エヴァンゲリオン学園外伝
春眠暁を覚えず
寒い冬が過ぎると次に来るのは春、気温は次第にあがり春の花が咲きめぐる。桜の花は3分咲きと云うところであろうか。
「zzzz」
シンジは暑くも無い寒くも無い暖かい気温で惰眠をむさぼっている。いいやこれは違うシンジはいつも惰眠をむさぼっているのだ。
「zzzz」
心地よさそうに眠るシンジ、笑顔から楽しい夢の世界だろう。
「zzzz」
誰も彼の惰眠を妨げる者はいないだろう…
ガラッ!
「シンちゃん、朝だよ〜」
…いた、アスカである。真っ赤なランドセルを背負って部屋に入ってきた。
「zzzz」
「シンちゃん、起きないと遅刻するよ」
そう、シンジは平日に惰眠をむさぼっていたのである。シンジの寝坊がいつもの事で毎日アスカが起こしにくるのだが、特に春がひどい。起こすのに一苦労である。
「シンちゃん!シンちゃん!起きて〜」
「zzzz」
揺さぶるが起きない。
「シンちゃん!シンちゃん!」
「zzzz」
起きない。
「もうっ!」
流石にアスカは呆れた。大声を出しても揺さぶっても起きない、頬をプウ〜と膨らまして怒る。その間も時間は過ぎていく。
「アスカ君、アスカ君」
アスカの背中から呼ぶ声、ゲンドウである。
「はい?おじ様」
「シンジは起きないのかね」
朝からサングラスをかけているゲンドウ、アスカはその姿を不思議に思う。
「はい…早く起きないと遅刻するのに」
「そうか、これを読みなさい。これをすると一発でシンジは起きる」
ゲンドウは一冊の本を渡した。
「これは?」
「ふっ、起きないシンジにはこれが良い薬だよ」
ニヤリと笑うとゲンドウは部屋を出ていった。
アスカに渡された本…「上手なカカト落し」と書かれていた。
「これでシンちゃんを起こせるのね」
アスカは早速、本を開いて実行に移す。
「ええと、初めは…目標物の頂点、頭に狙いを定める。ふんふんシンちゃんの頭ね」
「次は自分の利き足を目標物の上で停めておく」
シンジの頭に自分の足を持っていき、次のページをめくった。
「最後は天から稲妻が落ちるように、足を振り下ろす。えいっ!」
ガツン!
カカト落しが決まった。
「やったあ、成功!」
決まった事にピョンピョン跳ねて喜ぶアスカ、シンジは果たして起きたのだろうか?
「さあシンちゃん、朝だよ〜」
「………」
「シンちゃん?シンちゃん?」
無言のシンジ、頭からピヨピヨとひよこがでているようだ。
「もうっ起きないの〜もう一回するわよ」
「………」
返事をしないシンジにアスカはもう一回足を振り上げ下ろした。
ゴンッ!
「今度は起きたでしょう。シ〜ンちゃんおはよう」
だがシンジは…
「………」
起きない。
「もうシンちゃん!」
アスカは怒って部屋を出ていった。
「おじ様」
「どうしたアスカ君?」
台所に向かうと昆布茶を飲んでいるゲンドウに本を返した。
「この通りにやったけどシンちゃん起きません」
「むうそうか、しょうがない奴だなシンジは」
「まったく誰に似たんでしょうね」
お気楽な夫婦。
「アスカちゃん、ごめんなさいね。遅刻するから先に行っててちょうだい」
「いいえ、おば様私がシンちゃんを起こしますから」
アスカは走ってシンジの部屋に戻っていった。その姿を微笑ましく見る夫婦。
「あらあら、シンジは幸せ者ね」
「ああ、あの程度で起きないとは未熟者だな」
その後アスカはシンジを起こす事に成功するが、遅刻をするのであった。
春は眠い(−−)アスカちゃんに起こされるシンジ君…気絶している(笑)
ゲンドウから渡された本を怪しまずに実行するなんてアスカちゃん、二回もカカト落しをするなんてちょっとへっぽこ?天然?
シンジ君は本当に幸せ者?
こんな小説でも飽きずに読んでくれた方々に感謝します。
エヴァンゲリオン学園外伝 春眠暁を覚えず