エヴァンゲリオン学園外伝

 6月6日、私に弟ができました。

「レイちゃん、あの子がレイちゃんの弟よ」

「あの子?なんだかお猿さんみたい」

 お隣のキョウコおばさんに連れられて来た病院、ガラス越しに見る私の弟は他の赤ちゃんと同じようにお猿さんに見えたわ。

「ふふ、産まれたばかりはみんなお猿さんに見えるのよ。日にちが経てば可愛くなるわよ」

「そうなの?」

「そうよ、レイちゃんの弟だからすっごく可愛いわよ」

 微笑んだキョウコおばさんが自分のお腹をさすったわ。キョウコおばさんも12月に出産の予定、私の弟と同い年になるのね。

「お母さんには会えるの?」

「今日は疲れていると思うから明日また会いにきましょう」

「お父さんは?」

「お父さんは・・・ねえ〜」

 キョウコおばさん、なんだか困った顔をしているわ。

「お父さんは?」

「騒ぎすぎて病院からつまみ出されちゃったのよ」

「・・・ごめんなさい」

 お父さん、恥ずかしい・・・

「謝らなくて良いのよ、帰りに甘いものでも食べましょうか?」

「うん」

 お母さんに会えなかったのは残念、お父さんが騒いだのは恥ずかしい。









 次の日、お母さんに会いに行こうと思ったら、お母さんの体調が悪くて行けなかった。結局数日後になったわ。

 お母さんが居る部屋の前、なんだかドキドキする。

「レイちゃんどうしたの?入りましょう」

 キョウコおばさんがドアを開けようとしたわ。

「私が開けるの」

「あらあら、ノックをしてから開けなきゃダメよ」

「うん」

 私はドアをおもいっきりノックしたわ。そうしたら中から優しい返事が聞こえた。

「お母さん!」

「レイ、来てくれたのね」

 私はお母さんの胸に飛び込んだわ。頭を撫でてくれるお母さんの手、すごく暖かい。

「今日は甘えん坊さんねえ」

「うん、甘えん坊さんなの」

 しばらく会っていなかったからずっとこうしていたい。

「ユイさん、体調はどうですか?」

「ええ、大丈夫よ。レイの面倒見てくれてありがとう」

「レイちゃんは素直で家事も手伝ってくれたから助かりました」

「お手伝いしたの、偉いわね」

「うん」

 また頭を撫でてもらった、嬉しい。

「あら〜〜可愛いわね〜」

「気持ちよく寝ているでしょう」

 お母さんの隣にある小さなベッド、私の弟が寝ている。

「レイ、あなたの弟、シンジよ」

「シンジ・・・」

 シンジ・・・弟の名前なのね。

「手が小さい」

 すごく小さいけど、ちゃんと爪がある。指で触ってみると掴んでくる。

「シンジ・・・」

「ふふ、レイちゃんさっそくお姉ちゃんの顔になっているわね」

「私がお姉ちゃん」

「そうよレイ、姉弟仲良くするのよ」

「うん、私お姉ちゃんになってシンジの世話をするの」

「ユイさん、レイちゃん頼もしいですね」

「ええ」

 お母さんの期待に応えるの!


ユイ〜〜〜!シンジ〜〜〜!

 ドアが開いたと思ったらお父さんが大声を出して入ってきたわ。あっシンジが大声にビックリして泣き出した。

「あなた!シンジが泣き出したでしょう、静かにしてください。それに仕事はどうしたんですか?」

「す、すまん・・・興奮してつい、仕事は早退してきた」

「・・・」

 お母さん呆れているわ。

「お父さん、入ってきちゃダメ!」

「おおお、レイ〜」

 私はお父さんを押して部屋の外へ出たわ。

「お父さん、ここは病院なの大きな声出したらダメなの!」

「す、すまん・・・」

 シンジの泣き声が外まで聞こえる。お父さんの声によっぽどビックリしたのね、シンジはお姉ちゃんが守るわ。

「レイ、早く中へ入れてくれ」

「ダメ、シンジが泣き止むまで」

 今はお母さんがあやしているから我慢しなさい。

「泣き止むまで入れないのか?」

「入れないの」

「そうか・・・」

 ガックリ肩を落とすお父さん、可哀想だけど我慢して。ほらシンジの泣き声がだんだんと聞こえなくなってきた。

「そ、そろそろ泣き止んだんじゃないのか?」

「確認してみる」

 ドアをちょっと開けて中を覗いてみたわ。

「お母さん、シンジ・・・」

 お母さんに抱かれているシンジは泣き止んで寝ているわ。

「レイ、良いか?」

「うん、今度は静かにして」

「わかった」

 私とお父さんは足音を立てないように部屋に入ったわ。

「おおおおシンジ〜」

「お父さん、シ〜〜」

 また興奮して叫びそうになっている。

「おお、シ〜〜だったな」

「ふふ、シンジ君可愛いわね」

 今はキョウコおばさんが抱いているわ、産まれてくる赤ちゃんの為の練習ね。

「キョウコさんは12月出産予定だったわね」

「ええ、もし女の子だったらシンジ君と結婚させちゃおうかしら」

「それも良いわね」

「おお!キョウコさんの子供ならシンジも安心だな。今から許婚が決まるとはシンジは幸せだな、はっはっは」

「お父さん、気が早すぎ」

 まだ男の子か女の子かわからないのに気が早いのね。

「おっとレイの言うとおりだな、気が早すぎたよ」

「ふふ、レイちゃんは冷静ねえ〜シンジ君を抱いてみる?」

「うん」

「はい、首が座って無いから気をつけてね」

「うん」

 キョウコおばさんからシンジを渡してもらった、小さくて可愛い寝顔ね。

「おおっ!レイがシンジを抱いている、記念撮影だ。レイこちらを向きなさい」

 お父さんがデジカメを取り出したわ、向きなさいって言うけれどそんな余裕はないの。

「見る余裕はないの」

「そうか、一生懸命さも良いぞ〜うおおおお!!

 あ、お父さんが興奮して大きな声を出したらシンジが泣き始めちゃった。

「あなた!叫ばないの」

「す、すまん、また興奮してしまった」

「お母さん、シンジが〜」

 ワンワン泣いてるわ、すごく大きな泣き声。

「レイ、あやしてみなさい」

「私が?」

「ええ、お姉ちゃんとしての初仕事よ」

「お姉ちゃんとしての・・・うんやってみる」

「レイちゃん頑張って」

「おお!レイの初仕事か!これは撮影しないといけないな!」

「あなた、静かにできないなら出て行ってください」

「す、すまんユイ〜」

 シンジ泣き止んで、お姉ちゃんがずっと守ってあげるわ・・・












「レイ姉ちゃんどうしたの?笑ったりして」

「何でもないわ」

 リビングでシンジとアスカちゃんがテレビゲームをしているわ、二人とも仲が良いわね。

「レイお姉ちゃんもする?」

「ううん、見てるわ」

 キョウコおばさんに産まれたのがアスカちゃん、二人とも小さい頃からずっと一緒。

「シンジ、今日が誕生日だったわね」

「うん、そうだったね」

 アスカちゃんはさっき来たときにプレゼントを渡していたわね。

「これがお姉ちゃんからの誕生日プレゼントよ、アスカちゃんに」

「ええっ?僕にじゃないの」

「どうしてアタシに?」

「誕生日じゃない人にプレゼントをあげる、ちょっと外国の風習を真似してみたの」

「どこの外国だよ?」

「秘密よ、はいアスカちゃん」

「あ、ありがとうございます」

 アスカちゃん戸惑っているけど問題ないわ。

「あ、開けていい?」

「良いわよ」

 アスカちゃんは私が渡した封筒を恐る恐る開けたわ。別に危険物は入ってないわよ。

「こ、これは!」

「何?アスカ、僕にも見せてよ」

「シンちゃんの赤ちゃんの時の写真だわ」

「そうよ、産まれたままの写真もあるわよ」

「シンちゃん可愛い〜〜」

「な、なんでそんなのアスカにやるんだよ〜」

「良いじゃない、シンジの誕生日なんだし」

「僕の誕生日ならプレゼントは僕にだろ、その写真は没収!」

「ああシンちゃん、返してよ〜」

「アスカちゃん問題ないわ、後でメールに画像を添付して送ってあげるわ」

「レイお姉ちゃんありがとう〜」

「シンジ、だから没収しても意味がないわよ。アスカちゃんに返してあげなさい」

「くっ、レイ姉ちゃん卑怯な」

 ふふ、まだまだ甘いわね。

「レイ姉ちゃんって・・・ミジンコのように小さい時はレイお姉ちゃん、レイお姉ちゃんって後ろを付いて来たのに・・・お姉ちゃん悲しい」

「ミジンコってどんだけ小さいんだよ〜」

「へえ〜シンちゃんってミジンコのように小さかったんだ〜」

「違うって〜」

 ふふ、からかうのは面白いわね。

「冗談はこのくらいにして、シンジ誕生日おめでとう。お姉ちゃんからのプレゼントよ」

「あ、ありがとう」

「あら拍子抜けした返事ね」

「まさか本当にくれるとは思わなかったから」

「毎年あげているでしょう」

「そうよシンちゃん、レイお姉ちゃんにちゃんとお礼を言わなきゃダメよ」

「う、うん。レイ姉ちゃんありがとう」

「どういたしまして」

 照れながらお礼を言っているシンジ、ふふまだまだ守ってあげないといけないわね。


 シンジ君の誕生日、姉であるレイちゃんには敵いませんね(^^;)

 シンジ君とアスカちゃんは産まれた時から両親公認の許婚でした(笑)

 こんな小説でも飽きずに読んでくれた方々に感謝します。


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