エヴァンゲリオン学園外伝
碇家、混乱
アスカです。これは私が中学一年生の夏から秋にかけて、肌寒くなった頃のお話し・・・
いつもどおり、私はシンちゃんを起こす為に玄関を開けようとしたわ。
カチャ
「あれ?」
玄関が開かない、カギがかかっているわ?どうしていつもならユイおば様が開けてくれているはずなのに。忘れちゃったのかな、そんなはずは無いわ。もう十年以上続いているのに。
ピーンポーン
私は呼び鈴を押したわ、そしたら・・・・
ガチャガチャガチャッ!ドーーーン!
「!何?」
家の中から物凄い音、何かを倒したような、ひっくり返したような音。
カチャ
物凄い音の後少ししてから玄関が開いたわ、そして・・・
「ア、アスカ君か、おはよう」
「お、おじ様!」
出てきたのはおじ様、それも額が赤くなってい、そして体にはおば様がいつも愛用しているエプロン。プップ・・・ごめんなさい、ちょっと笑っちゃった。でもどうして?
「どうしたんですか?その格好、それにおば様は?」
「あ、ああユイは風邪で寝こんでしまってね。それで私が朝食を用意しようとしているんだが・・・」
その言葉に納得、おじ様がエプロンを着けるなんて誰も予想しないわ。でもおば様大丈夫かしら?昨日は元気だったのに、季節の変わり目だから私も油断できないわ。
「・・・・」
私は言葉を失った。台所の物凄いひどさ。鍋やらフライパンが転がっている。そうか!さっきの物凄い音はこれね。そしておじ様の額の赤さも・・・謎は全て解けたわ。
「みっともない所を見せてしまったね。ユイがいないとこのありさまだ」
おじ様はおば様のかわりに朝食を用意しようとしてたみたいけど、これじゃあね・・・・物凄い散らかり様、おば様の偉大さがわかるわ。まったく男性って何もできないのかな。
「おじ様、私が作ります」
「おお!やってくれるのかね」
サングラスのしたから瞳をキラキラさせて、私の言葉を心底嬉しがっていたわ。それにしても朝からサングラス・・・・おじ様の趣味って・・・・まさかシンちゃんはならないでしょうね。
「でも、時間が無いから簡単なものになりますよ」
「構わんよ。それより頼む」
「はい!」
イスに座るといつもの様に新聞を読み始めたわ。まだ鍋とか散乱したままなんだけどね。おじ様、片付けるって事頭に無いのかしら?
ジュージュ!
私は目玉焼きにソーセジ、スープ、サラダといったごく簡単な誰にでも作れるものを作ったの、でもシンちゃんは・・・できるかな?ご飯は昨日のうちからタイマーでセットされていたからOKと忙しい、忙しい。時間は・・・シンちゃんを起こさなきゃ!
でも手が塞がっているのよね。起こしに行きたいけど、誰か手が空い・・・おじ様に頼もうかしらヒマそうだし。
「おじ様」
「ん、なんだね?アスカ君」
「シンちゃんを起こしてきてください」
「そうか、しかしアスカ君が起こしに行った方がシンジが喜ぶんじゃないか?」
ぽっ!な、何を言っているんですか!そ、それは私が起こしたいけど今は忙しくって・・・・
「おじ様!」
「ははは、すまんすまん。どれシンジを起こしに行くか」
「もうっ!」
おじ様は笑いながら新聞をたたむと、立ちあがりシンちゃんを起こしに行ったわ。こっちは後もう少し・・・・
「ぎゃあああああああああああああ!!!!あう・・うう・・・・・ぎゃう」
「!」
な、何?今の叫び声は、それに最後の呻き声、聞き覚えがある・・・・シンちゃん!私は火を止めて急いで部屋に走ったわ。部屋手前まで来たとき、おじ様がちょうど部屋を出てきたの。
「おじ様、どうしたんですか?」
「ふっ問題無い」
「え?」
サングラスをクイっと上げるとニヤリと口元を歪めて台所に戻って行ったわ。おじ様ってホントにわからない。
「アスカ君、朝食はまだかね?」
「あっはい!」
シンちゃんが気になるけど時間も無いし、まあいいかな起きたみたいだし。再び台所に戻って配膳の準備をしていたら・・・・・
ドタドタドタ!!
「父さん!」
「シンちゃんおはよう」
シンちゃんが走ってやってきたの、なんだか怒っているみたい。
「なんだシンジ」
「変な起こし方やめてよ!」
「ふっシンジ、お前はまだまだ甘いな。隙がありすぎる」
え?なに?おじ様シンちゃんをどんな起こし方したの?気になる。
「まさか、あそこで、あーーー!」
シンちゃんは頭を掻き毟りながら怒っている。どんな起こし方だったの?気になる。
「いつもアスカ君が起こしてくれるから安心していたのだろう」
「そりゃあ、アスカが起こしてくれるから、安心して寝ていたのに」
わ、私が起こすから安心?・・・・そ、そんなこと考えていたの・・・ぽっ!
「修行がたりんな。それより今日はアスカ君が作ってくれたんだ。心して食べろ」
「アスカが?母さんはどうしたの」
「風邪をひいたようだ。今日一日安静が必要だ」
「そうなの、大丈夫かな?ご飯をアスカ?」
え?あ?ご飯、ご飯ね。ボーとしちゃったみたい。あんな事言うもんだから・・・もう。
おじ様とシンちゃんにご飯をっと・・・・なんだが新婚みてい・・・ってキャ!
パクパクパク、味はうん上出来ね。よかったー不味かったらどうしようって、心配していたけどよかった。
「おじ様、お茶です」
「うむ、ありがとう」
「シンちゃん、おかわりは?」
「ん、いらない」
二人が食べている間私は、サッと作った栄養満点アスカちゃん印の野菜スープをおば様に持っていったわ。部屋をノックして。
「おば様」
「あらアスカちゃん、どうしたの?」
おば様は額にタオルを乗せて寝ていたわ。起こしちゃった、ごめんなさい。顔が赤く熱が高そう。大丈夫かな?
「風邪大丈夫ですか?スープを作ってきたんです」
「心配ないわよ、寝ていれば治るわ。作ってくれたの嬉しいわ」
上半身をおこすと、スープを冷ましながら飲んでいったわ。額から汗がでていて苦しそう。
「美味しいわね」
「そんな事ないです」
優しい笑顔、私もおば様みたいになりたいな。
「ごめんなさいね。ご飯作らせたみたいで」
なんでしっているの?あっそうかあれだけ騒いでいたらわかるわね。
「いいえ、作るの好きですから」
「ふふ、シンジにね」
ぼんっ!お、おば様!
「な、なななななな何を言っているんですか!」
「ふふ、赤くなっちゃって」
「もう」
「家の男は何にもできなくて困るわ。アスカちゃん、早くシンジを貰ってね」
「な、ななななななな!!」
「真っ赤になっちゃって」
顔が炎の様に熱い、もう恥ずかしい!
そしておば様は薬を飲んでもう一眠り、早く良くなってね。
食事が済んで、時間は後少しは大丈夫ね。おじ様は新聞、シンちゃんは食後のお茶、私は洗い物。ふとおじ様が新聞をたたんで、両手を口元に持っていったの。このポーズがでると、なーーんかイヤな予感がするのよね。
「シンジ」
「何、父さん?」
「実はな今日、大事な会議があるんだ。」
「ふーん」
「それでどうしても家を空けなければならない」
会議、そういえばパパも言っていたわね。でもそれがなんで?
「それで?」
「今ユイは風邪で寝ている。よってシンジ今日はユイの看病、掃除、洗濯、家事一切はお前がやれ」
「はい、はい?え、ええええ!!」
・・・・やっぱり、でもシンちゃんって家事できたかな?
「無理だよ。やった事ないし」
やっぱりシンちゃんはテーブルに両手をつき、おじ様に談判している。
「お前しかいない。シンジ乗れ、いやするんだ」
「僕に出来るわけないよ」
「・・・シンジ、お前には失望した。今すぐ帰れ」
・・・おじ様、ここが家なのに。
「父さんが何言っているのか僕にはわからないよ」
確かに私にもわからないわ。お得意の台詞ね。
「なにぶん時間が掛かるだろう、今日は学校を休め」
「や、休むって」
そこまでして、おじ様は心底おば様を愛しているのね。
「親公認の休みだ。これほど素晴らしい休みはないぞ」
「で、でも!」
シンちゃんは渋っている。はっ、おじ様の口元が・・・ニヤリ
「来月の小遣い抜きだな」
やっぱり最終兵器ね。
「喜んでやらせていただきます」
シンちゃん・・・頭を下げて、そんなにお小遣いが欲しいのかしら。そうよね。でもおば様の看病も大事よ。
「アスカ君、そういう訳だから、すまんが今日は一人で行ってくれ」
「あ、はい」
「アスカ、ミサト先生には風邪って言っておいて」
「う、うん」
風邪で休む・・・・まあ間違ってはいないけど。
「ふっシンジ、親公認で休むとは言わんのか?」
「い、言えるわけないよ」
「お前もまだまだだな、アスカ君サボリと言ってもいいぞ」
「は、はあ・・・」
・・・・・まったく。
「それじゃあアスカ行ってらっしゃい!」
私はシンちゃんを残して学校に向かったの、本当に大丈夫かしら?
季節の変わり目は風邪をひきやすいですね。とっいう訳で風邪ネタです。
ユイの風邪で碇家の機能はダウン、まったく家事ができないシンジ、謎の起こし方をするゲンドウ、楽しい家族です?
これはアスカの思い出によって描いています(一人称かな?)普段は台詞以外は説明的に書いているので、こういう描き方は楽しく描いています(^^)
こんな小説でも飽きずに読んでくれた方々に感謝します。
エヴァンゲリオン学園外伝 碇家、混乱