これを読む前にエヴァンゲリオン学園
あらすじ
病院に収容されたアスカとマナ
マナは幸い軽傷ですんだがアスカは面会謝絶
シンジはやっとのおもいでアスカに面会する
そしてシンジが見たのは
変り果てたアスカの姿
シンジはショックを受け姿を消した
エヴァンゲリオン学園外伝
裏九話
シンジ、失踪
「・・・・ただいま」
ミサトは元気無く、ドアを開けた。顔には疲れの色、瞳は少し赤い。
「?」
一瞬ミサトは寂しい気分を感じた、家の中に気配を感じなかった。
「シンジ君?帰ってないの」
玄関には靴は無い、シンジの部屋に向かい確認した。想像通りに居なかった。
「・・・・・何もしてやれないなんて、保護者失格ね」
携帯を取りだし、短縮ボタンを押す。
「・・・シンジ君は?」
「はい、現在サードチルドレンは学校裏山の野原にいます」
「わかったわ。監視お願いね・・・」
そして携帯を切ると深くため息をついた。
「ごめんね・・シンジ君」
自室に向かうミサトの頬には流れるものがあった。
焚火を囲むシンジとケンスケ
「いいのかシンジ?」
「・・・・」
ケンスケは何度も話しかけるがシンジは体育座りをしたまま、焦点が合っていない瞳で炎をずっと見つづけていた。辺りは火の為に木の音が静かな暗闇に響いた。
「ふうー、言いたくないならいいよ。それより空いただろ?食べろよ」
「・・・・」
先ほどから火にくべていた飯盒を取りふたを開け中身を確認すると、ご飯はふっくらと炊けていた。それを携帯食器にわけ、缶詰を開けシンジに渡した。
「モグモグモグ、うーんちょっと芯が残ったかな。ほら食べろよ、そうしないともたないぜ」
「・・・・・うん・・・・」
ゆっくりとした動作で食器を持ち上げるとスプーンでご飯をすくい、ゆっくりと口にいれゆっくりと噛み砕いた。
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
無言の夕食が続いた。
(・・・シンジの奴、こんなに落ちこんでいるのは初めてだ、何があったんだ?)
「何度も聞いて悪いと思うが、何があったんだ?俺で良ければ相談にのるぜ」
食べ終えたケンスケは食器を置くと、このままではいけないと思い聞いてみる事にした。
「・・・・・・・・・たんだ」
「え?」
「・・・アス・・・・・なかった・・・・」
シンジはスプーンを握り締め、何度も呟やいたがケンスケには聞こえなかった。懸命に聞こうと耳をこらした。
「僕はアスカを守りきれなかったんだ・・・・」
「!」
ケンスケはそこである事を思い出した。ある日にマナが包帯を巻いて登校してきた事を、そしてアスカがその日から登校してこなかった事を。
「・・・・そうか」
「僕の力不足のせいなんだ」
ギュッとコブシに力をいれ自分の不甲斐なさに怒りだすシンジ、ケンスケはだた見る事しかできなかった。
「・・・それで惣流は?」
「・・・まだ病院・・・意識が戻らないんだ・・・」
「・・・・」
「・・・・」
沈黙、炎が風で揺れる。
「それで?シンジはどうしてここにいるんだ?」
「え?」
ケンスケの突然の声にシンジは驚きの声を上げた。
「だからどうしてここにいるんだよ?逃げ出してきたのか?」
「・・・ち、違うよ・・・」
「いいや、何もできないから逃げ出したんだ」
「・・・」
ケンスケの睨みにシンジはおもわず目をそらす。
「シンジ、お前は力不足じゃない。今回は仕方が無いがまだお前にやれる事がある」
「え?」
「惣流のそばについてやることだ」
「アスカのそばに?」
驚くシンジに微笑むケンスケ。
「ああ、たとえ意識が無くてもお前の意識を感じているはずだ。それも近くにいればいるほどな」
「そんなことあるわけないよ・・・」
「バカヤロウ!」
ボカッ!
「うっ」
ケンスケの右ストレートがシンジの頬に入り草むらに倒れる。
「いいかシンジ!人間ってのはな、手術や薬で元気になるものじゃないんだ。人を想ったり想われたりする気持ちで元気になるんだ」
「!」
「だから惣流の意識が無くてもお前を想っている」
シンジの腕を掴むと立ちあがらせる。
「・・・わかったよケンスケ、僕は誰よりもアスカの事を想っている。僕は・・・」
「そうか行けシンジ!」
「ありがとうケンスケ」
シンジは走りながら礼を言うと暗闇の中に消えた。
「ふうー、カッコイイ事を言いすぎたかな」
再び座ると先ほどから入れていたコーヒーを口にした。
「にがっ!」
第八話でアスカが読んでいた小説の続きです。ダーク色が強い作品です。
ほのぼのSSを描くjun16路線を外したこのSS、どうでしょうか?
くわーーーーケンスケ!カッコイイぜ!今までの作品でケンスケは凄く脇役だったので今回は主役です。それもシンジにアドバイス。
こんな姿は二度と見られないでしょうね(笑)
こんな連載小説でも飽きずに読んでくれた方々に感謝します。
エヴァンゲリオン学園外伝:裏九話 シンジ、失踪