「この盗撮野郎〜〜〜!」
ドゴッ!
「うげええええ〜〜!」
惣流に殴られた。
「勝手に撮るのはイケナイと思いま〜〜〜す!」
ゲシッ!
「があああああ〜〜〜!」
霧島に踏みつけられた。
「血の涙を流すといいわ」
ブシュッ!
「ぐおおおおおお〜〜!」
綾波に目を突かれた。
「まったく、アタシ達の写真を撮って売るなって散々言っているのに懲りないわね、今度やったら承知しないわよ」
そ、惣流の拳が痛い・・・
「売り上げはバツとして貰っておくわよ」
き、霧島〜〜それは大事な資金源なんだ〜〜
「それでパフェを食べに行きましょう」
あ、綾波〜〜行かないでくれ〜〜〜
「く、くそう・・・今日の売り上げがパーになった・・・」
「ケンスケ〜お前も懲りんやっちゃの〜〜身体大丈夫か?」
「三人を敵にまわしたら身体がいくつあっても足りないよ」
「ふっシンジ君、僕はシンジ君の為なら彼女達を敵にまわせるよ」
「カヲル君・・・キュン」
「シンジ君」
こら〜〜目の前で妖しい雰囲気になるんじゃない、気持ち悪いだろうが!でもシンジと渚の写真も女子達に高く売れるんだよな。
「ケンスケ、立てるか?」
「あ、ああ」
トウジに肩を貸してもらってようやく立てたよ、イタタタ・・・体中が痛い、あいつ等は手加減しないからな。
「それじゃあ、ワシらもそろそろ帰るか、お好み焼き食っていこうぜ〜」
「うん、僕はいいよ」
「お好み焼きはいいね〜リリンが生み出しだ文化の極みだよ」
「お、俺は遠慮しておくよ」
「なんでや?」
お好み焼きを食べに行きたいけど、ちょっと用があるんだよな。
「図書室によって行くんだ」
「おお、勉強か。頑張れよな」
「ああ」
トウジ、シンジ、渚に別れを告げて図書室へ向かうぞ。
jun16 Factory presents
EVA小説掲載1000本記念小説
adoration
勉強と言っても学校で習ったツマラナイ勉強ではない、俺がする勉強は写真の勉強だ。今は撮影の腕は下手だがいつかは、いつかは有名なカメラマンになるのが夢なんだ。写真を撮って売りさばいているのもカメラの機材を買う資金源にする為だ。さあ今日もカメラ、撮影の本を読んで勉強だ!
放課後の図書室は静かだ、勉強に集中できる素晴らしい環境だ。俺の他にも勉強をしている生徒が何人か居る、まあクラスが違うから名前は知らないけどね。
ここの図書室は本が充実しているから良いんだよな、カメラ関連の本が何十冊もあって買わなくてすむから出費が抑えられる、全てを読破して内容を頭に叩き込むぞ。
ここで読んで覚えた撮影のテクニックを惣流達を撮って実践しているんだよな、自分自身でも撮影の腕が上がっていると思うときがある、それは写真の販売枚数が多いときだ。
さあ、今日はこの本を読破するぜ〜!
・・・
・・・
・・・
・・・ん、何だ?俺の名を呼ぶのは・・・
「・・・くん」
「相田君」
「え?」
やはり俺の名が呼ばれている。
「相田君、もうすぐ図書室を閉める時間だから・・・」
「あ、寝ていたのか」
俺とした事がウッカリしてしまった、日頃の疲れのせいで寝ていたらしい。くそう〜半分しか読破できなかった。
「他のみんなはもう帰りました、残っているのは相田君だけです」
「あ、ありがとう!」
起こしてくれた礼を言うために女性を見た瞬間、俺の背中に稲妻が走った。
「て、天使・・・」
「えっ?」
俺を起こしてくれた女性の顔は逆行で見えなかったが、髪が長くてそのシルエットは俺にとっては天使そのものだった。
「あ、いや・・・起こしてくれてサンキューな」
「いいえ、相田君って最近はいつも来ているわね」
「あ、ああ。ちょっと勉強で。ってどうして俺の名前を?」
女性は生徒だったけど、俺は彼女を知らないぞ。
「お、同じクラスの山岸です」
「山岸?」
そんな名前のやついたっけ?女子生徒データが豊富な俺でも記憶に無いぞ。
「じ、地味だから相田君は知らないと思うわ・・・」
「そ、そんな事ないよ。山岸!そう山岸さんだね」
知らないと言ったら女性に失礼だ。ここは嘘でも知っていると言うのが良いんだ。
「あ、ありがとう・・・」
「そ、そんな事ないよ。それよりどうして俺の名を?」
「有名だから」
「ゆ、有名なんだ」
俺って有名なんだ、何だか凄いぞ。
「勝手に写真を撮って売り捲くる鬼畜って惣流さん達が言っていました」
そっちで有名なのか〜〜〜!
「き、鬼畜じゃないよ。売り上げだって惣流達に取られて最近は赤字なんだ。鬼畜はあっちだぜ」
「そうなの?」
「ああ、今日だって売り上げを取られたんだ。何だかんだ言って、得しているのはあいつ等なんだよ」
「それでも撮り続けているんですよね」
「ああ、自分の腕を上げる為にね」
「腕を?」
「ああ」
俺は彼女に自分の夢を話した、有名なカメラマンになって世界を飛び回る事を。バカにされるかもしれないけど何故か話したかった。
「素晴らしい夢ですね、相田さんならきっとなれますよ」
「あ、うん」
驚いた、普通なら笑われると思ったけど彼女は真面目に聞いてくれて実現すると言ってくれた。
「夢に向かって頑張ってくださいね」
「うん、ありがとう」
「それじゃあ、そろそろ閉めますから」
「あ、ちょっと」
「はい?」
「写真、一枚いいかな?」
彼女の笑顔が俺のカメラマン魂を刺激した、でも鬼畜で有名な俺なんかに撮られていいわけないよな。
「あ、はい私でよければ」
「え!良いの?」
「はい、惣流さん達のように綺麗じゃないから恥ずかしいですけど」
「そ、そんな事ないよ。惣流達より凄く綺麗だよ」
外見も性格も、性格が特に最高だ!
「そ、それじゃあ撮るよ」
「ポ、ポーズはそのままで良いんですか?」
「ああ、立っているだけでいいよ」
窓際をバッグに彼女を撮った、いつもなら何枚も撮るが、この一枚だけで良かった。俺にとっては最高の出来だ。
「上手に撮ってくれました?」
「うん、プリントアウトしたらあげるから」
「ありがとうございます」
ドキドキ、ドキドキ
お礼を言った時の彼女の微笑が・・・
「そ、それじゃあまたな!」
俺は真っ赤になっている顔がバレルのがイヤでその場を走り去って帰った。くう〜〜いつもはクールな俺なのにどうして胸の鼓動が高鳴るんだ。
家に帰った俺は、ご飯を速攻で食べると自分の部屋に篭って先ほど撮った写真のデータをPCに移した。
「・・・綺麗だ」
惣流や霧島、綾波とは違う綺麗さがある、なんていうか写真の内側から来る美しさ・・・なんか自分で言うのもくさい台詞だな。
「プリントするか」
彼女の画像をプリントして・・・もう一枚するか。一枚は山岸にあげて後の一枚は自分用だ。
・・・メモリカードには今日写した惣流達の画像も入っていたけど、何故かプリントする気にはなれなかった。明日の売り上げはゼロだな。
まあ今日はこの一枚が撮れたから良しとするか。
次の日、学校に来た俺はクラス内を見回した。彼女は来ているのだろうか?
「どないしたケンスケ?今日の撮影の下調べか」
「いや、撮影じゃないんだ」
「ならなんや?」
「別に」
彼女はまだ来ていない様だ、まあ俺が早すぎたのか。
時間が経つにつれてクラスの皆がやって来る、でも彼女はまだ来ない。
「今日も撮ったら殺すからね〜」
惣流達がやってきて何か言っているけど俺の耳には届かない、山岸はまだ来ないのか・・・
「ちょっと!聞いているの?」
「あ、うん聞いてる」
「撮るんじゃないわよ」
「ああ」
「へっ?素直ね」
「何か変なもの食べたんじゃないの?」
「昨日のパフェ美味しかった」
惣流達は俺の返事に拍子抜けしたみたいだ、今日は撮る気分じゃないし、俺には写真を渡す重大な指名がある。
あと一分でチャイムが鳴る、今日は休みなのか・・・
あっ、あと三十秒でチャイムが鳴る時に山岸がやって来た、寝坊して走ってきたのか?息があがっているぞ。
これで後から写真を渡せるな。
授業中に山岸を盗み見ていたが、静かで大人しいと感じた。確かに目立たない存在だな。
メールを送って写真を持ってきた事を告げるかな。いや惣流達にメールを盗み見られる可能性があるから止めておこう。
チャイムが鳴った、俺には写真を渡す事が重要で授業が全然頭に入らなかったぜ、いつも入っていないけどな。
さあ写真を渡すぞ。って教室内ではまずい、要らぬ噂が立ってしまう。渡すのは放課後にしよう。
休み時間の山岸は一人席に座っていて本を読んでいた、本が好きなんだろうか?何気なく読んでいるが俺にはベストショットに思えてくる、写真を撮りたいが出来ないのが悔しい・・・
「ケンスケどないしたんや?ボ〜〜っとして」
「な、なんでもないよ」
「今日は何枚売るんや?」
トウジは売るのを手伝ってくれる、まあ何パーセントをアルバイト代としてやっているから気になるのも当然か。
「今日は売らない」
「ほえ?どしてや」
「今日はそういう気分じゃないんだ」
「なんや〜昨日やられた事を気にしているんか。まあ死にかけたもんな、ほとぼりが冷めた頃にまたやろうや」
トウジが俺の方をポンと叩いて笑った、本当にお前はお気楽だな。
「相田君」
「ん、なんだ」
渚がやって来た、髪をかきあげて相変わらずナルシストだな。
「僕は君を殴ったりしないから撮っていいんだよ、さあ撮ってくれたまえ」
「すまん、今日はやめておく」
「そ、そんな・・・せっかく薔薇まで用意したのに」
すまんな薔薇まで用意してポーズまでしているのに。
「カヲル君、挫けちゃだめだよ」
「シンジ君、君は優しいね」
「カヲル君・・・」
「シンジ君・・・」
ドゴッ!
「こら〜〜〜!変態ども〜〜〜気色悪い事やっているんじゃないわよ」
惣流の蹴りが二人に決まった、パンチラだったがそんな事はどうでもよかった。
「きゃ〜〜ん、私のシンジがBLに走っちゃう〜〜〜」
「マナさん、BLってどういう意味なの?」
「ボーイズラブよ、禁断の愛なのよ」
「BL・・・ダメ、考えただけで鼻血がでそう」
「あわわ、ファーストこんなところで倒れるんじゃないわよ」
相変わらず五月蝿い連中だな、こんな連中を撮っていたら腕が上がらないのは当然か。
今日の授業は俺にとって非常に長かった、まるで一年間のように長かった。さあ図書室に行くぜ!
「相田君、待ちなさい!」
「ん?」
委員長から呼び止められた、一体何なんだよ。
「今日の掃除当番は相田君よ」
「掃除当番?」
今日は俺だったのか。
「サボっちゃダメよ、はい掃除道具」
「トホホ」
速攻で図書室に行きたかったのに、こんなアクシデントがあるとは辛いぜ。
うおおおおおおお!!!
障害があればあるほど燃えるってもんだ、五分で終わらせるぜ。
終わった〜!さあ図書室へ行くぜ!
俺の調べでは山岸は図書委員だった、だから放課後は図書室に居たんだ。ずっと図書室に通っていた俺が知らなかったとは不覚だな。
「あ、相田君」
「やあ」
図書室の受付に山岸は座って本を読んでいた、本当に本が好きなんだな。
「こ、これ昨日撮った写真」
「あ、ありがとう」
図書室には俺と山岸しか居なかった、だからすぐに渡せたよ。
「綺麗に撮れているだろう」
「相田君の腕が上手なのね」
「モデルが良いのさ」
「うふふ、お世辞が上手ね」
ドキッ
時々見せる山岸の微笑みが俺の鼓動を早くする。
「そ、そんな事ないよ。カメラは安物なんだ」
最新型を買う為に写真を売っているが、山岸を撮るのは今のカメラでも十分綺麗に撮れるんだよな、これが最新型だったなら・・・
「ねえ、相田君」
「何?」
「今、フォトコンテストをやっているのよ。出してみたらどうかしら?」
「フォトコンテスト?」
壁にフォトコンテストのポスターが貼ってあった、入賞すると賞金が手に入るのか・・・おおっ!最優秀賞の賞金金額だと新型が買えるじゃないか。
「相田君なら入賞できるわ」
「出してみようかな」
対象は人物や風景か、写すならやっぱり・・・
「なあ山岸、モデルになってくれないかな?」
「えっモデル?私が」
「ああ、山岸がモデルなら入賞する自信があるんだ」
「でも・・・私なんかが・・・惣流さん達の方が綺麗だし」
あいつ等の綺麗さは嘘さ、本当は悪魔なんだ。
「頼む!山岸じゃなきゃダメなんだ!」
俺のカメラマン魂が山岸じゃないとダメと言っている、本当に撮りたい被写体だ。
「相田君がそういうなら・・・」
「引き受けてくれるんだね」
「うん」
オッケー!これで最優秀賞は貰った!
「じゃあさ、明日撮りたいけどいいかな?」
明日は待望の休み、締め切り日時も近いから明日撮ってしまいたい。
「うん、いいよ」
「よし、決まりだ」
山岸は快く引き受けてくれた、その日は嬉しくも図書室には誰も来なくて二人だけだった、明日の予定もバッチリ打ち合わせできたぜ。
「早くきてしまった」
駅の噴水前に集合30分前に来てしまった、昨日は興奮してちょっとしか眠れなかったんだよな。今日は俺の持っているカメラで最高機種を持ってきた。行き先は芦ノ湖。湖と山岸、これ以上のベストマッチはない!
「おはよう相田君、待った?」
「い、今来たところ」
自分が到着してから五分くらいしたら山岸がやって来た。『待った』とは言わない、失礼になるからな。
「それじゃあ行こうか」
「うん」
芦ノ湖へは電車で行く、切符を買って。
「相田君、お金」
「俺が払うよ」
「悪いわ」
「良いって、俺に任せて」
女性に出させるのは失礼だからな、ここは俺がもつ!
「ありがとう、優しいのね」
「そ、そんな事ないよ、当然さ」
また山岸の笑顔で顔が真っ赤になったのがわかる、恥ずかしいぜ。
電車に乗っている間は、芦ノ湖での撮影プランや持ってきたカメラの事を話した、山岸は興味津々に聞いてくれていたので話す俺にも力が入った。
「晴れて良かったわね」
「ああ、絶好の撮影日和だ」
湖が太陽の光に反射して美しい、これなら良い写真が沢山撮れるぞ。
まずは芦ノ湖をバックに撮影だ。山岸は白いブラウスに紺のスカートと地味な格好だが、それはそれで俺的にオッケーだ。
「それじゃあそこに立って」
「あ、はい」
緊張しているのだろうか、表情が堅いな。何回かポーズを指示したけど満足する写真は撮れなかった。撮影って言われたら俺だって緊張するから仕方ないか。しばらくはボートにでも乗って遊ぶか。
「ボートに乗ろうか」
「あの撮影は?」
「少し遊んでから撮ろうか」
「ごめんなさい、緊張しているから撮れなかったんですね」
「そ、そんな事ないよ。俺が悪いんだよ」
リラックスさせる事ができないのは俺が悪い、まだまだ未熟だな。
「ボート乗った事無いだろ?」
「はい」
「じゃあ乗ろう」
ボートでの撮影もいいかもしれないな。貸しボートは一時間1000円か、ちょっと痛い出費だが仕方ない。
「足元に気をつけて」
「うん」
山岸が落ちないように手を取ってボートに乗せてやった、なんかちょっとデート気分だな。
「漕ぐから落ちないように」
「うん」
俺はゆっくりゆっくりと漕ぎ出した、湖の中央まで行くか。
「相田君、漕ぐの上手ね」
「まあね、トウジ達と遊びに来ていたからね」
みんなでボートで競争したりしたな。
「私も漕いで良い?」
「良いけど大丈夫?」
「うん、やってみる。きゃっ!」
山岸が漕ぐ為に俺の方に来ようと立った瞬間、ボートが揺れてバランスを崩して俺の方に倒れてきた。
「だ、大丈夫か?」
「う、うん・・・ありがとう」
「あっ、ごめんっ!」
無意識に山岸を抱きしめていた、事故とは言えこれはまずい。
「そ、そんな疚しい気持ちはないから」
「う、うん・・・」
あ〜〜〜お互い顔が真っ赤だ、ちょっと嬉しいハプニングだけど、これじゃあ撮影どころじゃないよ。
「お、お腹空いていない?」
「ん、ちょっと空いてきたかな」
「お、お弁当作ってきたの」
山岸は顔が真っ赤なのを誤魔化すためか慌しく持ってきたバックから弁当箱を取り出した。
「おっ凄い、これを山岸が?」
「はい、口に合わないと思うけど・・・」
これが憧れの手作り弁当、美味そうだ。
「い、いただきます!」
モグモグモグモグモグ〜〜〜
「味はどう?」
「美味い!美味いよ、最高だ」
「本当?良かった」
山岸の笑顔と美味しい手作り弁当、俺は最高の幸せ者だぜ。
「ん・・・んぐっ」
「だ、大丈夫」
勢いよく食べて喉が詰まってしまった!
「はい、お茶」
「ごくごくごくごく、ふ〜〜〜生き返った〜〜」
「ゆっくり食べてね」
「ああ、おっ今の表情イイ!」
「えっ」
「残念、シャッターチャンスを逃したよ」
「ごめんなさい」
「いいよ、時間はたっぷりあるんだ」
お腹もいっぱいになったし、これからバンバン撮りまくるぞ。
それから俺は山岸を撮りまくった、一日でこんなに撮ったのは初めてだ。まだ撮り足りないけど山岸が疲れてきたようだから、ここらで終わりとするか。
「山岸、お疲れ様」
「もういいの?」
「ああ、疲れただろう。付き合わせて悪かったね」
「そんな事ないわ、私も楽しかった」
楽しかったって言ってくれるなんて、撮影したかいがあったよ。
帰りの電車賃も勿論俺がもつ。山岸はかなり疲れていたようだ、寝ていたよ。寝姿もいいな、数枚撮っておこう。
「山岸、今日はありがとう。これなら絶対に賞を取れるよ」
「頑張ってね」
「あ、あのさあ」
「なに?」
「また誘っていいかな?」
今日ほど楽しかった日はない、また山岸を撮りたい。
「うん」
微笑んで頷いてくれた。
「ありがとう、じゃあまた明日な」
「うん、また明日ね」
よ〜し、これからは家に帰って写真選びだ、一人何枚でも応募可能だが、そんな事は俺はしない。ベストな一枚を出す!
「う〜〜ん、なんだかなあ〜」
今日撮った写真は最高の出来だ、学校で売れば売り切れるが売る気は無い。でも応募に出すにはちょっと弱いかな。
「候補は何枚かあるんだがなあ」
審査員の目に留まるが、ただそれだけだ。これぞ!と思わせる写真がない。
「これがいいかな?それともこっち?」
応募締め切りは明日の消印まで、時間が迫っている。
「う〜〜ん、う〜〜〜〜ん」
山岸の期待に応えて賞を取りたい、俺のこれからのカメラマン人生の第一歩が始まるんだ。
「迷う、迷うな〜〜〜」
zzz、zzz
zzz
zz
z
「はっ今何時だ?げ〜〜〜昼を回っている〜〜!」
迷っているうちに寝てしまって、寝過ごしてしまった。あ〜〜あ学校サボってしまった。まあいいか・・・ってよくない!写真も選んでないんだっだ!
「焦る、焦るな!」
ベストな写真!ベストな写真が・・・!
「こ、これに決めた!」
急いで封筒に入れて郵便局へ行くぞ!
「ふう〜間に合った」
これで肩の荷が下りた、後は天に祈るだけだ。今から学校に行っても仕方ないから、そこらへんをぶらつくか。
行きつけの定食屋で昼ごはんを食べて・・・カメラ屋、プラモ屋を覗いて・・・帰るか。
山岸に会いたかったけど明日で良いか。
家に帰ったら、昨日撮った写真を山岸に渡すためにプリントするか。
「よっサボりマン」
「言われると思ったよ」
学校でトウジに言われたよ、羨ましいならサボってみろよ。
「わはっはっは〜ワシもサボロかな」
「何言ってるのよ、サボりはいけないわよ」
「おわっイインチョいつのまに」
「相田君も無断で休んだらダメよ」
「悪かったね、今度からはしないよ」
「あ、うん」
委員長は拍子抜けした顔をしてた、反論されると思ったんだろうな。
「相田君、サボりはいいねえ〜リリンが生み出した文化の極みだよ」
「なんだそれ?」
渚は時々変な事言うからな。
「カヲル君、サボりはいけないよ」
「僕はシンジ君とならサボれるよ」
「カヲル君・・・キュン」
「シンジ君、今から二人でサボろうじゃないか」
「うん、カヲル君サボろう」
ブシュッ!
「夢なら一人で見なさい」
「あ、あうう・・・レイ君は容赦ないね」
綾波過激すぎるよ。渚も血を流しながら微笑むなよ。
「ああああ〜カヲル君がロンギヌスの槍で〜〜!大丈夫?」
「ふっシンジ君の愛があれば大丈夫さ」
「カヲル君」
あ〜〜朝っぱらから元気な奴らだぜ。それより山岸はまだかな?
その日、山岸は来なかった。風邪だったのかな?
その次の日も来なかった、その次の日も・・・何故?
具合が悪いのかな?住所を委員長に聞いて見舞いにでも行ってみるか。
「あの委員長、ちょっといいかな?」
「なに?」
「あのさ〜山岸の住所を知りたいんだけど」
「山岸さん?彼女なら月曜に転校したわよ」
「ええっ!?」
月曜日って俺がサボった日じゃないか。
「ど、どこへ転校したの?」
「アメリカって言っていたわ、急に決まったようで学校に来なかったわ」
そ、そんな・・・急にアメリカなんて・・・
「そうか、ありがとう・・・」
「あ、相田君」
はあ〜〜一気に肩の力が抜けたな、疲れた。
・・・ただいま。
家には誰も居ないけどな、ん?ポストに手紙が入っているエアメール、誰からだろう?
「や、山岸!」
差出人は山岸だった、俺は急いで部屋に戻って封を開けた。
相田君、急に転校してごめんなさい
ちゃんと挨拶をしたかったけど、会うと辛くなるからサヨナラは言えませんでした
父の仕事の関係で転校が多い私は友達がいませんでした
寂しかった私を芦ノ湖に誘ってくれ相田君の優しさに感動しました
もう転校はしたくない、ここに居たいと願いましたが、それはできませんでした
また戻ってきて相田君に会える日を楽しみにしています
世界一のカメラマンを目差して頑張ってください、心から応援しています
・・・
・・・う・・・うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
俺は泣いた、今まで泣いた分以上の涙を流した、山岸の今までの一人身の辛さ、そして優しさに心引かれた俺・・・うおおおおお!
俺は誓う、山岸に誓って世界一のカメラマンになるぞ〜〜!
「ふう〜〜」
「なんや〜元気ないのう〜〜」
「トウジは朝から元気だな」
「はっはっはっは、元気がワシの特技だからな」
「羨ましい特技だな、今日も写真は撮らへんのか?」
「ああ、悪いな」
手紙が来た日からかなり経ったが、カメラを持つ気力がない。山岸に世界のカメラマンになると誓ったのに・・・ダメな俺だな。
「さあ相田君、今日こそは僕の素晴らしい身体を撮ってくれたまえ」
「ぶっ!なんやその格好は?」
渚よ〜美形だから似合うけど、学校でオスカルの格好はやめてくれよ。
「カヲル君、素敵だよ〜〜その姿、トキメクよ」
「うふふ、シンジ君。二人だけのときめきメモリアルといこうじゃないか」
「カヲル君・・・キュン」
「シンジく〜〜〜ん」
ボカッ!
「変態はいけないと思いま〜〜す」
「ふっ霧島君、そのバッティングセンス、メジャーを狙えるよ」
霧島も過激だな、腰が入ったフルスイングはメジャー級だ。渚も頭から血が噴出しているぞ。
「カヲル君、血の噴水が素敵だよ、芸術的だよ」
「ふっシンジ君、体を張った愛の表現だよ」
あ〜〜〜朝っぱらから元気な奴らだぜ、普段と変わらない日常だな。
「こらメガネ!」
「な、なんだよ」
惣流が俺の机にやって来て怒鳴りつけた、俺は何もしてないぞ。
「アンタいつのまにこんなのを撮ったのよ」
「へ?」
「これよ、これよ」
「あっこれは!」
惣流は持って来た雑誌を俺に見せた、そこに載っていたのは・・・
最優秀賞 相田ケンスケ 作名 『天使』
「誰よこの子は?どうしてアタシを撮らなかったのよ、まったくムカつくわね」
「そうか、そうか・・・」
取ったんだ、賞を取ったんだ。
「何がそうか、そうかよ。ちょっと聞いているの?」
出した写真は最初に図書室で撮ったやつだ、あれが俺の中で一番の最高作品だったんだ。
「アスカどうしたの?」
「あっシンジ、ちょっと聞いてよ。こいつムカつくのよ」
惣流はシンジに自分をモデルにしなかった事を言っている。撮るなと言ったり撮れと言ったり、一体どっちなんだ。
「へ〜〜ケンスケ凄いな〜〜」
「サンキューな」
「おっケンスケ、凄いやないか」
「はは、俺もビックリしているよ」
「コラッ!アンタ達〜何絶賛しているのよ、アタシがモデルじゃないのよ。もしアタシがモデルだったらもっと凄い賞を取っていたわよ」
もっと凄い賞って、これが最高だけどな。
「ぷっ!アスカがモデルだったら落選だよ」
ドコ〜〜〜!
「うげえ〜〜」
「アンタ、死にたいようね。ブッ殺すわよ、おっと台詞を間違えちゃったわ。アタシ達の世界ではブッ殺すなんて言葉は使わないわ、心の中で思ったならっ!その時すでに行動は終わっているんだわ」
碇シンジ、享年14歳か。哀れな人生だったな、骨は拾ってやるよ。
「あ〜〜相田君、すご〜〜い!賞取っているじゃない。見直しちゃったわ」
「本当だわ、おめでとう。天変地異の前触れ?」
嬉しくない言葉だな。
まあ賞は取れたんだ、これで山岸との約束を一つ果たしたぞ。
「あっ惣流、この雑誌くれないか?」
「良いわよ、それより何か奢りなさいよ」
「アスカずる〜〜い、相田く〜〜ん私にも奢って〜〜」
「二人に奢るなら当然私も入っているわよね?」
くっ・・・女というやつは、豹変しすぎだ。
「お〜〜帰りはケンスケの受賞祝いだ、パ〜〜〜とやるで〜〜」
ト、トウジまで、みんなに奢ったらカメラ買う金が無くなっちゃうぞ。
「心配せんでええ、ワシ達も出すで」
「トウジ・・・」
「そうさ、相田君。僕達も出させてもらうよ」
「渚・・・」
「ぼ、僕も出すよ・・・ゲフッ・・・」
「シンジ〜〜〜シンジ〜〜〜死ぬな〜〜〜!」
かんぱ〜〜〜〜い!!!!!!!!!!!
受賞祝いは行きつけのお好み焼き屋だ。
みんなが俺を祝ってくれる、これでカメラマンと認められたかな?
「おうおうおう〜〜ケンスケ〜〜暗いの〜〜ヒック」
「コーラで酔うなよ」
「はっは〜〜ええんや、嬉しいときはコーラでも酔うんや」
「はは、そうか・・・」
確かに受賞は嬉しいけど、一番に報告したい人、祝ってもらいたい人がいない・・・
「相田君、この地球上にみんな居るんだ、きっと彼女にも伝わっているよ」
「渚・・・」
渚は知っているのか?山岸の事を。
「あ、あのさあ渚」
「みんなにばれたら拙いだろ、この事はナイショにしたほうがいいよ」
渚・・・お前はいい奴だよな。
「シンジく〜〜ん、お好み焼きを食べる君は素敵だよ〜〜」
「カヲル君〜〜僕が作ったお好み焼きを食べて〜〜」
ドコ〜〜〜!
「「うげっ!!」」
「つまらん芝居はするな!」
・・・相変わらず惣流は容赦しないな。
ありがとう、みんな祝ってくれて・・・
雑誌の切り抜き?
あっ受賞したんだ、おめでとう相田君
世界一のカメラマンになってね
このSS(リレー小説&投稿SS&CGに付けたSSを除く)で1000本目です(^▽^)
1999年4月23日から書き続けて六年、飽きずHPも閉鎖せずに良く続いたと感心します(笑)
これからも書き続けますが、最近は更新頻度が落ちていますので投稿があると涙を流して喜びます(^^)
今回のSSは普段は脇役キャラの相田ケンスケ、山岸マユミを主役にしています。ネット上では二人がLove?お似合いと言う人が多いのでその設定で書きました。今回はアスカちゃん達は脇役に徹しています(徹していませんね^^;)
写真に図書室で知り合って芦ノ湖でデート、ケンスケにとっては人生最高の日々だったでしょうが、悲しくもマユミちゃんは転校・・・初恋?は美しい思い出となりましたが、きっとマユミちゃんは帰ってくるでしょう。
これからも「jun16 Factory」をよろしくお願いします(^^)
こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。
NEON GENESIS: EVANGELION adoration