行した。
一緒に帰宅、玄関前にはアスカが2人を待っていた。
「パパ、ママお帰りなさい」
アスカは2人の姿が見えると走って飛びついた。いつもはどちらかが残業となる事が多く、今日のように一緒は珍しかったので嬉しくなった。
「おおアスカ、ただいま。元気がいいな」
「アスカ、ただいま」
アスカは2人に手をつながれ笑顔で自宅に向かったが、キョウコ達は何も知らない無邪気な笑顔に胸が痛かった。
(すまん)
(許してね)
一家団欒の夕食も終わりアスカは父の膝の上でくつろいで今日の出来事を話していた。
「今日ね、お絵かきしたの」
「そうか、どれどれ。おおアスカ上手だな」
「上手ね、アスカ」
まさに幸せを絵に描いたような時間が過ぎていった。1時間過ぎた頃、アスカを膝からおろし2人はアスカの前に座った。
「アスカ」
「なにパパ?」
「この写真を見てみなさい」
「これ?」
裏返しになった写真をひっくり返して見てみる。
「ああ」
「はーい・・・・・・うっうっうううううわあああああああああん!!!パパ、こわーい」
アスカは写真を見た瞬間、手から写真が滑り落ち、笑顔から顔をクシャクシャにさせて泣き始めた。
「そうか・・・すまなかったなアスカ」
申し訳なさそうに頭を撫でるがショックなのか、幼児特有の高音の声で泣きつづける。
「びええええええ!!」
「すまん耐えてくれアスカ、1年後にこの男に会うことになるんだ」
「いやああああ!うわああああん」
床に転がって手足をジタバタ動かしながら、泣く事しかできない。
「アスカ、耐えるのよ」
「マッママ、ひっくひく、助けてー」
たまらずキョウコに抱きつき、泣きじゃくる。
「アスカ、頑張るのよ。これから長い付き合いになるの」
「怪獣こわいよー」
アスカの頭を撫でて、恐怖から戻そうとしていた。
(ふう・・・・ここまでヒドイなんて・・・・)
(そうですね)
2人はため息をつくしかなかった。
(まったく碇の奴、アスカを恐がらせる顔をしおって)
写真のゲンドウは知らない人が見たら驚くほどの笑顔?で写っていた。
(あなた顔で判断してはいけませんよ。ゲンドウさんは優しい方なんですから)
(ああわかっているよ)
(アスカが碇に慣れないことにはシンジ君に会っても進展しないからな)
(?何ですかあなた、それは)
キョウコは自分の知らないところで何か動いているのかと疑問に感じていた。
(むっなっなんでもない)
「ひっくひっく・・・・」
キョウコにしがみついて、ようやく落ち着いてきたが恐怖の為に体が震えていた。
「マッママ・・・ひっく・・・・」
「もう大丈夫よアスカ」
キョウコはアスカの頭をなで瞳をふき、膝に座らせた。
「ねえ・・・あの怪獣さんって何?」
「・・・碇といってねパパとママの友達なんだよ」
「・・・そうよ怪獣さんでもとても優しいから、アスカもお友達になりましょう」
2人は怪獣と言われこけそうになったが、それはそれで良いとしてアスカに慣れさせようとした。
「お友達?」
「ああそうだ!それにシンジ君という男の子にも会えるぞ」
「・・シンジ君も怪獣さん?」
またこけそうになったが、こらえどう答えるか考えた。
(アナタ、シンジ君は怪獣ではありませんよね)
(そうだな、シンジ君に怪獣は失礼だ。碇だけでいい)
答えは決まった。
「シンジ君はアスカと同じ人間で歳も一緒なのよ。仲良く慣れるわ」
「ホント?」
「ええ」
アスカの瞳はまだ見ぬシンジに輝かせながら、喜んでいた。
「わーい!お友達だー」
2人は喜びに一安心したが、まだ課題は残っている。
「それでアスカ、シンジ君と友達になるには怪獣と仲良くしなくてはいけないんだよ」
「・・・仲良くなれるかな?」
指をくわえながら裏返しにされた写真を見た。
「アスカ、怪獣さん見てみる?」
「うっうん・・・・・・」
アスカは震えながら、キョウコに渡された写真を見る。
「・・・・うっうっうううわああああああん!」
1秒と見ることなく写真を捨て、キョウコにしがみつき泣き出した。
「うえええええん!!!やっぱり怖いよーー!」
「頑張ってアスカ」
「びえええええええ!!」
キョウコの洋服を涙で濡らし、顔を振り悪夢を払おうとした。
「仲良くなれるわよね?」
「ええええええん!!」
「優しいわよ」
「うぐうぐ・・・えぐえぐ・・・」
何とか慣れてもらおうとゲンドウの数少ない長所を立て続けに話していった。
「・・・うぐうぐ・・・ひっくひっく・・・・うん・・・・・顔が怖いけど・・・・仲良くなれるかも・・・・」
その言葉に2人は顔が明るくなった。なんとか第1段階クリアーである。
「アスカ、遅いからそろそろ寝ましょうか」
「ひっく・・・う・・うん」
「今日はママが一緒に寝てあげるわね」
「うん!」
アスカはキョウコに手を引かれ寝室に向かった。
「パパ、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
ガチャ
ドアが閉められゲンドウの写真を拾い上げた。
「まったく碇め・・・・・ふふ怪獣か」
次の日、キョウコは休みで朝から特訓?が始まった。アスカは仲良くなろうと努力し写真を見たが、やはりダメだった。
「ぎゃああああああ、怪獣!」
「頑張るのよ、アスカ」
キョウコは愛娘の耐える姿に涙を流していた。アスカはこれから1年間、怪獣ゲンドウを克服すべき特訓した。
「うええええええええええええええええええええん!!」
エヴァンゲリオン学園、第拾八話に少し描いてある初めてゲンドウの写真を見た時の話しです。
怪獣に間違われたゲンドウ・・・・耐えるアスカ、頑張れ。
なんとか克服して、現在に至るわけですね。
ちなみにゲンドウ達のシナリオこの時からあります(笑)
こんな小説でも飽きずに読んでくれた方々に感謝します。
エヴァンゲリオン学園外伝 アスカちゃん、泣く