エヴァンゲリオン学園外伝

誕生日

「ふう〜」

 アタシの隣でシンちゃんが溜め息を付いたわ。

「どうしたの?溜め息なんか付いて」

「付きたくなるよ、今日は母さんとレイ姉ちゃんの誕生日だろ」

「うん」

 3月30日はユイおば様とレイお姉ちゃんの誕生日、親子で誕生日が一緒なのは珍しいわよね。

「それで、どうして溜め息を付くの?」

「誕生日だからプレゼントを買わないといけないだろ。それも月末に二人分もだよ、月初めなら良いけど、月末には小遣いが無くなっているんだよ」

「それはシンちゃんが悪いんでしょう。3月は2人の誕生日だってわかっているでしょう」

 アタシはちゃあんとお小遣いを残してあるもん。

「わかっているけど使っちゃうんだよ、それが男ってもんなの」

「意味わかんない、早く選びましょう」

 アタシ達はプレゼントを選びにデパートに来ているの。アタシは贈るものは決まったけど、シンちゃんは金額で苦労しているわ。

「高いなあ〜」

「少しくらいなら、貸してあげるよ」

「いいよ、貸してもらってまで買う気にはなれないよ。自分のお金で買わないとね」

「うん」

 デパート内を回っては買う品を迷っているわ。

「これにしようっ!」

「決まったのね」

 シンちゃんが選んだのは!

「僕の金額ではこれが精一杯だよ」

 ハンカチ、プレゼントの定番ね。ふふふ、でもずっと悩んでいたんだから、ユイおば様とレイお姉ちゃんへの気持ちはこもっているわね。

「喜んでくれるかな?」

「シンちゃんが選んだんだもん、喜ばないはずは無いわ」

「アスカは何を買ったんだっけ?」

「アタシはユイおば様にはスカーフ、レイお姉ちゃんにはトートバッグよ」

 ちょっと奮発しちゃった。

「うわ〜何そのブルジョワは〜?小遣いが高い人は違いますね〜」

 確かにシンちゃんよりお小遣いは高いけど・・・

「ブ、ブルジョワじゃないもん。シンちゃんみたいに無駄遣いしてないもん、この前もガンダムのプラモデル買っていたでしょう、それを我慢すればプレゼントを買えたんだよ」

「そ、それは・・・」

「いっぱいプラモデルを買っているシンちゃんの方がブルジョワだもん」

 時々おじ様から臨時のお小遣いを貰っているし・・・

「わ、わかったから泣くなよ〜」

「泣いてないよ、太陽の光が眩しいだけだもん」

「ここ室内なんだけど〜」

「眩しいの!わかったら早く買ってくるの〜」

「は、はい〜〜」

 うう、興奮しちゃった。シンちゃんが買っているうちに涙を拭かないと・・・








「買ってきたよ、ゴメンな」

「ううん、大丈夫。汗が目から出ただけだから」

「凄いところから汗が出るんだな」

 シンちゃん苦笑しているわ、ちょっと大げさだったかしら?

「それじゃあ帰ろうか?」

「ちょっと休憩してから帰りましょう。ここの喫茶店のケーキが美味しいの」

「お金ないよ」

「そのくらい奢ってあげるわよ」

「やっぱりブルジョワじゃないか」

「違う〜〜」

 もう〜ちょっとしただけでこれだもん。










「ここなの?」

「うん、すっごく美味しいの」

 デパート内にある喫茶店、ここは持ち帰りもできるから良いのよね。

「何が良いかな〜」

 ママと来た時はちょっと高いケーキを選ぶんだけど、今日は安いケーキね。

「うわっ高っ」

「え、何?」

 シンちゃんが驚いているわ、何かしら?

「本当だわ、桁が一つ違うわね」

 イチゴのケーキだけど、イチゴの色が赤じゃなくて白だわ。

「白イチゴのケーキか、甘いのかな」

「酸っぱく見えるけど、甘いみたいね」

 数が少ないから高いみたいね。

「食べてみたいね」

「うん、でも予算オーバーしちゃう」

 白イチゴのケーキ一個でお財布が空っぽになっちゃう。でも一個をシンちゃんと一緒に・・・






「シンちゃん、あ〜〜んして」


「おいおい、子供じゃないんだから自分で食べれるよ」


「シンちゃん、子供だもん。あ〜〜んして」


「はっはっは、アスカにはかなわないなあ」


「美味しい?」


「うん、美味しいよ。アスカもあ〜んして」


「ええっ!?恥ずかしいよ」


「はっはっは、恥ずかしがり屋さんだなあ。そんなアスカは可愛いよ」


「シンちゃん・・・ぽっ」





「アスカ、何食べるか決まった?」

「あ〜〜ん」

「アスカ?何どうしたの?」

「え?あ?アタシ、イチゴケーキにする」

 シンちゃんの声で気がついたわ、思わず妄想の世界に行っていたわ、恥ずかしい〜〜

「シンちゃんは何にするの?」

「僕はシースケーキにするよ」

 アタシとシンちゃんはコーヒーも注文して席に座ったわ。

「ふう〜〜選ぶのに疲れたよ」

「かなり悩んでたもんね」

「うん、悩みすぎて頭が痛くなったよ」

「大げさねえ」

「大げさじゃないよ。糖分を取って身体を癒さないと」

 ふふ、シンちゃんケーキを頬張っているわ。それほど疲れていたのね。アタシも食べよう。

「う〜〜ん、美味しい」

 真っ赤なイチゴが甘くて美味しい〜

「アスカは本当にイチゴケーキが好きだね」

「うん、イチゴと生クリームがベストマッチしているのよ、考えた人は天才ね」

「大げさだなあ、そのイチゴが美味しいなら白イチゴってもっと美味しいんだろうね」

「値段が高いから食べたことないけど美味しいと思うわ」

 食べてみたいけど、高いから買うのに勇気がいるわね。











「ただいま〜」

「お邪魔しま〜す」

 喫茶店でゆっくりしてたら遅くなっちゃった、もう誕生日パーティーの時間だわ。

「お帰りシンジ、いらっしゃいアスカちゃん」

 ユイおば様が出迎えてくれたわ。

「アスカがゆっくりしてたから遅くなっちゃったよ」

「え〜〜アタシのせいなの?シンちゃんがおかわり無料のコーヒーをいっぱい飲んだからでしょう」

「ふふふ、相変わらず仲が良いわね。準備が出来ているからリビングへ行きなさい、レイも待っているわよ」

「わかったよ、行こうアスカ」

「うん」

 アタシとシンちゃんはリビングへ向かったわ。レイお姉ちゃんとゲンドウのおじ様が座っていたわ。

「お帰りなさい、遅かったわね」

「うん、アスカのトイレが長かったんだよ」

「シンちゃんひど〜い、長くないよ〜」

 もう〜意地悪。

「さあ、みんな集まったから始めましょうか」

「うむ、レイ、ケーキを出しなさい」

 おじ様がケーキを買ってきたのね。レイお姉ちゃんが台所へ取りに行ったわ。



「あ〜〜そのケーキは!」

 レイお姉ちゃんが持ってきたケーキは、白いイチゴが沢山乗っているケーキだわ。

「はっはっは、アスカ君驚いたかね?」

「はい、これもの凄く高いんですよ」

 ワンホールなら万単位するのに。

「うむ、高かったな。だがユイとレイの誕生日だ、むしろ安いケーキだったな」

 さ、流石おじ様ね、愛を感じられるわ。

「あれ?ローソクは立てないの」

「立てないわ、そんな事する必要はあるの?」

「母さんとレイ姉ちゃんの分ならケーキがロウソクだらけだね」

 シ、シンちゃん!

 ゴゴゴゴゴゴゴ!

 お、おば様とレイお姉ちゃんの気が凄いわ。でもシンちゃんは気付いていない。

「「シンジ」」

「何?二人ともどうしたの」

 シンちゃん空気読めてないわ、アタシにはわかるわ。

「「ちょっと向こうの部屋へ行きましょう」」

「え?これからパーディーをするんじゃないの?」

「「その前に・・・お仕置き」」

「ええっ!?」

 ふ、2人の笑顔が怖いわ。シンちゃんが首根っこを捕まれて引きずられて行く〜

「お、おじ様、2人を止めて」

「アスカ君、あの笑顔が出たら私には止められない。シンジの安全を祈ろうじゃないか」

「天井を見上げて目を閉じないでください〜〜」





 あ〜〜〜れ〜〜〜〜〜


 ああっシンちゃんの叫び声がリビングまで聞えるわ。助けてあげれなくてごめんなさ〜〜い。


 ユイさんとレイちゃんの誕生日、シンジ君とアスカちゃんはプレゼントを買いにデパートへ。アスカちゃんはデート気分ですね。

 シンジ君の失敗は女性に年齢の分だけローソクを立てるか聞いた事でした(^^;)

 こんな小説でも飽きずに読んでくれた方々に感謝します。


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